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遺産分割協議の基礎知識|流れ、注意点
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この記事の内容
私は、日本の4大法律事務所の一つであるアンダーソン・毛利・友常法律事務所において6年間の実務経験を積み、その間、数多くの労働問題、訴訟・紛争事件、M&A取引、各種契約書の作成・レビューその他企業法務全般を主担当として処理・解決して参りました。弁護士法人プラム綜合法律事務所は、そのような前事務所で賜ったご指導・ご支援に恥じることのない、最高品質のリーガルサービスを提供することを信念としており、ご相談案件一つ一つについて誠心誠意対応させて頂きますので、安心してご連絡、ご相談ください。
この記事をおすすめする人 財産を複数人で分割して相続することを考えている方 この記事のポイント
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「楽クラライフノート お金と終活の情報サイト」では、相続について繰り返し「遺言書はのこしておいたほうがよい」ことを述べてきました。
ただ、現実的にはすべての人が遺言書をのこしているわけではありません。遺言書がないとき、遺言書があってもその法的効力が否定されるとき、遺言書に記載されない遺産があるときなどには、遺産分割協議が必要です。
本記事では、遺産分割協議とはどういった手続きなのか、基礎知識として覚えておきたい流れや注意点などをくわしく解説します。
遺産分割協議とは
遺産分割協議とは、相続人が複数人存在する場合、被相続人の財産の分け方を全員で話しあい決定することをいいます。そのため、相続人がひとりの場合は遺産分割協議をおこなう必要はありません。
他方、法的に有効な遺言書が存在し、かつ、具体的な財産の分配方法が明示されている場合はそれに従って相続処理を進めることが可能であり、あえて遺産分割協議をおこなう必要はありません。
遺産分割協議をおこなうケースとしては、以下のような場合が想定されます。
遺言書が存在しない
遺言書は存在するが、記載された内容とは異なる割合で相続したい
遺言書に記載のない財産が存在していた
遺言書の法的効力が否定された など
遺産分割協議をおこなう際には、相続人全員が協議に参加する必要があります。ただし、必ずしもおなじ場所・時間に集まる必要はなく、電話やメールで事前に意見を集めておき、遺産分割協議書に同意する旨の署名・押印を各自から取得する方法も可能です。
遺産分割協議の流れ
実際に遺産分割協議をおこなう場合には、どういった流れで進めればよいのでしょうか。4つのポイントに分けて解説します。
だれが相続人か確認する
はじめに、遺産分割協議に参加する相続人がだれなのかを確認しておく必要があります。とくに注意したいのが、被相続人に離婚や再婚歴、養子縁組をした過去がある場合です。家族や親族が把握していた相続人以外に、じつはさらに相続人が存在していたというケースも想定されるためです。
また、被相続人に隠し子(非嫡出子)がいたことが発覚するケースもあり、このような事態を防ぐためにも戸籍情報を取得し、慎重かつ丁寧に相続人の調査をおこなわなければなりません。
被相続人の財産は、何が、いくら、どこにあるかを明らかにする
相続人が確定したら、被相続人の財産を調べ明確にします。相続する財産は、自宅を含む不動産をはじめ、現金や預貯金、有価証券などが一般的ですが、ほかにも美術品や骨董品、宝石類、自動車といった動産も財産に含まれます。
これらは、いわゆる「プラスの財産」ともよばれますが、相続の際には「マイナスの財産」も把握しなければなりません。たとえば、借金や各種ローン、未払いの税金・医療費・家賃などがこれにあたり、相続(単純承認)する際にはプラスの財産もマイナスの財産も両方を引き継ぐことになります。
なお、マイナスの財産は遺産分割の対象とはならず、各相続人の法定相続割合に応じて分割されます。そのため、たとえ遺産分割協議で遺産を相続しないこととした相続人であっても、債権者との関係では被相続人の負債について法定相続分に従って負担する義務があることに注意しましょう。
遺産分割協議の実施
次に、相続人のあいだでだれがどの財産を、どの範囲で相続するのかを明確にします。
プラスの財産とマイナスの財産がある場合には、すべての財産を一覧にした財産目録を作成することで、遺産分割協議がしやすくなります。
財産目録の作成は法律で決められているものではなく、あくまでも作成は任意です。
遺産分割協議書を作成する
最後に、遺産分割協議で決まった内容を遺産分割協議書と呼ばれる書類にします。
いつまでに遺産分割協議書を作成しなければならないという期限はありませんが、相続税の優遇措置などを受けるためには、相続開始後10か月以内に相続税の申告をすることとなっています。また、2024年4月1日から不動産の相続登記は相続があったことを知ったときから3年以内に登記する義務が新設されましたので、遺産に不動産が含まれる場合は、原則として相続開始から3年以内には遺産分割協議を終わらせるべきということになりますので、注意しましょう。
遺産分割協議書の内容
遺産分割協議書は法的効力のある正式な書類であるため、以下の必要事項を網羅しておく必要があります。
- タイトルは「遺産分割協議書」
- 被相続人の氏名
- 被相続人の死亡年月日
- 遺産分割協議への参加者(相続人)
