高齢者の病気のリスク|病気のサインと、予防のためにできること
終末期医療(ターミナルケア)とは?定義や費用、ケアの種類を解説
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この記事の内容
早期緩和ケア大津秀一クリニック院長。岐阜大学医学部卒業。緩和ケア医。日本緩和医療学会 緩和医療専門医、総合内科専門医、がん治療認定医、日本老年医学会専門医、日本消化器病学会専門医。内科医、ホスピス医、在宅医を経て大学病院緩和ケアセンター長を務める。2018年に早期からの緩和ケアに特化したクリニックを設立、全国からの相談にあたっている。著書に『死ぬときに後悔すること25』(新潮社)、『傾聴力』(大和書房)などがある。
この記事をおすすめする人 これから終末期に備えて準備をしようとしている方 この記事のポイント
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日本は、国際的に見ても病院での死亡率が高く、その割合は全体の約7割に上ります。そして、多くの人が「在宅で最期を迎えるのは難しい」と考えるのは、主に家族にかかる負担を心配してのことといわれているのです。
(参照:厚生労働省「令和3年度厚生統計要覧」2021年)
「いかに自分らしく、満足できる人生の最期を迎えるか」「家族の負担や経済面を考えて、理想の実現が可能か」は、自分自身のことだからこそ自分で考えておきたいもの。そのためには、終末期医療について知ることが不可欠です。
こちらの記事では、終末期医療の概要や費用から受ける場所の選択肢まで、くわしくご紹介します。
終末期医療とは
「終末期医療」とは、終末期(=患者さんの治療効果が期待できず近い将来に予測される死への対応等が必要となる時期)において、本人の意思を尊重して尊厳を守り「苦痛のない自然な死を迎えられるようにする」ためのケアのこと。「ターミナルケア」とも呼ばれます。
(参照:御前崎市総合保健福祉センター「終末期医療について」等)
患者さんやご家族の希望に応じて、人工呼吸器の使用や、チューブやカテーテルを使った栄養の注入など、延命を目的とした治療を差し控え、病気による痛みや不快感を取り除いて、穏やかな最期の生活を実現するためのケアをおこないます。
「終末期医療を選択するかどうか」また「いつから開始するか」の判断材料は、基本的には「本人の意思」です。しかし本人に意識がない場合や、たとえば認知症の方の場合など意識があっても判断力がないときは、家族に判断が委ねられます。
終末期医療を選択することは、すなわち延命のための措置をやめることを意味するため、非常に決断が難しいデリケートな問題です。また意思表示や確認ができなくなるときがいつ訪れるかは、予測ができません。
そのため、元気なうちから「自分にもしものことがあったときに、どこまでの範囲の終末期医療を選択するのか」「延命の措置を可能な限り続けてもらうのか」などを考えることが大切になります。また家族にも相談したり、思いに変化がないか繰り返し話しあったりすることも重要です。
確実に自分の意思を実現してもらうために、「リビングウィル」(元気なうちに自分の意思を表しておくこと)と呼ばれる意思表示をしておく人もいます。
終末期医療でおこなわれるケア
続いて、終末期医療でおこなわれるケアの内容を、「身体的ケア」「精神的ケア」「社会的ケア」の三つに分けてくわしくご紹介します。
1. 身体的ケア
痛みや不快感の緩和
病気による身体の痛みや不快感を取り除くため、鎮痛薬などの投薬がおこなわれます。
栄養の補給
自身で食事をとることができなくなったときに、栄養の補給をおこないます。ただし回復が期待できない場合に、チューブなどを用いて栄養をとったり点滴をしたりすることは、病気自体の改善が望めない場合は「延命措置」にあたります。そのため「栄養補給をおこなうか」「どのような方法をとるか」などは、本人や家族の意思を尊重して決められます。
日常生活上の補助
