基礎知識

不動産の相続手続きはどうおこなう?必要な書類、費用について

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この記事の内容

この記事を監修した人
弁護士法人プラム綜合法律事務所 梅澤康二

私は、日本の4大法律事務所の一つであるアンダーソン・毛利・友常法律事務所において6年間の実務経験を積み、その間、数多くの労働問題、訴訟・紛争事件、M&A取引、各種契約書の作成・レビューその他企業法務全般を主担当として処理・解決して参りました。弁護士法人プラム綜合法律事務所は、そのような前事務所で賜ったご指導・ご支援に恥じることのない、最高品質のリーガルサービスを提供することを信念としており、ご相談案件一つ一つについて誠心誠意対応させて頂きますので、安心してご連絡、ご相談ください。

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この記事をおすすめする人

不動産相続の準備をまだ済ませていない方


この記事のポイント

  • 相続税だけでなく、登記まで完了させる必要がある
  • 2024年から登記まで完了させないと過料が課せられる
  • 相続人が複数などのケースは専門家に相談を


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以下の記事で、土地を相続する方法や分割するときはどうおこなうかを解説しました。土地、そして建物といった不動産を相続することが決まれば、次は手続き=相続登記に移ります。


土地の相続の基礎知識|流れ、分割する方法について|楽クラライフノート お金と終活の情報サイト

日本で相続されるすべての財産のうち、4割は不動産といわれています。そのため、不動産の相続は多くの日本人にとってかかわりのある話といえるでしょう。  では、土地の相続はどうなるのでしょうか?最近では「所有者不明の土地」が大きな問題となっているように、土地の相続は必ずしも経済的に豊かでなくても対応に苦慮している人の存在がうかがえます。  この記事では、土地の相続について解説します。

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相続登記は、決して忘れてはいけません。なぜならば、2024年から不動産の相続手続きをおこなわないと、過料が課せられるようになるからです。

こうしたペナルティがなぜ設けられたのかをはじめ、知っておきたい相続手続きの流れなどをこの記事で解説します。

相続登記をしないと行政罰を受ける

登記とは、重要な権利や業務などを社会に向けて公にするための法制度です。

不動産登記については、「この不動産の所有者はだれであるか」「この不動産は担保(抵当)に入っているか、担保になっているならばその権利はだれがもっているか」などが登記簿を見ればわかるようになっています。所有権の登記をしていれば、万が一、不動産関連のトラブルに巻き込まれたとしても、自分が所有する不動産であると主張できます。

そして、不動産の相続登記が2024年4月1日から義務となります。不動産の相続が発生した場合は一定期間内に登記する必要があり、これを怠ると制裁が課される可能性があります。具体的には不動産について相続による取得を知った日から3年以内に相続登記をしなければ、10万円以下の過料が課せられる場合があります(2024年4月1日より前に認識している相続については2024年4月1日から3年以内が期限です)。過料とは、刑法上の罰金ではなく行政上のペナルティであるため、いわゆる「前科」がつくわけではありませんが、円滑な不動産相続・取引と制裁を受けないために、必ず登記をおこなうべきだといえるでしょう。

なぜ、登記が義務になったかというと、所有者不明土地の存在があり、全国的に問題となっているからです。所有者不明土地により、行政がその不動産の扱いに困る、周辺で暮らす人が困ることを防ぐため、義務化につながりました。

こうした義務化を別としても、登記をしないことは「不動産の売却などの処分が困難になる」「複数の相続人が共有する形になってしまう」「さらなる相続が難しくなる」といった問題が起こります。これについては、以下の記事をご覧ください。


不動産の相続登記に期限はない?|登記しないときのデメリットとは|楽クラライフノート お金と終活の情報サイト

登記はいつまでにすればよいのでしょうか?  実は現行の法律では、登記の期限は明確に定められていません。しかし、相続した不動産の登記をしないままでいると、不動産の本当の所有者が誰なのかわからなくなることをはじめとした、さまざまな弊害が生じあります。また、2021年4月21日に成立した改正法により2024年4月1日から相続登記が義務化されます。  そこで、この記事では相続した不動産の登記の期限や登記をしないことのデメリットを解説します。

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遺産分割協議書の作成後におこなうべきこと

遺言書による遺産相続の指定がない場合、財産をどのように分割するかは全相続人間での協議(遺産分割協議)で決定する必要があり、この協議が調った場合は「遺産分割協議書」を作成するのが通常です。遺産分割協議では、不動産をだれが相続するのか、あるいは、複数人で相続する、売却してそのお金を分割するなどを話しあいで決めることになります。

ここでは見出しのとおり、遺産分割協議書の作成まで終わったらすること=登記の流れを解説します。

ただ、世のなかの多くの人は自分で登記をしたことがなく、またある程度の知識も必要とされるため、弁護士、司法書士といった専門家に依頼するのも一つの方法です。とくに、以下のケースの相続では、専門家の力を頼るのがベターといえます。

  • 相続人が多い

  • 所在不明や存在自体の有無すらわからない相続人がいる

  • 財産の使い込みなど、すでに相続トラブルが起こってしまっている

  • 相続人が多忙で相続手続きの時間をとりにくい

  • 遺言書があり、その遺言書が正しい形式になっているか、遺留分がどれくらいになるかわからない

  • 認知症や未成年の相続人がいる


相続登記に必要な書類

まず、登記をおこなう前に準備しておくべき書類を紹介します。

必要書類は以下のとおりです。

  • 登記申請書

  • 相続人全員の戸籍謄本

  • 相続人全員の住民票抄本

  • 相続人全員の住民票謄本

  • 相続人全員の印鑑証明書

  • 被相続人の戸籍謄本(出生から死亡まですべてのものを揃える)