- 相続人が相続する財産および割合
- 遺産分割協議をおこなった年月日
- 相続人の住所・自筆の署名
- 相続人全員分の捺印(実印)
財産のなかに不動産がある場合には、登記簿謄本や権利証を確認のうえ住所や建物名などを正確に記載しましょう。また、預貯金や株式といったプラスの財産だけでなく、借金などマイナスの財産ももれなく記載しておきます。
遺産分割協議書は相続人全員分を作成し、各自原本を保管しておきます。
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遺産分割協議書
被相続人 ◯◯ ◯◯(昭和 年 月 日)
死亡日 令和 年 月 日
本籍地 東京都千代田区◯◯◯ー◯ー◯
令和 年 月 日、被相続人◯◯ ◯◯の死亡にともない開始した遺産相続について、◯◯ ◯◯の相続人全員で遺産分割協議を行った結果、下記のとおり遺産を分配、取得する旨に合意したことを認める。
記
1. 下記の不動産は妻△△ △△が相続する
所在 東京都千代田区◯◯◯ー◯ー◯
家屋番号 ◯番
種類 ◯◯
構造 ◯◯◯◯
床面積 2階 70㎡
2. 下記の預貯金は長男●● ●●が相続する
三菱UFJ銀行◯◯支店
普通預金 口座番号1234567
1,000万円
3. ここに記載のない財産については、次男□□ □□が取得する
以上の内容で、相続人全員による遺産分割協議が成立したため、本協議書を3通作成し、署名押印のうえ、各自1通ずつ保管する。
令和 年 月 日
住所 東京都千代田区◯◯◯ー◯ー◯
生年月日 昭和 年 月 日
相続人 (妻)△△ △△ 実印
住所 東京都千代田区◯◯◯ー◯ー◯
生年月日 平成 年 月 日
相続人 (長男)●● ●● 実印
住所 東京都千代田区◯◯◯ー◯ー◯
生年月日 平成 年 月 日
相続人 (次男)□□ □□ 実印
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遺産分割協議、こんなときどうする?
遺産分割協議を進めるなかでは、スムーズに話し合いがまとまることもあれば、さまざまな問題が明らかになり先に進まなくなってしまうこともあります。
どういったトラブルが起こりがちなのか、それぞれの対応方法も解説しましょう。
協議をしても相続人のあいだで結論が出ない・相続税の納付期間内に間にあわないとき
協議をおこなっているものの、相続人同士の意見が対立してしまい結論が出せないこともあるでしょう。あまりにも協議が長期化してしまうと、相続税の納付期限(相続開始後10か月以内の申告)に間にあわない可能性も出てきます。
税務申告との関係では、遺産分割協議がととのわない場合も暫定的な申告が可能であるためそちらで対応すればよいですが、いつまでも協議が調わない状況を放置し続けると問題がより長期化・深刻化する可能性もあります。そのため、当事者間で協議が調わない場合は家庭裁判所に遺産分割調停申し立てることが必要となります。調停とは、調停委員が相続人それぞれの意見をヒアリングし解決策を提案することですが、それでも結論が導き出せない場合には、調停手続から審判手続に移行し、最終的には裁判所が遺産分割の具体的方法を決定します。この審判が確定した場合には各相続人はこれに従わなければなりません。
相続人に未成年がいる
相続人が未成年であった場合、法定代理人である親が代理人として遺産分割協議に参加することになります。もっともその親自身も遺産分割協議の当事者となる場合は、親子間で利益相反があることから親は代理人となることができませんので、当該子について家庭裁判所に特別代理人を選任してもらう必要があります。
遺産分割協議での遺産放棄と相続放棄はちがう
遺産分割協議では、相続人同士の話しあいによって財産の相続権を放棄することもできます。たとえば、「Aさんはすべての預貯金を相続し、Bさんは一切相続しない」という結論にいたった場合、Bさんは財産を相続することはありません。
しかし、被相続人のマイナスの財産は、債権者との関係では各相続人が法定相続分に従ってこれを負担することは前述のとおりです。そのため、Bさんは遺産分割協議で相続しないこととしたとしても、債権者から請求されれば借金の一部を返済しなければなりません。
こうしたことを防ぐためには、家庭裁判所への相続放棄の申述が必要とされます。家庭裁判所の手続きで相続放棄が認められれば、その者はそもそも相続人ではなかったことになりますので、プラス財産もマイナス財産も責任を負うことはありません。
つまり、遺産分割協議のうえで財産を相続しない旨を同意したとしても、家庭裁判所の法的手続きで相続放棄をしたことにはならない点に注意しましょう。
シニアは遺言書の作成を要検討
今回解説してきたように、法的に有効な遺言書が存在している場合には、原則的に遺産分割協議の必要はありません。そのため、終活を進めるシニア層は弁護士などの助言の下で遺言書の作成を進めれば、後からトラブルが起きる可能性を低くできるでしょう。
もし、自分が相続人として遺産分割協議に参加する必要が出ても、恐れることなく専門家の力を借りながら冷静に進めることが大切です。
協議自体が面倒に感じて意欲が低いまま遺産分割協議に参加すると、いつまでも財産の分配方法が決まらず、問題がさらに深刻化することにもなりかねないため注意しましょう。
(執筆編集:NTTファイナンス 楽クラライフノート お金と終活の情報サイト編集部)
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