基礎知識

終末期医療とは|自分らしい最期を迎えるために知っておこう

この記事の内容

日本は、国際的に見ても病院での死亡率が高く、その割合は全体の約7割に上ります。そして、多くの人が「在宅で最期を迎えるのは難しい」と考えるのは、主に家族にかかる負担を心配してのことといわれているのです。
(参照:厚生労働省「看取り 参考資料」2017年)

「いかに自分らしく、満足できる人生の最期を迎えるか」「家族の負担や経済面を考えて、理想の実現が可能か」は、自分自身のことだからこそ自分で考えておきたいもの。そのためには、終末期医療について知ることが不可欠です。

こちらの記事では、終末期医療の概要や費用から受ける場所の選択肢まで、くわしくご紹介します。

人生の最期を考えるべき理由

かつての日本では、死は口にしてはいけない話題と考えられていました。しかし徐々にその風潮は薄れており、「終活」として自分の死後のことを考え、家族と話しあう人が増えてきています。

あなたは、病気の治療や介護が必要になった場合に「どこで、どのようなケアを受けて最期を迎えたいか」を考えたことはありますか?

どのように最期を迎えたいかを考えることは、自身の尊厳を守り「自分らしい人生」を実現するために欠かせないことであり、「いまをどのように生きたいか」という前向きな考えや行動につながります。

また本人がどのような最期を望んでいるのかをはっきり意思表示することは、治療や介護をサポートし、後にのこされる家族にとって大きな助けとなります。「自分で判断できなくなってから、家族が延命治療をするかの選択を迫られ、苦しい思いをする」などといった負担をすこしでも減らすために、自分の人生の最期のことは自分で考えておきましょう。

終末期医療とは

「終末期医療」とは、終末期(=患者さんが助かる見込みのない状況になったとき)において、本人の意思を尊重して尊厳を守り「苦痛のない自然な死を迎えられるようにする」ためのケアのこと。「ターミナルケア」とも呼ばれます。
(参照:御前崎市総合保健福祉センター「終末期医療について」)

人工呼吸器や抗生剤などの薬物の使用、チューブやカテーテルを使った栄養の注入など、延命を目的とした治療を差し控え、病気による痛みや不快感を取り除いて、穏やかな最期の生活を実現するためのケアをおこないます。

「終末期医療を選択するかどうか」また「いつから開始するか」の判断材料は、基本的には「本人の意思」です。しかし本人に意識がない場合や、たとえば認知症の方の場合など意識があっても判断力がないときは、家族に判断が委ねられます。

終末期医療を選択することは、すなわち延命のための措置をやめることを意味するため、非常に決断が難しいデリケートな問題です。また意思表示や確認ができなくなるときがいつ訪れるかは、予測ができません。

そのため、元気なうちから「自分にもしものことがあったときに終末期医療を選択するのか」「延命の措置を可能な限り続けてもらうのか」を考えることが大切になります。また家族にも相談したり、思いに変化がないか繰り返し話しあったりすることも重要です。

確実に自分の意思を実現してもらうために、「リビングウィル」(元気なうちに自分の意思を表しておくこと)と呼ばれる意思表示をしておく人もいます。

終末期医療でおこなわれるケア

続いて、終末期医療でおこなわれるケアの内容を、「身体的ケア」「精神的ケア」「社会的ケア」の三つに分けてくわしくご紹介します。

身体的ケア

  • 痛みや不快感の緩和

病気による身体の痛みや不快感を取り除くため、鎮痛薬などの投薬がおこなわれます。

  • 栄養の補給

自身で食事をとることができなくなったときに、栄養の補給をおこないますただしチューブなどを用いて栄養をとったり点滴をしたりすることは、病気自体の改善が望めない場合は「延命措置」にあたります。そのため「栄養補給をおこなうか」「どのような方法をとるか」などは、本人や家族の意思を尊重して決められます。

  • 日常生活上の補助

着替えや移動、入浴や排泄など、日常生活をストレスなくおくるためのサポートをおこないますとくに身体を清潔に保つこと、整髪やお化粧などで身だしなみを整えることは、明るく穏やかな日々を過ごすにあたって、重要なケアのひとつです。

精神的ケア

終末期を迎えた患者さんは、長く続いた闘病のストレスや死に対する恐怖や不安、また家族に対する申し訳なさなどから、気持ちが不安定になりやすいものです。そのため、穏やかな生活をおくれるような精神的ケアが求められます。

  • 環境づくり

多くの時間を過ごしていた自宅などに近い環境をベッドの周りにつくり、リラックスできるように配慮をします。思い出の写真やお気に入りの品物などを身近なところに置いておく方もいます。

  • 過ごし方の工夫

本人の不安な気持ちに寄り添ってじっくりと話を聞いたり、趣味など好きなことをして過ごす時間を作ったりします。また家族や友人と過ごす時間を設けることで、孤独や寂しさを感じさせないような工夫もなされます。

社会的ケア

終末期医療を受けている人の気持ちの負担になりやすいのが、家族の負担のこと。入院や介護のための費用や手続きで、家族に負担や迷惑をかけてしまっているのではないか、と思いつめてしまうこともよくあります。

