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内縁関係の相続はどうなる?原則的には相続の権利なし

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この記事の内容

この記事を監修した人
谷川 聖治

弁護士法人ALG&Associates 執行役員弁護士。弁護士法人ALG&Associatesは、東京・宇都宮・埼玉・千葉・横浜・名古屋・大阪・神戸・姫路・福岡に支部をもち、約90名の弁護士が所属している法律事務所であり、相続、離婚、刑事、交通事故、企業法務・労務、医療過誤など幅広く専門性を追求。総合病院型の法律事務所を目指しており、当職はその中でも相続分野に注力している。同法人で執行役員として、相続分野を中心に新人教育等を担っている。

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この記事をおすすめする人

内縁関係や事実婚のパートナーがいる方


この記事のポイント

  • 原則的にはパートナーに相続する権利はない
  • 内縁関係で生まれた子供には相続する権利がある
  • 生前贈与や遺言書に記載することで内縁関係でも相続できる


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日本における家族関係の歴史を紐解くと、時代や地域によって同居する夫婦だけでなく、妻が夫の家に通う、夫が妻の家に通うなどのように、多様な関係構築がおこなわれてきました。

明治時代以降は妻が夫の家に入ることが原則とされたものの、現代では再びさまざまな家族関係、夫婦関係の形が見られるようになりました。

とくに代表的といえるのが「内縁関係」や「事実婚」ではないでしょうか。しかし、法律上の結婚ではないとなると、内縁関係にあるいずれかひとりが亡くなったとき、もうひとりに対してどう相続がおこなわれるのでしょうか。この記事では、内縁関係では相続が可能なのか、財産を引き継ぐための具体的な方法について解説します。

内縁関係とは

そもそも内縁関係とはどういった関係なのか、婚姻関係と何がちがうのかくわしくわからないという方も多いでしょう。

内縁関係を一言で表すとすれば、婚姻届は提出していないものの、事実上は夫婦と変わりない関係といえます。実際に、内縁関係を「婚姻に準ずる関係」(最高裁1958〈昭和33〉年4月11日)とする判例もあります。

内縁関係の要件を具体的に定義するとすれば、両者のあいだで婚姻しているという意思があることや、共同生活をしていることが挙げられます。

ただし、一概に「何年以上同居していれば内縁関係が認められる」という基準はなく、共同生活の実態などから総合的に判断されることになります。

内縁関係で相手の財産を相続できるか

内縁が「婚姻に準ずる関係」なのであれば、夫婦のように相手の財産を相続できるのではないか、と考える方もいるのではないでしょうか。

実際はどうなっているのか、くわしく見ていきましょう。

原則的に相続する権利はない

結論からいえば、内縁関係の場合、原則的に相手(内縁の夫または妻)の財産を相続する権利は認められていません。

民法では、配偶者が相続人となることが定められています。しかし、「配偶者」は婚姻届けを提出した法律上の婚姻を行った夫婦のみを指すものとされており、内縁関係の場合は法律上、配偶者にはあたらないとされていることから、法定相続人になることができません。

ただし、これはあくまでも原則の話であり、生前に対策をしておけば、内縁関係にあっても相手の財産を相続する、または相手に財産を相続してもらう方法はあります。この具体的な方法は次の章で解説します。

内縁関係で生まれた子どもには相続する権利がある

内縁の夫または妻が財産を相続する権利は原則としてありませんが、内縁関係のあいだに生まれた子どもがいる場合、「子どものことを認知している」という前提のもと、相続の権利は発生します。

たとえば、婚姻関係にある妻とは事実上別居しており、ほかの女性と内縁関係にあった場合、内縁の妻とのあいだに婚外子ができ、それを父親が認知すれば子どもに相続の権利が発生します。

しかし、内縁の妻とのあいだに子どもを認知せずに亡くなってしまった場合、子どもが相続するには、死後認知の裁判手続きをおこなう必要があります。

内縁関係で相続する・してもらう方法

婚姻関係に比べると、内縁関係の相続は法律の壁が高く、問題が複雑化しがちです。そのようななかでも、スムーズに財産を相続するにはどういった方法があるのでしょうか。

生前贈与で財産を引き継ぐ

もっとも簡単で確実な方法としては、生前のうちから財産を共有しておき、生前贈与として引き継ぐ方法です。

内縁関係にあっても贈与はお互いの同意があれば成立し、年間110万円までは贈与税の申告も必要ありません。贈与契約書として残しておけば、万が一のトラブルも未然に防げるでしょう。

