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【基本知識編(基本のき)】高齢者施設の選び方

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「高齢者施設」とひと言で言っても、種類は多く、選択するのはかなり難しい作業となります。複雑過ぎるせいか、費用面でのみ検討する人が少なくありません。
しかし、お金のことだけを考えて選ぶと、入居後に「こんなはずではなかったのに……」と嘆くことになりがちです。

こちらの記事では、そんな後悔をしないように、施設を選ぶ際に確認したい点について解説します。

入居したい施設のイメージをつかむ

「自宅で生活できる間は自宅で。難しくなったら施設に入りたい」という声をよく聞きます。
夫婦2人暮らしの場合、どちらかの具合が悪くなると老々介護になるので、負担大。かといって、子どもがいても、彼らは彼ら自身の生活で精いっぱい……。親の立場からは、「迷惑をかけたくない」との気持ちが働き、“施設”が選択肢となることがあります。
一方、配偶者が亡くなりひとり暮らしとなったタイミングなどに、「いざというときに安心だから」と施設への入居を考えはじめる人もいます。

 しかし、高齢者施設の種類は多く、リサーチを始めた段階で「わけがわからない」と困惑してしまう可能性があります。

まず、自問自答してみましょう。

1.  なぜ施設を検討するのか

a 介護をしてもらいたいから
b 介護は必要ないが安心安全な暮らしを手に入れたいから

 恐らく、多くのケースでどちらかに分類されるでしょう。
a の「介護をしてもらいたいから」を選択した人は、どのような介護が必要かともう一歩深めて考えてみましょう。
もし、認知症の介護が必要なら、認知症介護を得意とする施設を選ぶ必要があります。
何らかの持病があるなら、その病への医療的ケアをおこなえる施設を選ぶべきでしょう。

2.  譲れない条件

施設に求めることが明確になったら、自分にとって譲れない条件は何かと考えてみましょう。
「作れるあいだは、自分で食事を作りたい」「毎日、入浴したい」など。なかには、「ペットの犬を連れて行きたい」という人もいるかもしれません。「看取りまでしてくれるところ」とこだわる人もます。
諸事情からこだわりを実現できないこともありますが、可能な限り自分自身の気持ちを大切にしたいものです。

3.  施設の立地

次に考えることは施設の立地です。
子どもと同居、近居、もしくは子どもがいない人は、現在の住まいの近くで探すことが多いと思います。一方、子どもが遠方に暮らしているケースでは、現在の住まいの近くか、子の住まいの近くかで悩むかもしれません。子が複数いて、例えば自分が愛知県在住、長男は首都圏、長女は九州に暮らすような場合、首都圏の施設か九州の施設かで迷うこともあります。
入居するのは子どもではなく自分なので、まず自分はどうしたいかとよく考えたうえで、子どもとも相談しましょう。住み慣れた土地を離れると、方言や食事の味付けが異なるので、「体験入居」を利用し、馴染めそうかどうかお試し期間を設けることをおすすめします。

4.  出せる費用

施設に求めること、そして立地をイメージできたら、費用面についても計算が不可欠です。自分自身が100歳(あるいは105歳)まで生きると仮定し、支払い可能なところを選びたいものです。
施設の種類はいくつかの分類方法がありますが、料金面で分けると、公的な施設と民間施設となります。公的な施設は民間施設に比べると料金は安め。月々の収入(年金など)が少なく、貯えが多くない場合は、費用が軽減される制度も用意されています。

[介護に必要なお金について、くわしく知りたい方はこちら]

 このように体系立てて考えることにより、すこしずつ施設の候補をイメージできるようになります。

できれば3~5か所見学!

施設に入居後の生活をシミュレーションするために見学しましょう。できれば、短い期間に3~5か所見学すると、施設とはどういうところかおぼろげながらも見えてきます。

まず、電話でアポを取ってください。
見学のお勧めの時間帯はランチタイムです。入居者は食堂に集まります。その様子を見ると、どのくらいの介護度の人が多いか、男女比、食事介助の様子などを見ることができます。また、入居者同士、入居者とスタッフの雰囲気、親密度も見えてきます。良い、悪いではなく、複数の施設を見ることによって違いがわかり、「自分はこういう雰囲気のところで暮らしたい」と、自分なりの指標ができてくるはずです。

見学に行くと、費用面の説明もしてくれます。最初はとっつきにくくても、複数の施設で説明を受けるうちに、利用料の仕組みについても理解が深まるでしょう。
見学に行ったら、「重要事項説明書」をもらうこともお忘れなく。費用の詳細、スタッフの職種や人数、介護度が重くなった場合の対応など、パンフレットだけでは読み取れない情報が記載されています。
さらに、「体験入居」をできる施設なら、ぜひトライを。

