基礎知識

延命治療の費用はいくら?代表的な治療法の医療費を解説

この記事の内容

事前に考えておきたい『延命治療』とは?拒否する場合の医療も解説」の記事でも解説したように、リビング・ウィルと呼ばれる事前指示書を書いておくことによって、回復の見込みがない病気にかかったときに自分が希望する治療法を指定することができます。

では、リビング・ウィルで延命治療を希望した場合、その治療費はいくらになるのでしょうか?この記事では、延命治療にかかる費用について解説します。ぜひ、リビング・ウィルを作成する際の参考にしてみてください。

まず知っておくべき後期高齢者医療制度と高額療養費制度

病気やケガの治療のために病院へ通院する場合、健康保険の適用により少ない自己負担で治療が受けられます。自己負担率は年齢や所得の状況によっても異なり、たとえば6歳(義務教育就学後)から70歳未満の方は3割負担となります。

一方、70歳から74歳の方は2割負担、75歳以上は1割負担として定められています。これは「後期高齢者医療制度」によるものですが、課税所得が145万円以上の現役並み所得者の場合、年齢にかかわらず現役世代と同等の3割負担となります。ちなみに、課税所得145万円とは年収に換算すると383万円程度に相当します。

しかし、健康保険によって自己負担が少なくなるとはいっても、治療に数百万円単位の費用がかかるとなると、家計への負担が大きくなることも事実です。そこで、病気やケガの手術・入院などで治療費が高額になる場合、自己負担限度額をこえた部分について還付を受けられる「高額療養費制度」が存在します。

延命治療も高額療養費制度の対象に含まれており、たとえば医療費の総額が100万円かかった場合、1割負担の75歳の方であれば10万円を窓口で支払う必要がありますが、高額療養費制度の適用により4万2400円の還付を受けられます。

治療法別に見た具体的費用

ひと口に延命治療といってもさまざまな治療法があり、選択する治療法によって入院期間や治療にかかる費用も変わってきます。

今回は、延命治療のなかでも代表的な「人工呼吸」、「人工栄養」にかかる費用例を紹介しましょう。


高額療養費制度を適用した場合の

自己負担限度額(75歳以上)

人工呼吸
4万4000円/月
人工栄養
4万4000円/月

人工呼吸

肺や脳などの重度の障害で、自力での生命維持に必要な水準の呼吸が難しい場合などに用いられるのが人工呼吸です。強制的に酸素を取り込み、また呼吸を維持することによって心肺機能を維持できるもので、人工呼吸器を装着しているあいだは延命が可能となります。

日本医師会の調査によると、いわゆる終末期の治療費は1日あたり平均3万1800円となっています。人工呼吸器を装着した場合は、ほぼ自己負担限度額を超えます。ただし、高額療養費制度を適用した場合、課税所得が145万円未満の75歳以上の患者で1か月あたり5万7600円が自己負担限度額となっています。なお、過去12か月以内に3回以上、上限額に達した場合は、4回目から「多数回」該当となり、上限額が4万4400円に下がります。

人工栄養

人工栄養とは、鼻から管を挿入し胃まで栄養を届けたり、胃に穴を開け栄養を送り込んだりする”胃ろう”や、静脈へカテーテルを挿入し血液へ栄養を補給する方法などを指します。自力で栄養補給ができない、あるいは不十分な患者に対しておこなわれる治療の一つです。

人工呼吸は心肺機能の維持を目的におこなわれますが、人工栄養は嚥下機能の低下や昏睡状態に陥っている患者に対して、生命維持に必要な栄養を供給するためにおこないます。

なお、人工栄養に関しても、限度額を超えることが多いです。高額療養費制度を適用することで、入院費などを含め、1か月あたり5万7600円が自己負担限度額となります。(課税所得が145万円未満の75歳以上の患者の場合。過去12か月以内に3回以上、上限額に達した場合は、4回目から上限額は4万4400円)

その他

上記で紹介した金額は、あくまでも代表的な延命治療方法にかかる治療費のみです。このほかにも、入院中の食費、日用雑貨などにかかる費用もあるでしょう。さらに、入院が個室となる場合には差額ベッド代が全額自己負担となるため、入院期間に応じて高額の費用が請求される可能性もあります。

延命治療の医療費を捻出するには

延命治療と聞くと「入院が長引き、数十万円、数百万円といった高額な医療費が請求されるのではないか」といった懸念を抱く方も少なくありません。

しかし、ここまで紹介してきたとおり、後期高齢者の医療費は月額4万4400円(多数回該当の場合)が自己負担限度額となっているため、極端に医療費を心配する必要はないといえるでしょう。

どうしても医療費が気になる場合には民間の医療保険に加入する方法もありますが、当然のことながらシニアの保険料は高額になりがちなため、加入前に十分確認しておきましょう。

家族の負担が気になるならば、いち早くリビング・ウィルの記入を

今回紹介してきたように、後期高齢者医療制度や高額療養費制度などを適用することで、延命治療にかかる実質的な負担額は必ずしも多額ではないことがわかりました。

しかし、長期間にわたって家族に経済的な負担をかけてしまうのは申しわけないと感じる方もいるでしょう。こうした不安を取り除くには、延命治療を含む本人の意思をリビング・ウィル(事前指示書)へ記入しておくことが不可欠です。さまざまな病気にかかることを想定して、その場合の治療法あるいは治療しないとどうなるかを考えてみましょう。

そして単に指示書を書くだけではなく、そのために十分周囲の方たちと、いざという時にどうしたいかを話しあっておくべきです。実際には、指示書だけでカバーできない事態がしばしば起きるため、あなたの考えを周囲の方に理解してもらうことが大切なのです。いざという時に自分で意思を表示できないこともあるため、その点でも事前の話しあいは重要です。

また、日ごろから自分自身の健康に関心をもつことも大切です。深刻な病名であっても、早期発見ができれば延命治療が必要ないほど回復が見込める場合もあります。不調があったらそれを放置せずに医療機関を適宜受診し、適度な運動もおこないましょう。


(執筆編集:NTTファイナンス 楽クラライフノート お金と終活の情報サイト編集部 情報は2022年4月27日時点のものです。)

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この記事を監修した人
大津 秀一

早期緩和ケア大津秀一クリニック院長。岐阜大学医学部卒業。緩和ケア医。日本緩和医療学会 緩和医療専門医、総合内科専門医、がん治療認定医、日本老年医学会専門医、日本消化器病学会専門医。内科医、ホスピス医、在宅医を経て大学病院緩和ケアセンター長を務める。2018年に早期からの緩和ケアに特化したクリニックを設立、全国からの相談にあたっている。著書に『死ぬときに後悔すること25』(新潮社)、『傾聴力』(大和書房)などがある。

https://kanwa.tokyo/

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