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生前贈与はいくらまで非課税?2023年に改正された内容も詳しく解説

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この記事の内容

この記事を監修した人
叶税理士法人 東京事務所代表 不動産専門の税理士 萱谷有香
不動産投資に特化した税理士事務所で働きながら収益物件について税務と投資面で多くの知識を得られたことを活かし
自らも不動産投資を手掛ける。
大手管理会社、ハウスメーカーや賃貸フェアなどで講演実績があり、記事執筆も行う。
不動産投資の規模を拡大していくために、なくてはならない金融機関からの融資についても積極的に紹介やアドバイスを行う。
物件購入前、物件保有中、物件売却時、相続時、どの時点で相談を受けても必ず投資家にプラスになるアドバイスを心掛けている。
著書に『減価償却節税バイブル』( 技術評論社)がある。

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自分が元気なうちに少しずつ相続をしたい方


この記事のポイント

  • 生前贈与は親族でなくても可能
  • 子や孫の結婚、子育ての際の贈与は非課税枠がある
  • 死亡時に3年以内の贈与は相続税の対象となることも


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自分の死後に財産を受け継いでもらう、相続。相続によって、血を分けた親族が争ってほしくないですし、みんなが笑顔になってくれたら、嬉しいですよね。

そこで、自分が生きているうちに財産を引き継いでもらう「生前贈与」を検討する方もいるでしょう。そして、生前贈与はその他の贈与とおなじく、贈与税の課税対象となりますが、年間110万円までの贈与金額などによっては基礎控除の範囲内となり、非課税となる場合があるからです。

この記事では、生前贈与の非課税枠と基礎控除を受けるときの注意点を説明します。

生前贈与に関する贈与税の非課税枠4つ

生前贈与の非課税枠にはもっとも代表的な「暦年贈与の基礎控除額」をはじめとして、教育資金や子育てを目的とした資金の贈与への非課税など、以下の4つがあります。

1. 暦年贈与の基礎控除額

贈与税は、ある人が1月1日から12月31日までの1年間にもらった財産の合計額から110万円を差し引いたのこりの額に対して課税されます。つまり、110万円までの贈与(生前贈与)は税金がかからないということです。これが、暦年贈与の基礎控除額と呼ばれるものです。

ただ、相続税対策としての生前贈与で注意しなければならないのが、贈与した人が亡くなると、亡くなる前の3年間の贈与は相続税の対象となってしまう点です(2023年末までで、2024年以降は7年に期間が延長。詳細は後述)。これは、亡くなる直前に贈与することで、相続税から逃れる人を防止するためにあります。もっとも、子どもも孫もいる人の場合は、法定相続人ではない孫に贈与すれば亡くなる前の3年以内の贈与も相続税の対象とはなりません。

なお、2020年12月に閣議決定された「令和3年度税制改正の大綱」に、暦年課税制度の見直しが盛り込まれていたため、暦年贈与の非課税枠が廃止されるのではないか、との見方がありました。しかし、2023(令和5)年の税制改正では暦年贈与の基礎控除が廃止されず、その他の部分が変更となりました。

2. 相続時精算課税の特別控除額

前述のとおり、生前贈与を含む贈与は相手がだれでも(つまり、法定相続人や親族以外にも)できます。しかし、60歳以上の父母または祖父母などから18歳以上の子・孫へ贈与する場合は、2500万円までが非課税となりま。これが、相続時精算課税の特別控除額です。

この2500万円という控除は、現金でも不動産でも対象となります。贈与が2500万円を超えた場合は、一律で20%の贈与税が課税されます。

2024年から贈与税・相続税の両方がかからない制度が新設

先ほど、生前贈与しても贈与した人が亡くなったときから遡って3年間の贈与は贈与税の対象になると解説しましたが、2023年の税制改正により、これが2024年〜2031年のあいだに、段階的に延長されていきます。

一方で、従来の相続時精算課税は一度、これを選択してしまうと年間110万円までの贈与税の基礎控除が適用できませんでした。税制改正後も贈与税の暦年課税か相続時精算課税のどちらかしか選べないのは変わらないものの、相続時精算課税に年間110万円までの基礎控除が設けられます。