着替えや移動、入浴や排泄など、日常生活をストレスなくおくるためのサポートをおこないます。とくに身体を清潔に保つこと、整髪やお化粧などで身だしなみを整えることは、明るく穏やかな日々を過ごすにあたって、重要なケアのひとつです。
2. 精神的ケア
終末期を迎えた患者さんは、長く続いた闘病のストレスや死に対する恐怖や不安、また家族に対する申し訳なさなどから、気持ちが不安定になりやすいものです。そのため、穏やかな生活をおくれるような精神的ケアが求められます。
環境づくり
多くの時間を過ごしていた自宅などに近い環境をベッドの周りにつくり、リラックスできるように配慮をします。思い出の写真やお気に入りの品物などを身近なところに置いておく方もいます。
過ごし方の工夫
本人の不安な気持ちに寄り添ってじっくりと話を聞いたり、趣味など好きなことをして過ごす時間を作ったりします。また家族や友人と過ごす時間を設けることで、孤独や寂しさを感じさせないような工夫もなされます。
3. 社会的ケア
終末期医療を受けている人の気持ちの負担になりやすいのが、家族の負担のこと。入院や介護のための費用や手続きで、家族に負担や迷惑をかけてしまっているのではないか、と思いつめてしまうこともよくあります。
そのためソーシャルワーカーやケアマネジャーは、医療費軽減や支援制度にまつわる情報提供などのサポートをおこないます。また家族のストレスを軽減するために、悩みごとの相談など家族に対するケアもおこなう場合が多くなっています。
終末期医療がおこなわれる場所
終末期医療というと病院でケアを受けるイメージをもたれる方も多いかと思いますが、自宅や施設で受けることもできます。
ここからは、「在宅」「施設」「病院」それぞれの場所で受ける終末期医療の、メリット・デメリットをご紹介します。
在宅での終末期医療
医師や看護師の診察・ケアを受けたり介護サービスを利用したりしながら、自宅で最期の時間を過ごす方法です。
在宅ケアのメリット
暮らし慣れた環境で生活できるため、本人がリラックスして精神的ストレスも少なくなる場合が多い
家族といっしょに過ごす時間を増やすことができる
身近な環境にお互いがいるため、家族にとっても安心感がある
在宅ケアのデメリット
トイレや食事のサポートや床ずれの予防を家族が担う側面が大きいほか、症状や身体の状態によっては、医療的なケアまで家族が担わなければいけない場合がある
24時間体制でのケアが必要なため、家族の肉体的・精神的な負担が大きい
容態が急変した場合に、医療者の対応を受けるまでの時間のタイムラグがある
体調が悪化して医療者が介入する回数が増えると、費用の負担も増える
介護施設での終末期医療
看取り看護をおこなっている施設に入居し、看護師や介護スタッフによる24時間体制でのケアを受ける方法です。
施設でのケアのメリット
24時間体制でサポートしてもらえるため、家族の肉体的な負担が少ない
床ずれの予防や移動、食事、トイレなどのサポートもプロに任せる安心感がある
ほかの利用者とコミュニケーションが取れることが、本人にとって明るく過ごすための精神的ケアになる場合もある
施設でのケアのデメリット
緊急の場合などに、家族がすぐに駆けつけられるとは限らない不安がある
面会時間が決められていたりと自由度は低い
体制が充実している施設では、費用の負担が大きくなることもある
病院での終末期医療
病院やホスピスなどで、終末期医療のケアを受ける方法です。
病院でのケアのメリット
容態が急変しても医師や看護師がそばにいるほか、身体の状態を常に把握しておいてもらうことができる
24時間体制でサポートしてもらえるため、家族の肉体的な負担が少ない
病院にソーシャルワーカーがいれば、医療費や手続きなど家族の不安についても相談ができる
病院でのケアのデメリット
治療内容や期間によっては、費用が大きな負担になる
緊急の場合などに、家族がすぐに駆けつけられるとは限らない不安がある
面会時間が限られるなど自由度が低く、本人が孤独を感じやすい場合がある
病院の性質により最期まで療養できず、転院が必要になったり、入院ができなかったりすることもある
終末期医療に向けた準備
