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宗旨・宗派のちがいを知る|おなじ仏教でもお葬式の作法は異なります

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この記事を監修した人
一般社団法人 葬送儀礼マナー普及協会 理事 岩田 昌幸

葬送儀礼マナー普及協会

葬送儀礼(臨終から葬儀、お墓、先祖供養等)が多様化している中で、「なぜそのようにふるまうのか」といった本来の意味を理解し、そうした考え方や習慣を身につけられるよう「葬送儀礼マナー検定」を実施しています。メディア監修多数、葬儀・お墓関連のセミナー等も実施しています。

https://funeral-manner.org/

https://youtu.be/GPW1SH_5rkA

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生前からお葬式の形式について検討している方


この記事のポイント

  • 宗旨・宗派によって焼香の本数や香典の書き方が異なる
  • お葬式の際に読まれるお経の内容にも宗旨・宗派による違いがある
  • まずは全ての宗旨・宗派で共通するマナーを理解しよう


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日本におけるお葬式の多くは仏式でおこなわれます。しかし、日本の仏教といってもさまざまな宗派が存在します。

たとえば、比較的規模の大きい宗派に浄土真宗がありますが、浄土真宗の不祝儀袋は「御霊前」ではなく「御香典」「御仏前」といった表書きを使用します。これは、浄土真宗の考え方は亡くなった人はすぐに極楽浄土に往生するため、四十九日間霊となってさまよっているという概念がないためです。

宗旨・宗派によって、教義はもとより焼香や線香、数珠の作法、戒名(法名・法号)などが異なります。すべての宗派の作法を一般の人が把握するのは困難です。まずは自身の菩提寺などの宗旨・宗派を確認し、作法を把握しておきましょう。お葬式に参列する際は、喪家(お葬式をおこなう家)の宗旨・宗派の作法にあわせなければいけないわけではなく、自身の宗旨・宗派に則った作法でもかまいませんが、弔いの場であることを認識し、周囲に調和した形で参列するように配慮しましょう。

この記事では、代表的な伝統仏教の宗旨・宗派について解説します。

宗旨・宗派とは

宗旨・宗派とは、いまから約2500年前に釈迦が開いた仏教の教えによって次々と分かれていったグループのことを指します。

そもそも釈迦は紀元前の人物であるため、仏教は長い歴史のなかでさまざまな変化を見せてきました。また、地域を超えた広がりという側面でも変化があったことも事実です。

たとえば、日本の主要な仏教宗派は世界的には「大乗仏教」に分類されます。この大乗仏教は、仏教が生まれた地のチベット仏教や東南アジアの仏教とは異なる特色が見られます。

これと同様に、日本国内の宗旨・宗派も経典や仏教そのものへのさまざまな解釈から数多く生まれてきたのです。

宗旨・宗派の分類

代表的な宗派については後ほど解説しますが、漠然と「◯◯宗はどういう教えか」といわれても難しく感じ、覚えられない方も多いでしょう。そこで、まずは大まかに日本の宗派を5つに分類して解説します。

奈良仏教系

奈良仏教には法相宗、律宗、華厳宗、三輪宗、成実宗、倶舎宗の6つの宗派が存在し、これらをあわせて南都六宗とよばれていました。しかし、現在ある宗派は法相宗、律宗、華厳宗の3宗派のみとなっています。

それぞれの宗派の僧侶が宗派の枠を超えて教えや経典についての研究を行っていたため学問仏教という位置づけでした。当時は一般庶民向けの普及はされず、護国仏教としての役割を担っていました。

密教系

密教系の宗派としては、空海が9世紀に開いた真言密教(東密)を指すことが多いのですが、最澄が開いた天台宗も天台密教(台密)といわれます。言語表現が難しい教えのため、仏像や絵画、曼荼羅などで表現され、秘密仏教ともよばれます。

浄土系

浄土系は、南無阿弥陀仏の念仏を唱えて極楽浄土に往生することが救いの道とする教義です。浄土系には、浄土宗や浄土真宗、融通念仏宗、時宗などがあり、いずれも12世紀から13世紀にかけて開かれました。浄土宗は法然(源空)、浄土真宗は親鸞、融通念仏宗は良忍、時宗は一遍(智真)が開祖とされています。

禅系

禅系はその名のとおり、座禅の修行をメインとした宗派で、経典など文字から学ぶ教えよりもお釈迦様が悟りを開いたときの座禅修行を自ら実践することで悟りへ至るとする教義です。主な宗派としては臨済宗や曹洞宗、黄檗宗(おうばくしゅう)の3つがあります。臨済宗は12世紀に栄西が、曹洞宗は13世紀に道元が、黄檗宗は17世紀に隠元が開いています。

法華系

法華系は法華経を重視する教義です。天台宗でも法華経を重視していますが、法華経を宗旨の中核に組み込んだのが13世紀に日蓮が開いた日蓮宗です。別名法華宗ともよばれ、「南無妙法蓮華経」を繰り返し唱える宗旨・宗派としても有名です。