  • 被相続人の住民票の除票

  • 不動産の固定資産評価証明書

  • 不動産の全部事項証明書


相続登記で必要になる費用

手続きでかかる費用について、書類だけならば数千円程度で済みます。

ただし、登記事務を扱う法務局へ登録免許税を支払う必要があります。登録免許税は、不動産の価値によって数万〜数十万円と大きく異なります。

以下、くわしく説明しますので、ご覧ください。

登録免許税固定資産評価額×0.4%
登録事項証明書一つの不動産につき600円
戸籍謄本・住民票などの発行手数料3000円程度
郵便代封入する書類の量などにより異なる

法務局へ提出

以上を揃えたら、法務局で手続きをおこないましょう。

繰り返しになりますが、書類の不備や間違いで何度も法務局へ足を運ばなければならなくなったり、そもそも手続きをする時間がなかったりするのであれば、専門家に依頼するのも一つの方法です。

遺産分割協議で不動産の売却が決まったときの手続きの流れ

複数の相続人がいる場合、不動産を売却して現金化し、その現金を相続人のあいだで分配するケースもあると思います。

こうした場合の流れを説明します。

  1. 売却しやすくするためには老朽化した家屋を解体する

  2. 売却が決まったら登記をおこなう

  3. 譲渡所得税を納付する


最初に挙げた「老朽化した家屋の解体」は必須ではありません。ただ、解体したほうが買い手がつきやすくなる傾向があるため、早急に売却したいならば要検討といえるでしょう。

登記について、具体的な手続きは先ほどの「遺産分割協議書の作成まで終わったらすること」で解説した登記の流れを参考にしてください。売却する場合は、まず被相続人から相続人への相続登記をおこない、その後、相続人から売却先への登記が必要となります。

譲渡所得税は、通常にはない所得=一時所得があったときに納める所得税の一つで、不動産の売却も含まれます。譲渡にかかった費用や控除などから一概にどれくらいの税金がかかるとはいえませんが、たとえば10年以上住んだ家の売却は「長期譲渡所得」という扱いになり、税率は譲渡所得金額に対して15%となります。

相続税を納付するべき条件

相続で引き継ぐ財産の総額が一定以上となる場合は、相続税を納付します。相続税はすべての相続にかかるわけではなく、主に基礎控除額を下回る金額であれば納付の必要はありません。

まず、相続税の納付に関して要点をまとめます。

  • 相続税は相続があったと知った日から10か月以内に納付する

  • 基礎控除額=3000万円+(法定相続人の数×600万円)


基礎控除額は相続人が1人であれば3600万円となりますし、相続人が2人ならば4200万円となります。また、基礎控除以外にも「配偶者の税額軽減」「小規模宅地等の特例」などといった優遇措置が存在します。最終的に手続きまでを依頼するか否かは別としても、税理士などに自分のケースだとどんな優遇措置が受けられるのか、相談だけするのもよいでしょう。

相続する財産の総額から以上の控除や優遇を差し引いて出る金額が、相続税の課税対象額です。

課税対象額からさらに相続人それぞれの相続割合に応じて、相続税の納付義務が生じます。たとえば課税対象額が1000万円となる相続で、相続人が配偶者=50%、子ども50%の相続割合となっているならば、それぞれの相続人は500万円ずつの課税対象額を負う形です。もちろん、500万円がそのまま税額ではなく、これに所定の税率をかけ、さらに課税対象額ごとに設けられている控除額を引いた金額が、税額となります。

相続税の額=個々の相続人の課税対象額×税率-控除額


また、相続税の税率と控除額は以下のとおりです。

法定相続分に応ずる取得金額(課税対象額)税率控除額
1000万円以下10%
3000万円以下15%50万円
5000万円以下20%200万円
1億円以下30%700万円
2億円以下40%1700万円
3億円以下45%2700万円
6億円以下50%4200万円
6億円超55%7200万円

先ほど例に挙げた配偶者と子がそれぞれ500万円の課税対象額となるケースに当てはめると、500万円×10%−(控除額なし)=50万円が相続税額となります。配偶者・子をあわせれば100万円という税額です。


相続税・贈与税とは?概要や計算方法から節税できる条件まで解説|楽クラライフノート お金と終活の情報サイト

相続や贈与をおこなうと、それぞれ相続税、贈与税がかかる場合があります。こちらの記事では、相続と贈与のどちらを利用するべきかや、相続税と贈与税それぞれの概要や計算方法、注意点をくわしく解説します。

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登記を忘れずに

相続の手続きというと、相続税の納付を真っ先に思い浮かべる人もいるかもしれません。もちろん、相続税も忘れてはなりませんが、まずは早期に登記までを完了させることが大切になります。この記事で解説したように2024年から相続登記が義務化されることもありますが、もしあなたが不動産を相続して、さらに将来、あなたが亡くなり子どもがおなじ不動産を相続するというとき、登記がきちんとされていなければ支障をきたしてしまいます。

よって、登記を忘れずにおこなってくださいね。


(執筆編集:NTTファイナンス 楽クラライフノート お金と終活の情報サイト編集部)

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