高齢になれば、突然体調を崩してしまうことがあるかもしれません。終末期に突入すると、自分の意思を表示することが難しくなるでしょう。「もしも」の時に備え望み通りの最期を迎えるために、元気なうちにやっておくべき準備を2つご紹介します。
1. 最期をどこで迎えたいか決める
終末期が近づくと、意識が低下したり、話したり書いたりするのが困難になることがあるので、最期を迎えたい場所は元気なうちに家族へ伝えましょう。
2021年に日本財団が発表した調査によると、「自宅で最期を迎えたい」と回答した方の割合が58.8%、「医療施設」の割合が33.9%、老人ホームなどの「介護施設」が4.1%でした。また、「人生の最期を迎える場所の選択で重視すること」について、親は「家族の負担にならないこと」という回答が95.1%、子は「家族等と十分な時間を過ごせること」という回答が85.7%となっています。
最期を迎える場所の判断基準は「居心地の良さ」や「家族への負担の軽減」などさまざまなので、最期の時に一番大事にしたいことについて一度考えてみてください。
2. 延命治療をおこなうか決める
延命治療とは、「処置を行わない場合、短時間で死亡することが必至の状態を回避し、生命の延長を図る処置・治療」のこと。延命措置をおこなうことで、人によっては年単位での延命があったり、状態が改善したりするなどのメリットがあります。
一方、治療を受ける本人の意思が表示されていない場合、家族によって治療の有無が決定されます。結果、望まない治療による本人の身体的負担や、家族の金銭的・精神的な負担が増加するかもしれません。延命治療に関する意志表示は「リビング・ウィル」と呼ばれる事前指示書でおこなうことが可能です。
準備を始めるべきタイミング
終末期の準備は、身体に何らかの異変があると自覚したときにおこなうことがおすすめです。高齢になると、病気のリスクが高くなるだけで無く、身体を動かしづらくなって思うように行動できなくなる可能性もあります。体調や身体機能に異変を感じるようになったら、すこしずつでいいので終末期に備えて必要な準備をおこなうようにしましょう。
終末期医療にかかる費用
70歳以上の高齢者の場合、医療費の自己負担割合は現役世代よりも軽くなります。
70歳から74歳までの人:2割
75歳以上の人:1割
※所得が現役並みの人はこの限りではありません。
※2022年10月1日から、75歳以上で年収200万円の人は2割負担に引き上げられます。
※(参照:厚生労働省「後期高齢者の窓口負担割合の変更等(令和3年法律改正について)」)
日本慢性期医療協会の定例記者会見資料(2019年)によると、終末期患者の入院医療費は、医療療養病床の場合で「一日あたり約2万8500円」とされています(※高額療養費制度があり自己負担には上限があります)。
加えて、治療内容によって費用が変動するほか、寝具代や差額のベッド代などの費用がかかります。
在宅でケアを受ける場合、訪問診療の費用や介護ベッドなど設備費用に加えて、介護サービスを併せて利用するための費用などもかかります。ただ介護ベッドなどはレンタルすることもできます。
施設でケアを受ける場合は、通常の入居費用の他に、食費などの諸費用、介護サービス費用や各種加算がかかります。施設の種類ごとにかかる費用は異なります。
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まとめ
自分が本当に望む形で人生の終わりを迎えるためには、早いうちから終の住処や受けたい医療などについて考えておくことが欠かせません。
とくに、いざというときに延命治療を希望するのか、しないのであれば「どのようなケアをどこで受けたいのか」といった点は、家族だけで決断するのは大きな心の負担になります。家族の理解も必要な話題ですから、まずは元気なうちに自分の希望を考え、家族と話しあっておけるとよいでしょう。
(執筆編集:NTTファイナンス 楽クラライフノート お金と終活の情報サイト編集部)
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