コラム

もし親が亡くなったら「相続」はどうおこなう?やるべきことと期限について

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この記事を監修した人
奥典久税理士事務所 奥典久

専門学校で相続税法の講師を長年従事し、会計事務所にて富裕層に対する不動産・財産コンサルティングや非上場会社オーナーの事業承継対策を数多く経験。
2000年、32歳で通常の税務会計のみならず、相続対策を含めたトータルなサポートを目的とした税理士事務所を開設、資産家の方や会社オーナーのコンサルティング業務を展開。不動産会社や生命保険会社などが主催するセミナーや新聞社への執筆活動も行っている。

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この記事をおすすめする人

高齢の親がいる子世代の方


この記事のポイント

  • 被相続人の死後は、相続人や遺言書、相続財産を調べる必要がある
  • 被相続人のお金を使った時点で「相続を決めた」と見なされる
  • 相続税の申告を被相続人の死後10か月以内に済ませなければならない


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親にはいつまでも元気でいてもらいたいものですが、親より子が長生きすることがいちばんの親孝行だという人もいます。その言葉どおりに人生が進むと、親が先に亡くなってしまいますね。実際に親が亡くなれば、訪れるのは悲しさだけではありません。人の死後にはさまざまな手続きがあり、「相続」の手続きはそのなかでもとくに重要なプロセスの一つといえるでしょう。相続という観点に立ったとき、親が亡くなった後に何をしなければならないのか、この記事で解説します。

相続の面で親の死後にすること

相続とは、被相続人(親)が所有していた不動産や預貯金などを引き継ぐことをいいます。

まずおこなうべき相続手続きは、3つあります。「相続人の確認」「遺言書の確認」「相続財産の確認」です。確認すべき項目や段取りを知っておくだけでも、親の死に直面したとき、多少、気持ちの負担が軽くなりますので、いまのうちにしっかりと情報を整理しておきましょう。

相続人はだれになるか確認する

相続人は民法によって「相続順位」が定められています。まず被相続人の配偶者は常に相続人となります。それに次ぐ、第一順位は「子ども」(被相続人の子どもが亡くなっている場合、代襲相続人として被相続人の孫)。第二順位は「父母」(父母が両方とも亡くなっている場合には祖父母)。第三順位は、「兄弟姉妹」(兄弟姉妹が亡くなっている場合には甥、姪)という順になります。

相続人がだれになるかを確認する際には、被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本を調べるようにします。取得するには、直系家族が役所にて自身の謄本を取り、被相続人の戸籍謄本を取得するという流れになります。

遺言書の有無を確認する

遺言書といっても、4種類の遺言書に分けられるのをご存じでしょうか?被相続人自身が書いた「自筆証書遺言」。公証役場で公証人によって作成してもらう「公正証書遺言」。遺言の存在が公証人によって証明される「秘密証書遺言」。被相続人に死の危険が迫っており署名や押印が難しい状況下で作成する「危急時遺言」です。

遺言は「遺言者が死亡したとき」、「遺言書が正しい方式で書かれているとき」、「遺言書に記載された条件に達したとき」という3つの条件を満たしたときに効力が発生します。

遺言書には、相続人以外への遺贈や寄附、財産の処分、相続分の指定など、相続に対する強い効力をもっているため、遺言書の有無を確認することはとても重要なことです。自宅などで遺言書がみつからない場合には、公証役場に遺言書の有無を問いあわせるのも有効な手立てです。公正証書遺言であれば、全国どこの公証役場で原本を保管していても、検索が可能です。

遺言書をみつけたときにやってはならないのが開封すること。遺言書は、「家庭裁判所において相続人の立会いの下で開封しなければならない」と法律で定められています。これを「検認」といいます。違反すると5万円以下の過料が課せられることも。遺言書の開封には、客観性と公正性が求められるのです。これを守るための制度と覚えておきましょう。

後述しますが、相続放棄や相続税の申告には期限があるためそれぞれの手続きをするのに時間はあまり長くありません。行政書士や税理士などの専門家や公証役場への確認はできるだけ早くおこなうようにしましょう。

相続財産を調べる

相続財産を正確に調べておかないと、把握していなかった財産が後からみつかり、手続きをやり直さないといけないということが起こり得ます。このような場合、税務調査を受けて相続税を追加徴収されるとケースや、最悪の場合、延滞税や過少申告加算税なども併せて課されることになります。

また、相続にはプラスのイメージをもつ方も多いかと思いますが、借金も財産(マイナスの財産)に含まれています。相続財産を調べることは、プラスの財産だけでなくだけでなくマイナスの財産がどれほどあるのかを調べ、適切に処理をすることが大切です。

