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延命治療とは|意思表示の方法やメリット、費用についてくわしく解説
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この記事の内容
早期緩和ケア大津秀一クリニック院長。岐阜大学医学部卒業。緩和ケア医。日本緩和医療学会 緩和医療専門医、総合内科専門医、がん治療認定医、日本老年医学会専門医、日本消化器病学会専門医。内科医、ホスピス医、在宅医を経て大学病院緩和ケアセンター長を務める。2018年に早期からの緩和ケアに特化したクリニックを設立、全国からの相談にあたっている。著書に『死ぬときに後悔すること25』(新潮社)、『傾聴力』(大和書房)などがある。
この記事をおすすめする人 終末期に備えて意思表示等の準備を行っている方 この記事のポイント
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終末期において病気が進行すると、命に関わる病気にかかる場合が出てきます。とくに病気が進行すれば、もうこれ以上、回復の見込みがなくなってしまうといったことが起こり得ます。そのときは、できるだけ命を永らえさせる「延命治療」をおこなうか、あるいは、延命をせずできる限り自然の流れに身を任せるかという選択をするケースが出てきます。
今回は、延命治療に関する3つのことをご紹介。
- 延命治療の内容と費用
- 延命治療のメリット・デメリット
- 延命治療に関する意思表示をおこなう方法
最後まで読めば、人生の終わり際に取るべき行動がはっきりするでしょう。
延命治療とは?具体的な処置とその費用
延命治療とは「生命維持処置を施すことによって、それをしない場合には短期間で死亡することが必至の状態を防ぎ、生命の延長を図る処置・治療のこと」を指します。具体的な治療方法としては、人工呼吸器による延命処置、点滴や胃ろうといった人工栄養法による処置などが存在します。
シニアは延命治療をどう考えている?
少子高齢化が進む日本において、シニア世代は延命治療に対してどのような考えをもっているのでしょうか。
2017年に内閣府が発表した「高齢社会白書」によると、65歳以上のシニア世代のうち91.1%の人が「延命のみを目的とした医療はおこなわず、自然にまかせてほしい」と回答していることがわかりました。ちなみに、2012年度の調査ではおなじ回答をした人の割合が87.7%、2007年度は81.1%であったため、延命治療を望まないシニアが増えていることがわかります。
また、「すこしでも延命できるよう、あらゆる医療をしてほしい」と回答した人の割合は年々低下し、2017年度は4.7%となっています。以上のことを踏まえて考えると、人々の延命治療に対する考え方が変化しているのがわかります。
延命治療でおこなわれること
延命治療といってもさまざまな治療方法があります。ここでは、人工呼吸器や人工栄養法という代表的な2つの治療法を紹介します。
人工呼吸器による延命治療
「人工呼吸器」は呼吸機能が著しく低下し、自力での呼吸ができなくなった場合に用いられるものです。いわば強制的に呼吸を維持させているのとおなじ状態であるため、回復不能な状態の場合は人工呼吸器を取り外すと生命が維持できなくなることを意味します。
人工栄養法による延命治療
「人工栄養法」は自力で食べ物や飲み物を摂れなくなった場合に、点滴や胃ろうなどの方法で栄養と水分を人工的に補給し生命機能を維持する方法です。ちなみに、胃ろうとは腹部に小さな穴を空け、胃の中にチューブから直接栄養を摂り入れる処置のことを指します。
延命治療をするメリットとデメリット
延命治療にはどのようなメリットとデメリットがあるのでしょうか。延命治療をするか否かの判断にあたって、参考にしておきたいポイントをまとめました。
延命治療をするメリット
人によっては、先述した人工栄養などで年単位の余命延長があったり、なかには状態が改善するケースもあります。そうすれば、生きているあいだにやっておきたいことに取り組めます。たとえば、これまでお世話になった人に感謝の気持ちを伝える、家族との時間を楽しむ、相続で問題にならないように整理しておくなどをおこなえます。
このように延命治療をおこなうことで、生活の質の改善が見込めるケースもあり、そのような場合はメリットが相対的には高くなります。一方で、終末期の人工呼吸器や、余命数週間の人工栄養などは挙げたようなメリットを享受するのが難しくどれくらいのメリットがあるかを医療従事者と相談するということが大切になります。
延命治療をするデメリット
延命治療のデメリットとしては、患者本人の意思が尊重されない可能性があります。たとえば重度の病気で意思疎通が難しい場合、「リビングウィル」という事前指示書や家族などへの事前の希望伝達があれば延命治療を拒否する意思を示すことができます。しかし、リビングウィルを事前に用意していたり、家族と十分相談していたりするケースは少なく、本人の意思が不明なまま延命治療を選択せざるを得ないケースもが少なくないのは事実です。
その結果、家族に対して延命治療の判断が委ねられることになりますが、延命治療の開始や中止する決断をくだす際に「本当にこれでよいのだろうか」「本人の意思に反していないだろうか」と考え、心理的に大きな負担や苦痛を強いられることも少なくありません。
また延命治療のための入院期間が長くなればなるほど費用がかさみ、経済的な負担も大きくなるのもデメリットの一つとして挙げられます。しかし、特定の条件を満たせば、厚生労働省が定めた上限額を超えた分の医療費を支援する高額療養費制度などの支援を活用することで治療費をある程度は抑えることが可能です。