ただ、贈与で財産を引き継げるのは現実的には現金や有価証券などとなります。相続の対象となることが多い不動産は、年間110万円の贈与税の控除を利用するならば、長年にわたって分割した贈与と登記をおこなわなければならず、費用も労力も現実的とはいえません。こうしたケースでは、以後で挙げる方法を用いることになります。

遺言書でパートナーに財産を引き継いでもらうことを書く

法定相続人でなくても、遺言書に記載しておくことで内縁の夫や妻に財産を引き継ぐことが可能です。

内縁関係者の場合は「遺贈」という形になりますが、基礎控除の額は相続と同様です。そのため、相続したい財産の額が大きい場合には遺言書にのこしておく方法がベストといえるでしょう。

相続人がいなければ特別縁故者として財産を受け取れる場合もある

内縁関係にあった夫や妻の場合、亡くなった方に子どもも両親も兄弟姉妹もおらず相続人がいなければ、家庭裁判所に特別縁故者の申立をすることで、それが認められれば財産を受け取れる可能性があります。

特別縁故者として認められる要件としては、生計をともにしてきた、または亡くなった方の日常的な世話をしてきた、などが挙げられます。

ただし、特別縁故者として認められた場合においても、配偶者控除が受けられないほか、相続税が2割加算されるなどのデメリットがあります。

話し合った記録として終活アプリなどへ書き込みをする

内縁関係に限らず、家族や配偶者のあいだで相続の話をしていても、後になって内容を忘れてしまうこともあるでしょう。とくに財産の種類や金額が大きいと、どこに何の財産があるのか曖昧になってしまうケースも考えられます。

このような事態を防ぐためにも、話し合った結果をメモとして残しておくことを心がけましょう。終活アプリの「楽クラライフノート」では、預金や株式、不動産といった財産の種類および金額を一元的に管理できます。自分自身に万が一のことがあった場合を想定し、スマホアプリからだれにどの情報を共有しておくかを設定することも可能です。

シニアの内縁関係解消は注意が必要

ここまで解説してきたように、内縁関係のパートナーは原則として相続人にはなれず、法律上は財産を相続する権利はありません。しかし、生前に何らかの理由によって内縁関係を解消する場合は、財産分与の対象となります。

判例でも「婚姻に準ずる関係」と認められているとおり、婚姻関係と同様に、内縁関係であっても内縁期間中に構築した財産は共有のものであるためです。

基本的にはパートナー同士が協議のうえ財産分与の金額や割合を決めることになりますが、話しあいで決着しない場合には家庭裁判所において調停または審判の手続きを踏む必要があります。

当然のことながら、収入のないシニアの場合、内縁関係を解消しても財産分与がなく経済的に困窮する可能性もあるため注意が必要です。

まとめ

相続トラブルを回避するには遺言書があったほうがよいといわれますが、それは内縁関係にもおなじことがいえそうです。

生前贈与でも問題はありませんが、贈与の場合は、多額の贈与税が課せられる危険があり、相手方の生活を維持するために財産を十分に移転するには、現実的に制限があります。しかし、遺言書を記しておけば、遺贈を受けるパートナーを含め相続人のだれに何が相続されるかが明確になります。

もちろん、誤解やトラブルを生じさせないためにも、なぜそうした遺言書をのこすのか明確に意図を説明しておく必要はあるでしょう。また、遺言書としての効力をもたせるためにも、弁護士などの専門家からの助言があったほうがよいといえます。

なお、海外の事例を見ると、事実婚が少なくないといわれるフランスでは「パクス」と呼ばれるパートナーや内縁関係が明文法で規定されています。しかし、賃借権などの一部をのぞきパートナーは相続に関する多くの権利をもちません。このように、海外でも法律的な婚姻関係と内縁関係にはある程度のちがいがあるようです。


(執筆編集:NTTファイナンス 楽クラライフノート お金と終活の情報サイト編集部)

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