覚えておきたい人の死に関する「期限」

大切な人を亡くすとさまざまな手続きが発生することは、先に述べたとおりです。問題は、その手続きには期限があるということです。ここでは相続に関する手続きのみをピックアップして紹介したいと思います。

死後なるべく早くやること

人が亡くなってまずおこなわなければならない手続きが「死亡届」です。人が死亡したことを役所に届け出るための書類です。医師から死亡診断書を受け取った後に必要事項を記入し、提出することになっているのですが、葬儀社が代行してくれるケースが多いので、すでに葬儀社へ依頼が済んでいる場合は担当者に相談をするとよいでしょう。なお、提出先は「死亡者の本籍地」「届出人の所在地(居住地)」「死亡地」のいずれかの役所になっています。本来は死亡の事実を知った日から7日以内に届け出るものとされていますが、届によって火葬許可・埋葬許可が出るので、なるべく早くおこなう必要があります。

死亡届を届け出ることで、行政手続き上、当人が亡くなったとみなされる、と聞けばその重要度をご理解いただけるのではないでしょうか。

死後1か月ごろまでにやっておきたいこと

亡くなってから1か月ほど経つ時期までには、亡くなった人に関する支払いや精算をおこなうのがよいでしょう。具体的には、以下のとおりとなります。

「高額医療費の還付請求」と「未払い医療費の支払い」

高額医療費の還付とは、1か月のあいだ(1日から月末)にかかった医療費の自己負担額が高額となった場合、一定の金額(自己負担限度額)をこえて支払った分が払い戻されるという制度です。国民健康保険、後期高齢者医療制度、各種健康保険など(医療保険)のいずれの加入者の方が対象となります。

生前お世話になっていた医療機関への未払い医療費の支払いは、相続の対象になります。そのまま放置しておくと、相続人が病院代などの医療費を支払う義務を負うことになります。このとき注意すべきは、被相続人の預金から医療費を清算しないこと。被相続人の財産を使ったとみなされ、以降、被相続人の財産の合計がマイナスのほうが多かったと発覚しても、相続放棄することができなくなります。つまり、被相続人のお金を使ってしまった時点で、相続放棄せず、相続することを決めた(単純承認した)と見なされるのです。

クレジットカードの解約・精算

クレジットカードは利用料金が口座引き落としとなっているため、解約の手続きを見落としがちです。定期契約しているサービスがある場合など、解約しない限りは請求が止まらないため、利用停止手続きをおこなわないと余計な出費が生じてしまいます。クレジットカードや利用明細などを探し、カード会社に契約者が亡くなった旨を伝えて解約手続きを進めましょう。この場合に注意が必要なのが、クレジットカードの未払金の処理。カードの未払金も相続の対象。未払い医療費のケースとおなじく、被相続人の口座を使って清算すると相続放棄ができなくなります。額にもよりますが、立て替え可能ならば一時的に代わりに支払うのが賢明です。立て替えた額は、相続時にほかの相続人に支払いを求めることが可能です。

その他、被相続人がしていた契約の解約

クレジットカードの項目ですこし触れましたが、被相続人が契約していたサービスの解約も見逃さないようにしましょう。代表的なのが電気、ガス、水道。解約しない限りは、相続人に支払い義務が生じます。利用しないのであれば、すみやかに解約をしましょう。反対に相続人が被相続人の賃借物件を借りつづけるのであれば、電気会社、ガス会社、水道局に名義変更申込書を提出する必要があります。

以上のような支払いや契約変更・解約の期限は「すみやかに」とされており、明確な期間が契約書などに書かれていないものが多いですが、以後の相続手続きをスムーズにするため1か月以内にはおこなっておきたいことといえます。

死後1〜2か月の時期にやっておきたいこと

相続に関する作業や手続きは、亡くなってから1か月が経ったころから始めるのが目安といわれます。

財産の調査や遺産分割協議

前述のとおり、相続とは被相続人のプラスの財産もマイナスの財産も引き継ぐものです。そのため、財産の調査は慎重かつ入念におこないたいところ。きちんとした遺言書がのこされていればよいですが、どのような財産があるか皆目検討がつかないというケースでは、弁護士など専門家にアドバイスを仰ぐのがよいでしょう。

また、遺言書がない場合は遺産分割協議をおこなう必要があります。財産の調査を含め、そのための準備を始めて、協議がおこなえるようにしましょう。遺産分割協議については、こちら(リンク)の記事をご覧ください。