事前指示書で延命治療の意思表示が可能
家族に対して負担をかけず、自分自身が望む人生の最後を迎えられるようにするためには、どのような準備が必要なのでしょうか。
まず、先ほども紹介したように、リビングウィルとよばれる事前指示書を用意しておくことが重要です。これは、延命治療を施すか否かを患者本人の意思として表す書類なのですが、さまざまな状況やパターンにあわせて選択します。
千葉大学病院では「私の診療に関する希望書(事前指示書)」としてフォーマットの一例を公開しています。このなかには、「ひどく具合が悪くなったときに自宅で最期を迎えるか、または病院で治療を希望するか」を選択できるほか、もし病院での治療をおこなう際にも、以下の延命治療を施すか否かを患者本人が選択できるようになっています。
心肺蘇生(心臓マッサージなど)
栄養(胃ろうなど)
注射(点滴など)
輸血
そのほかの希望
また、事前指示書とおなじようなものとして「尊厳死宣言公正証書」もあります。これは患者本人が延命治療を希望しない旨を外部に宣言するための書類で、公証役場や行政書士事務所などに依頼することで作成できます。
最近の考え方では、書類作成そのものよりも、いざという時の代理人を決めて、家族皆で十分それを相談することやそのプロセスが重要だとされています。そのような機会を、ご家族が集まる際にもつこともとても大切だといえるでしょう。
延命治療の場所・費用・保険制度
延命治療は、病院や施設、あるいは、自宅で在宅医療を受けるという方法があります。
亡くなる直前の1か月間の入院費は65万円ほどが平均です。しかしながら、この金額を全額支払う必要はなく、高額療養費制度を利用すると、(収入によっても異なりますが)5万7600円ほどに抑えることができます。
高額療養費制度とは、医療費が高額になった場合に一定金額をカバーしてもらえる制度です。全額をカバーしてもらえるのではなく、年収等によって自己負担の割合が変わります。
参考:高額な医療費を支払ったとき | こんな時に健保 | 全国健康保険協会
治療方法別の負担金額は以下の通りです。
治療方法 | 高額療養費制度を適用した場合の自己負担限度額(75歳以上) |
人工呼吸器による延命治療 | 5万7600円/月〔※4万4400円/月〕 |
人工栄養法による延命治療 | 5万7600円/月〔※4万4400円/月〕 |
※〔 〕内の金額は、過去12カ月間に高額療養費の支給が3回あった場合の4回目以降(多数回該当)から適用される限度額
延命治療を受ける場合・拒否した場合の医療費の比較
延命治療で期待できる余命によって費用は大きく変わるため、一概にはいえません。
年単位の余命があれば、医療費だけではなく、介護等にかかる費用も相応のものとなるでしょう。逆に、余命がかなり限られているものの延命治療を受ける場合は、高額療養費制度などによって医療費の上限はあるので、延命治療の有無で実際に支払う医療費はそれほどは変わらないかもしれません。
病院にはMSW(医療ソーシャルワーカー)などの専門家がいます。こうした専門家に活用できる諸制度などの知識をもとに経済的問題などについて相談に乗ってくれるでしょう。お金の不安があるならば、医療者に気軽に相談することで、適切な専門家につないでもらいやすくなります。覚えておくとよいでしょう。
延命治療をしない場合におこなわれる医療
患者本人が延命治療を希望しない場合であっても、医師は患者本人の痛みや苦痛をやわらげるために緩和ケアとよばれる処置や治療をおこなうのが一般的です。具体的に提供される医療に次のようなものがあります。
通院による医療
病気ががんの場合は、緩和ケアを目的とした専門の外来がある医療機関も多く、定期的な通院によって患者本人の苦痛を和らげるための処置をおこなうケースもあります。緩和ケアの重要なポイントは、病気そのものの治療を目的としているのではなく、鎮痛薬やその他の薬を用いることで、痛みやほかのさまざまな苦痛を和らげることに主眼が置かれている点にあります。
ちなみに、緩和ケア外来が設置されていない医療機関の場合は、ほかの医療機関の緩和ケア外来に通う選択肢もあります。
緩和ケア病棟への入院
病気ががんの場合は、進行度合いや患者本人が訴える痛みやつらさの程度によっては、通院ではなく緩和ケア病棟やホスピスへの入院による緩和ケアがおこなわれる場合もあります。入院といっても一般的な病棟とは異なり、症状緩和の専門家がいて苦痛緩和に携わってくれて、患者本人や家族にとってもストレスが比較的少ないことが特徴といえるでしょう。
在宅療養
患者本人の希望によっては、在宅での療養も選択できる場合があります。住み慣れた自宅はストレスも少なく、患者本人にとっての精神的負担を和らげてくれるでしょう。もちろん、自宅療養中に容態が変わったり、自宅介護が難しくなった場合には通院または入院による緩和ケアに切り替えることも可能です。
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自分の最期を考え、意思表示しよう
延命治療を「する・しない」の選択にあたっては、その人自身の考え方や方針が尊重されるべきものです。しかし、病気の進行状況によっては意思表示が難しくなるケースも想定されるでしょう。まずは自分にとっての最期はどのようなものであるのを希望するのかをよく考え、健康なうちに家族皆で十分このようなことを話しあい、事前指示書や尊厳死宣言公正証書などもできれば作成しておきましょう。
(執筆編集:NTTファイナンス 楽クラライフノート お金と終活の情報サイト編集部)
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