これらの税制改正が適用されるのは、2024年1月1日以降の贈与です。

3. 結婚や子育て資金贈与の非課税枠

子どもや孫が結婚および出産・子育てをするために資金を贈与した場合の非課税枠が存在します。

結婚の場合は300万円が非課税枠となっており、挙式に関する費用、結婚によって新たに住宅を借りるための費用、引っ越し代が非課税の対象です。

出産・子育ての場合は、1000万円までが非課税枠となっています。不妊治療を含む「妊娠に関する費用」、産婦人科への入院費など「出産に関する費用」、医薬品購入や保育園通園など「育児に関する費用」が非課税の対象となります。

ただ、結婚や出産・子育てに関しては一括で贈与されなければ、この非課税の恩恵は受けられません。また、金融機関に結婚・子育て資金口座を開設し、かかった費用の領収書を金融機関に届け出ることも必要です。

4. 贈与における配偶者控除

贈与における配偶者控除は、別名「おしどり贈与」とも呼ばれ、居住用の不動産もしくは居住用の不動産を買うための資金は2000万円までが非課税となります

2024年に生前贈与に関する税制が変更

ここまで触れてきたように、2023年の税制改正によって2024年1月1日からの贈与に新たな制度が適用されます。まず、そのポイントを挙げ、順に詳細を説明していきます。

  • 生前贈与をしたとき相続税の対象となる期間が、従来の贈与者の死亡前3年間から段階的に延長される

  • 相続時精算課税を選択したとき、110万円の基礎控除が設けられる


生前贈与が相続税の対象となる期間が変更される

前述のように、110万円以下の暦年贈与をしていても、贈与をした人が亡くなるとその前の3年間の贈与は、相続税の対象とされていました。これが、2023年の税制改正によって7年間に延長されます。延長の理由は、暦年贈与による実質的な相続税課税の回避を抑止し、暦年贈与をしなかった人との不公平感を緩和するためです。

まず、従来の制度と新しい制度を比較し、何が暦年贈与をした際に相続税の対象となるかを見てみましょう。

贈与の時期何が相続税の対象となるか
2023年12月31日までの贈与(従来の制度)
  • 亡くなる3年前までの贈与全額が相続税の対象となる
2024年1月1日以降の贈与(新しい制度)
  • 亡くなる3年前までの贈与全額が相続税の対象

  • 亡くなる4〜7年前までの贈与も相続税の対象となるが、100万円の控除がある

また、2024年にいきなり3年から7年へと相続税の対象となる期間が延長されるわけではなく、当面(2026年まで)は3年間が対象の期間となり、その後、段階的な延長がされていきます。

いつ相続が発生したか
贈与が相続税の対象となる期間
2026年12月31日まで
3年
2027年
最長4年
2028年
最長5年
2029年
最長6年
2030年
最長7年
2031年1月1日以降
7年

新たに年間110万円の基礎控除が設けられる

従来は、暦年贈与の110万円の控除か相続時精算課税のいずれか一方しか利用できませんでした。そのため、相続時精算課税を選択して子・孫への110万円以下の贈与をしたときに贈与税の申告をする必要がありました。

しかし、税制改正によって相続時精算課税にも110万円の基礎控除が設けられることになり、110万円までの贈与は申告が不要となっています。ポイントをまとめます。

  1. 相続時精算課税を選択するとき、年間110万円までの贈与は控除対象となり申告が不要

  2. 暦年課税の110万円の基礎控除とは異なる

  3. 年間110万円をこえる贈与は申告と、合計2500万円を超える場合には贈与税の納付が必要


1と2について解説すると、この相続時精算課税の基礎控除と贈与税の基礎控除はともに額が110万円ですが、異なる制度です。

また従来通り、暦年課税と相続時精算課税のいずれかしか選択できず、一度、相続時精算課税を選択すると暦年課税に途中で変えることはできません。つまり、相続時精算課税と暦年課税を併用できるようになったわけではなく、あくまで「相続時精算課税に、新たな110万円の基礎控除が設けられた」ということです。この変更によって、従来の相続時精算課税では年間110万円以下の贈与でも申告が必要でしたが、不要になりました。