相続放棄

相続放棄とは、法定相続人が一切の財産を相続しないことです。相続する財産のうち、マイナスの財産が多い場合には、この相続放棄という選択肢があります。ただし、相続人である自分が相続を放棄するということは、ほかの相続人にマイナスを押し付けることでもあります。相続放棄が親族間のトラブルの種になることがあるのです。

相続放棄をおこなう場合、3か月以内に裁判所に申し立てをする必要があります。ただ、先に述べたトラブルを回避するためには、ほかの相続人へ事前に説明しておくのが賢明です。死後1〜2か月のうちに意思決定し、申し立てをおこなう前にほかの相続人に伝える時間を作りましょう。

死後10か月以内にすること

相続税の申告期限は10か月が原則となっています。

相続税とは、被相続人から、お金や土地などの財産を相続した場合に、その受け取った財産にかかる税金です。10か月以内に申告がされないと、税務署から相続人に督促状が送付されます。督促を受けても対応をしなかった場合、調査がおこなわれ、場合によっては、財産の差し押さえや競売といった処分を下されることもあります。

もし親に財産がなかったら

親に財産がない場合には、相続に関する手続きは必要ありません。ただし、財産がまったくないというのはかなりまれなケースといえます。現実的には、預貯金なり、家なり、自動車なり、人は何らかの財産をもっているものです。そもそも借金といったマイナスの財産も対象となるので、相続の手続きを一切する必要がないという状況は起こりづらいといえます。財産が本当にないのかは、実際に財産を調べたり、遺言書の有無を確認したりしない限りは確定するのは難しいです。

相続税について

「相続税の申告」の項目で、納税をしないとどうなるかについて触れましたが、必要以上に恐れることはありません。相続税には基礎控除という制度があり、相続財産が一定金額以下であれば、相続税がかからない場合があるのです。

相続税の基礎控除

相続税は、「相続した財産の金額から、負債や葬式費用を差し引いた後の金額」が基礎控除額を上回っている場合のみ納税の義務が発生します。つまり、相続税の基礎控除額とは相続税の非課税枠といい換えることもできます。では、具体的に基礎控除額はどのように決められるのか、以下に計算式を記します。

基礎控除額=3000万円+(600万円×法定相続人の数)

法定相続人が何人いるかによって、控除額は変動します。法定相続人が1人の場合は、3600万円の控除。2人いる場合には、4200万円の控除になります。この額を上回らなければ、相続税の納税を免れることができるのです。

相続税の税率

相続した財産の金額が基礎控除額を上回った場合、相続税は取得金額によって10%〜55%の税率がかけられます。

法定相続分に応ずる取得金額税率控除額
1000万円以下10%なし
1000万円超 3000万円以下15%50万円
3000万円超 5000万円以下20%200万円
5000万円超 1億円以下30%700万円
1億円超 2億円以下40%1700万円
2億円超 3億円以下45%2700万円
3億円超 6億円以下50%4200万円
6億円超55%7200万円

たとえば、被相続人に預貯金1億1000万円あり、住宅ローン800万円が残っており、お葬式の費用に200万円がかかった場合。加えて、相続人は子ども1人だったと仮定します。

まず相続財産の総額は、1億1000万円−800万円−200万円=1億円

※お葬式の費用は相続財産から控除される対象になっています。

次に基礎控除額。基礎控除額は3000万円+(600万×法定相続人1人)=3600万円です。

課税遺産総額は1億円−3600万円=6400万円

ここで表の相続税の税率を参照します。

6400万円は、5000万円超 1億円以下にあたるため、税率は30%。控除額は700万円となります。

つまり、相続税の納税額は、6400万円×30%−700万円=1220万円となるのです。

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以上のように、相続には多数の手続きが必要であり、期限も設定されています。そのうえ、法律や税の知識を問われる作業も複数あるため、親の死後、すぐにこの課題を解決するのは困難だといえます。となりますと、親が亡くなるよりも前に相続の備えを始めておいたほうがよさそうです。親の生前に相続について話しあっておくことは、準備期間を長くもてるだけではなく、当人と資産の管理や遺言書についても話しあえるため有効な方法だといえます。

今回は、亡くなった人の子どもの視点から、やるべきことや注意点を解説しました。よってこの記事に書かれていることは、死後にのこされた人が最低限、覚えておきたい内容であるため、以下の記事も参考にしていただければと思います。


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(執筆編集:NTTファイナンス 楽クラライフノート お金と終活の情報サイト編集部)

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