コラム

2023年4月施行の「民法」は何が改正される?所有者が不明の不動産も管理・処分可能に

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この記事の内容

この記事を監修した人
弁護士法人プラム綜合法律事務所 梅澤康二

私は、日本の4大法律事務所の一つであるアンダーソン・毛利・友常法律事務所において6年間の実務経験を積み、その間、数多くの労働問題、訴訟・紛争事件、M&A取引、各種契約書の作成・レビューその他企業法務全般を主担当として処理・解決して参りました。弁護士法人プラム綜合法律事務所は、そのような前事務所で賜ったご指導・ご支援に恥じることのない、最高品質のリーガルサービスを提供することを信念としており、ご相談案件一つ一つについて誠心誠意対応させて頂きますので、安心してご連絡、ご相談ください。

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この記事をおすすめする人

相続や不動産取引をこれから予定している方


この記事のポイント

  • 民法は契約や取引、家族関係や相続などに関する法律
  • 所有者不明の不動産の管理や処分に関する制度が作られた
  • 民法の改正は生活に直結することもあるので要チェック


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私たちの生活に大きくかかわる法律といえる「民法」。民法は、社会の変化に対応するため、たびたび改正されてきました。たとえば、成人の年齢が20歳から18歳に引き下げられたのも2022年4月1日に施行された民法改正によるものです。 

2023年4月に施行される民法改正では、不動産の取引や権利、相続に関連する部分が改正され、所有者や共有者が不明の不動産も、より柔軟に管理・処分ができるようになります。とくに不動産の相続についての改正は、相続の方法を検討している、家をもっている方にとって、非常に気になる方も多いのではないでしょうか。

この記事では、相続にも大きくかかわってくる2023年4月施行の民法改正の内容とポイントを解説します。

なお、関連する法律として、相続登記の義務化などが規定された改正不動産登記法も2024年4月に施行されます。こちらは、以下の記事をご覧ください。


2023〜24年に段階的な施行がされる改正不動産登記法のポイント|相続登記しなければペナルティがある場合も|楽クラライフノート お金と終活の情報サイト

2024年4月1日より施行される「相続登記の義務化」があり、正当な理由がなく相続登記を怠ると、10万円以下の過料というペナルティが課せられることになります。そのほかにも、この2023年4月には、実態とは異なり形骸化してしまった登記を権利者が単独で抹消申請できるようにする規定が設けられるなど、不動産登記法は段階的に改正法が施行されていきます。 そこで、この記事では不動産登記法の概要や、2021年の改正法について、相続登記の義務化以外の変更点・ポイントを含めた解説をします。

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民法とは

「民法」とは、「人」と「人」(人とは個人〈法律上は自然人と呼ばれる〉だけでなく会社などの法人も含む)とのあいだでの、権利や義務に関して適用される法律です。日本における六つの主要な法典である「六法」の1つであり、契約や取引、家族関係や相続など、日常のあらゆる場面で広く関係する法律となっています。

2023年4月に施行される民法改正の背景

2023年4月1日に施行される民法改正では、「所有者不明土地の発生予防と、利用の円滑化」を目的に民事基本法制の見直しがおこなわれます。

所有者不明土地とは、不動産登記がきちんとおこなわれていないことなどが要因となり、所有者がわからなくなってしまった、または所有者との連絡がつかなくなってしまった土地のことです。所有者不明土地は、全国で約410万ヘクタールの面積を占めているといわれ、九州本土の面積を大きく上回るという深刻な社会問題になっています。

こういった背景から、2021年4月に「民法等の一部を改正する法律」が成立しました。所有者不明土地の解消に向けた民事基本法制の整備が、2023年4月から進んでいきます。

(参照:法務省「民法等の一部を改正する法律案」)

民法改正の具体的な内容とポイント

今回の民法改正は、所有者不明土地の利用の円滑化を目的に、以下の4つをポイントに施行されます。

  • 所有者不明の不動産の管理・処分制度を創設

  • 不明共有者がいる土地に関する仕組み

  • 相続が長期化している財産に関する遺産分割の見直し

  • ライフラインの設備設置権に関する規定の整備

 

それぞれくわしく見ていきましょう。

所有者不明の不動産の管理・処分制度を創設

所有者不明土地・建物の管理に特化した財産管理制度が新たに設けられます。裁判所は利害関係人から申請があった場合に所有者不明の不動産について管理人を選任することが可能になりました。管理人の権限は原則として土地の保存行為や利用・改良行為に限定されますが、裁判所の許可を得ることでこれを超える行為(たとえば所有者不明土地の売却など)ができるようになりました。

また、社会的に問題となっている空き家やゴミ屋敷など、管理が放棄されて、さらに他人の権利が侵害されるおそれがある場合にも、利害関係人からの申請があった場合には裁判所が管理人を選任することが可能になります。

このように今回の改正では所有者不明不動産や管理不全不動産について適切な管理・処分をより柔軟におこなえる制度づくりがされています。

不明共有者がいる土地に関する仕組み

これまでは、所在が不明な共有者がいる場合、利用に関する共有者間の取り決めが困難になる状況がありました。改正法では、裁判所の関与のもとで、不明共有者に公告などをおこなったうえで、のこりの共有者の同意が得られれば共有物の変更行為や管理行為ができるようになります。

また、不明共有者の持ち分の価額に相当する額の金銭を供託することで、不動産の共有関係を解消する仕組みも導入されます。

相続が長期化している財産に関する遺産分割の見直し

通常、遺産分割は遺言書による分割か、法律上で認められた相続人間での協議(遺産分割協議)によっておこなわれます。しかし、何らかの原因で相続の手続きが進行されないことも少なくありません。

そこで、相続制度が見直され、相続開始時から10年を経過した場合は、遺産の具体的配分を求める分割の利益を消滅させ、法定相続分や指定相続分にしたがった画一的な処理が可能となる仕組みが作られました。

これにより、遺産分割が長期化し、相続が未了状態となってしまった不動産などの解消が促進されることが期待できます。 

ライフラインの設備設置権に関する規定の整備

電気やガス、上下水道など、ライフラインは生活に不可欠なものです。改正法では、ライフラインを引き込むための導管などを他人の土地に設置する際の権利を明確化し、所有者不明の土地に設備設置をしなければならない場合にも対応できるようになります。

ライフラインの引き込みを円滑化し、土地の利用を促進する狙いがあります。

民法の改正内容はしっかりとチェックしよう

冒頭でもふれたとおり、「民法」は数ある法律のなかでも私たちの生活に深く関連する法律です。この記事でも解説したような不動産や相続だけではなく、モノやお金に関する権利、家族との関係、成人年齢にいたるまで、あらゆる場面で適用されています。そして、民法は毎年のように改正され、すこしずつ形を変えています。

民法の改正内容をしっかりと確認し、把握しておくことは、自身や家族を守ることにもつながるのです。たとえば、民法は2020年に「大改正」されたのをご存じ知でしょうか。この年の民法改正によって、権利の消滅に関して定めている消滅時効に関する規定が変わりました。これまで「債権を行使できるときから10年」が権利消滅の期間でしたが、改正法では「債権者が権利を行使できることを知ったときから5年」または「権利を行使できるときから10年」のうち短いほうと期間が短縮されたのです。このことを知らないまま権利が消滅してしまう、といったことになると不利益を被ってしまうかもしれません。

「難しそうでわからない!」と敬遠しがちな法律の知識ですが、日本で暮らしていくうえで、最低限の民法の知識はもっておくとよいでしょう。


(執筆編集:NTTファイナンス 楽クラライフノート お金と終活の情報サイト編集部)

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