しかし年間110万円をこえる贈与をおこなったときは、基礎控除の金額を超えるため贈与税の申告と、合計2500万円を超える場合には納付が必要になります。

暦年贈与の基礎控除を受けるときの注意点

贈与税の非課税枠のなかでももっともベーシックなものといえるのが、暦年贈与の基礎控除です。ただ、この控除を受けるためには、税務署から「毎年おなじ金額をおなじ時期に贈与している(=定期贈与)」と見なされないよう注意しなければ、110万円以下の贈与であっても贈与税加算の対象となってしまう場合があります。

ここでは、暦年贈与の基礎控除を受けるためにしなければならないこと、してはいけないこと6つを取り上げます。

1. 贈与契約書を作成・締結する

前述のとおり、贈与は当事者同士の合意があったうえでおこなわれるものです。そのため、贈与契約が存在するという記録をのこすために、贈与契約書を作成し、当事者間で締結する必要があります。

2. 毎年同額を贈与しない

毎年同額を贈与してしまうと、定期贈与とみなされかねません。1年目は100万円、2年目は105万円、3年目は110万円などと、年ごとに金額を変えて贈与しましょう。

3. 毎年おなじ時期に贈与しない

金額と同様、時期も毎年おなじにならないよう、気をつけましょう。おなじ時期の贈与では定期贈与と見なされる可能性があるためです。

4.2024年以降課税対象となる期間が変更される

これまでも解説してきたように、贈与に関する税制の大きな改正があり、とくに暦年贈与をする場合は相続税の対象として見なされる期間が3年から最長7年へと段階的に変更される予定です。贈与をしたい側にとって自分がいつ亡くなるか予測することは不可能に近いといえますが、期間の延長が始まるのは2027年からですので、暦年贈与をする際は、早めにスタートするのも一つの方法となりそうです。

5. 死亡時に3年以内の贈与は相続税の対象となることに注意する

前述のとおり、相続開始前死亡してから3年以内の法定相続人への贈与は相続税の対象となります。これを非課税とする方法はありませんが、たとえば、80歳で亡くなるというときに、子への毎年の贈与を65歳から始めるのと75歳から始めるのでは、当然、65歳からはじめたほうが暦年贈与の基礎控除による効果がもたらされます。

相続をすこしでも意識し始めたら、なるべく早めに生前贈与を始めたほうがよいといえるでしょう。

6. 贈与を受けた人が財産を管理する

みなさんのなかには、お孫さんの名義で銀行口座をつくり定期的に預金をし、しかしその通帳は自分がもっている、という人もいるかもしれません。この場合、管理しているのは自分とみなされて、暦年贈与の基礎控除が受けられない可能性があります。贈与する以上は、贈与を受ける人が財産を管理しましょう。

7. 110万円超を贈与し、あえて贈与税を納付する

きちんと贈与という形をとっていることを示すため、あえて贈与税を納付するという方法もあります。たとえば、111万円を贈与する場合、課税対象は1万円で税率は10%、すなわち贈与税の金額は1000円となります。毎年、納付の手続きをするのは多少面倒かもしれませんが、贈与する金額に比べれば少ない額で贈与の証拠がのこせます。ただ、「かえって税務署・税務官が関心をもつ」と考える人もいるため、この方法を採るならば税理士などに助言を仰ぐことがよいでしょう。

税制をよく知り賢く贈与しよう

今後、税制が変わる可能性は否めませんが、たとえば暦年贈与として毎年100万円前後を60歳から80歳までの20年間、親族へ贈れば総額は約2000万円となります。この場合で、83歳以降に自分が亡くなったとすれば、2000万円全額が非課税となる点を考えると、いかに生前贈与が税負担の軽減につながるか、ご理解いただけるのではないでしょうか。

また、結婚や子育て資金贈与の非課税枠で紹介したように、子や孫のライフステージの変化による贈与でも、贈与税が非課税となる点もぜひ覚えていただければと思います。

もちろん、安心して税制優遇を受けるためには、税理士をはじめとした専門家の意見を聞くことも大切です。


(執筆編集:NTTファイナンス 楽クラライフノート お金と終活の情報サイト編集部)

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