終の棲家になる施設、ならない施設

施設入居を検討する場合、候補の施設が、「特定施設」の指定を受けているかどうか確認しましょう。
正式には「特定施設入居者生活介護」といい、介護保険サービスのひとつです。都道府県の知事が指定。簡単にいえば、24時間体制で介護をおこなう施設のことです。指定を受けている施設だけが、「介護付き」、「ケア付き」と名乗ることができます。有料老人ホームのほか、サービス付き高齢者向け住宅、ケアハウスの一部にも「特定施設」の指定を受けているところがあります。

 特定施設での介護は、ケアマネジャーが作成するケアプランにもとづき、入浴、排せつ、食事の介助などが切れ目なく提供されます。
基本的なサービスは定額制となっており、料金体系は明瞭です。必ずしも「特定施設」がよいというわけではありませんが、介護の必要度合いが高い場合は、安心感が勝るかもしれません。

 一方、特定施設を取得していない施設は「住宅型」と呼ばれます。介護サービスを利用するときは、自宅にいるときとおなじように外部のケアマネジャーにケアプランを作成してもらい、必要なサービスを利用することになります。
介護の必要度合いが低いなら利用したいサービスだけを使えばいいので合理的です。けれども、介護度が上がると、サービスを追加しなければならず、費用もアップします。

また、「特定施設」は、寝たきりになるなど介護度が重度化しても対応してもらえるケースが多く、「終の棲家」になりやすい施設だと言えます。それに対し「住宅型」は、要介護度や認知症が進むと、「退去」を言いわたされることが少なくありません。
「特定施設」でも、認知症などで他の入居者に何らかの迷惑をかけたり、医療依存度が上がったりすると、「退去」となることもあります。
「退去」となる要件については、先に紹介した「重要事項説明書」に書かれています。
介護保険で入居する特別養護老人ホーム、老人保健施設、介護医療院なども、「特定施設」と同様、24時間体制で介護がおこなわれます。

施設の介護体制の違い

  

介護型
(介護保険施設・特定施設)

住宅型

契約

入居する施設と契約

別途サービス提供事業者と契約

介護
スタッフ

原則、施設職員による24時間体制

施設外の職員により、契約した時間のみ

料金

要介護度ごとの定額制

契約した内容により変わる

ケアプラン

施設のケアマネジャーが担当

施設外のケアマネジャーが担当

終の棲家

なり得るケースが多い

なり得ないケースが多い

メリット

費用が一定額でわかりやすく、24時間切れ目のなく介護を受けられる

必要なサービスのみ選択できる。介護度が低いときは、合理的

*筆者作成

看取りについての意思表示

高齢者施設に入居契約をするときには、最期を迎えたい場所や救急搬送時の意向なども聞かれます。
「縁起でもない」と不快になるのではなく、自分自身がどう生きるかにつながることです。施設入居時に限らず、在宅生活を継続する場合も、延命治療の希望有無などについて、考えておくことは大切だと思います。

 施設側にも看取りについての方針を確認しましょう。看取りをおこなう際には医師との連携も不可欠です。看取り介護をしっかりおこなう施設は、普段から医療との連携が充実している傾向があります。医療的ケアを望む場合は、ひとつの目安となるでしょう。

まとめ

施設の種類は多様で、それぞれの施設ごとにおこなうケアは違います。施設に望むことや、こだわりたいことをよく考え、そのうえで、必ず複数の施設を見学しましょう。重要事項説明書をもらうこともお忘れなく。施設とは相性もあります。可能であれば、体験入居でお試しを。
また、介護の必要度合いが高くなると退去しなければならない施設もあります。終の棲家として選びたいなら、介護体制や医療との連携について必ず確認してください。


(情報は2020年12月24日時点のものです。)

この記事を執筆した人
太田 差惠子

介護・暮らしジャーナリスト、NPO法人パオッコ理事長、AFP(日本ファイナンシャル・プランナーズ協会認定)

京都市生まれ。1993年頃より老親介護の現場を取材。取材活動より得た豊富な事例をもとに「遠距離介護」「仕事と介護の両立」「介護とお金」等の視点でさまざまなメディアを通して情報を発信する。企業、組合、行政での講演実績も多数。AFP(ファイナンシャルプランナー)の資格も持つ。一方、1996年親世代と離れて暮らす子世代の情報交換の場として「離れて暮らす親のケアを考える会パオッコ」を立ち上げ、2005年法人化した。現理事長。

<主な著書>「親が倒れた!親の入院・介護ですぐやること・考えること・お金のこと」「高齢者施設お金・選び方・入居の流れがわかる本」(共に翔泳社)、「遠距離介護で自滅しない選択」「親の介護で自滅しない選択」(共に日本経済新聞出版社)「親の介護には親のお金を使おう!」(集英社)ほか

http://www.ota-saeko.com/

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