そのためソーシャルワーカーやケアマネジャーは、医療費軽減や支援制度にまつわる情報提供などのサポートをおこないます。また家族のストレスを軽減するために、悩みごとの相談など家族に対するケアもおこなう場合が多くなっています。

終末期医療がおこなわれる場所

終末期医療というと病院でケアを受けるイメージをもたれる方も多いかと思いますが、自宅や施設で受けることもできます。

ここからは、「在宅」「施設」「病院」それぞれの場所で受ける終末期医療の、メリット・デメリットをご紹介します。

在宅での終末期医療

医師や看護師の診察を受けたり介護サービスを利用したりしながら、自宅で最期の時間を過ごす方法です。

在宅ケアのメリット

  • 暮らし慣れた環境で生活できるため、本人がリラックスして精神的ストレスも少なくなる場合が多い

  • 家族といっしょに過ごす時間を増やすことができる

  • 身近な環境にお互いがいるため、家族にとっても安心感がある

在宅ケアのデメリット

  • トイレや食事のサポートや床ずれの予防を家族が担う側面が大きいほか、症状や身体の状態によっては、医療的なケアまで家族が担わなければいけない場合がある

  • 24時間体制でのケアが必要なため、家族の肉体的・精神的な負担が大きい

  • 容態が急変した場合に、医療者の対応を受けるまでの時間のタイムラグがある

  • 体調が悪化して医療者が介入する回数が増えると、費用の負担も増える

介護施設での終末期医療

看取り看護をおこなっている施設に入居し、看護師や介護スタッフによる24時間体制でのケアを受ける方法です。

施設でのケアのメリット

  • 24時間体制でサポートしてもらえるため、家族の肉体的な負担が少ない

  • 床ずれの予防や移動、食事、トイレなどのサポートもプロに任せる安心感がある

  • ほかの利用者とコミュニケーションが取れることが、本人にとって明るく過ごすための精神的ケアになる場合もある

施設でのケアのデメリット

  • 緊急の場合などに、家族がすぐに駆けつけられるとは限らない不安がある

  • 面会時間が決められていたりと自由度は低い

  • 体制が充実している施設では、費用の負担が大きくなることもある

病院での終末期医療

病院やホスピスなどで、終末期医療のケアを受ける方法です。

病院でのケアのメリット

  • 容態が急変しても医師や看護師がそばにいるほか、身体の状態を常に把握しておいてもらうことができる

  • 24時間体制でサポートしてもらえるため、家族の肉体的な負担が少ない

  • 病院にソーシャルワーカーがいれば、医療費や手続きなど家族の不安についても相談ができる

病院でのケアのデメリット

  • 治療内容や期間によっては、費用が大きな負担になる

  • 緊急の場合などに、家族がすぐに駆けつけられるとは限らない不安がある

  • 面会時間が限られるなど自由度が低く、本人が孤独を感じやすい場合がある

  • 病院の性質により最期まで療養できず、転院が必要になったり、入院ができなかったりすることもある

終末期医療にかかる費用

70歳以上の高齢者の場合、医療費の自己負担割合は現役世代よりも軽くなります。

  • 70歳から74歳までの人:2割

  • 75歳以上の人:1割

※所得が現役並みの人はこの限りではありません。
※2022年をめどに75歳以上で年収200万円の人は2割の負担に引き上げる方向です。
(参照:厚生労働省「医療費の一部負担割合について」2015年)

日本慢性期医療協会の定例記者会見資料(2019年)によると、終末期患者の入院医療費は、医療療養病床の場合で「一日あたり約28,500円」とされています。
加えて、治療内容によって費用が変動するほか、寝具代や差額のベッド代などの費用がかかります。

在宅でケアを受ける場合、訪問診療の費用やベッドなど設備費用に加えて、介護サービスを併せて利用するための費用などもかかります。ただベッドなどはレンタルすることもできます。

施設でケアを受ける場合は、通常の入居費用の他に、食費などの諸費用、介護サービス費用や各種加算がかかります。施設の種類ごとにかかる費用は異なります。

まとめ

自分が本当に望む形で人生の終わりを迎えるためには、早いうちから終の住処や受けたい医療などについて考えておくことが欠かせません。

とくに、いざというときに延命治療を希望するのか、しないのであれば「どのようなケアをどこで受けたいのか」といった点は、家族だけで決断するのは大きな心の負担になります。家族の理解も必要な話題ですから、まずは元気なうちに自分の希望を考え、家族と話しあっておけるとよいでしょう。


(執筆編集:NTTファイナンス ライフノート編集部 情報は2021年2月4日時点のものです。)

この記事を監修した人
大津 秀一

早期緩和ケア大津秀一クリニック院長。岐阜大学医学部卒業。緩和ケア医。日本緩和医療学会 緩和医療専門医、総合内科専門医、がん治療認定医、日本老年医学会専門医、日本消化器病学会専門医。内科医、ホスピス医、在宅医を経て大学病院緩和ケアセンター長を務める。2018年に早期からの緩和ケアに特化したクリニックを設立、全国からの相談にあたっている。著書に『死ぬときに後悔すること25』(新潮社)、『傾聴力』(大和書房)などがある。

https://kanwa.tokyo/

https://www.youtube.com/c/kanwa

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