代表的な宗旨・宗派の特徴:天台宗

日本において代表的な宗派ごとに、どのような教えをとっているのか、さらにはお葬式におけるマナーもあわせて紹介しましょう。まずは天台宗の教えとお葬式のマナーは以下のとおりです。

概要

天台宗の総本山である比叡山延暦寺は、仏教の総合大学と言われ法然、栄西、親鸞、道元、日蓮といった鎌倉新仏教の宗祖の多くが比叡山で学んでいます。天台宗には本尊に関する定めはないとされていますが、阿弥陀如来、釈迦如来または薬師如来を祀っている寺院が多いようです。また、天台宗には「朝題目夕念仏」といわれるように、午前中は法華経を唱え、午後は阿弥陀経を唱えるのが一般的です。

お葬式でのマナー

天台宗の焼香の回数は1~3回ととくに決まりはありません。線香は1〜3本程度を立てます。なお、天台宗の本式数珠は楕円形の平玉を使うのが特徴です。

代表的な宗旨・宗派の特徴:真言宗

もう一つの密教である真言宗の特徴、お葬式でのマナーは以下のとおりです。

概要

真言宗におけるお葬式とは、「密厳浄土」(大日如来の浄土)へ送り届けるという意味があります。真言宗は、高野山金剛峯寺を本山とする「高野山真言宗」のほか、長谷寺(奈良県)を本山とする豊山派、智積院(京都府)を本山とする智山派などがあります。真言宗の真言とは、密教において「真理を表す秘密の言葉」のことで、お経の前後に呪文のような言葉を唱えます。

お葬式でのマナー

真言宗における焼香は「身・口・意」の三密修行に精進すること、また「戒香・定香・解脱香」を意味する3回が一般的です。また、香典については「御霊前」や「御香典」と書かれた香典袋を使用するのが一般的です。

真言宗における本式数珠は2本の房がついた振分数珠とよばれるものになります。

代表的な宗派の特徴:浄土宗

浄土系にあたる代表的な宗派である浄土宗の概要やお葬式におけるマナーは以下のとおりです。

概要

浄土宗は修行をすることで故人が成仏できるという考えではなく、念仏をとなえることで極楽往生が実現できると説いています。そのため、浄土宗におけるお葬式では、参列者が「南無阿弥陀仏」の念仏を唱える「念仏一会」とよばれる儀式が行われます。

浄土宗の本式数珠は2つの輪を組み合わせた「日課念珠」になります。片方の輪は27珠、もう片方の輪が40珠になっていて、珠を繰って念仏の回数を数えられる仕組みになっています。

お葬式でのマナー

浄土宗の焼香の回数は1〜3回で特に決まりはありません。線香は1本~3本立てます。また、香典袋には「御霊前」、または「御香典」と記載します。

代表的な宗旨・宗派の特徴:浄土真宗

浄土系のもう一つの代表的宗派である浄土真宗の概要、およびお葬式におけるマナーは以下のとおりです。

概要

浄土宗と浄土真宗は、「南無阿弥陀仏」の念仏をとなえることは共通しています。ただし、浄土宗は繰り返し念仏を唱えることで成仏できるという教えに対し、浄土真宗は回数にこだわらず一心に念仏をとなえればだれでも極楽浄土に往生できる教えが決定的に異なる点です。

お葬式でのマナー

浄土真宗には本願寺派と真宗大谷派など「真宗十派」ほかいくつかの宗派が存在します。焼香作法は、本願寺派の場合は1回、大谷派は2回で、抹香は額にいただかず、つまんだらそのまま香炉にくべます。線香は2つに折って寝かせて焚きます。

また、浄土真宗で使用する数珠は念珠といい、僧侶が法要等で使用する本式数珠もありますが、平常時は特別な作法やルールもなく、どのような形の数珠でも使用できます。一般には片手念珠(略式数珠)が用いられます。

浄土真宗で注意しておきたいのは、香典袋への表書きです。浄土真宗では「御霊前」ではなく「御仏前」がよいでしょう。香を供えるという意味の「御香典」「御香料」も可能です。

代表的な宗旨・宗派の特徴:臨済宗

続いて、禅宗の解説となります。一つ目は、臨済宗です。「だるまさん」として知られる達磨大師や、「一休さん」で知られる一休宗純が臨済宗の禅僧として有名です。

概要

禅宗のため座禅を重視する臨済宗ですが、そのなかでも「公案禅(こうあんぜん。修行する人に出される問題)」と「看話禅(かんわぜん、かんなぜん。公案を目標に悟りを目指す)」による、いわゆる禅問答が特徴です。臨済宗には、総本山はなく14の大本山がそれぞれの宗派を形成しています。

鎌倉幕府、室町幕府の庇護を受け、禅画、能楽、茶道などの禅文化の隆盛を生みました。

お葬式でのマナー

臨済宗のお葬式で、お線香をあげるときの本数は1本です。焼香は14の派によって異なり、1回の場合もあれば2回の場合もあります。額にいただく必要はありません。

香典の表書きにはとくに守るべきマナーはなく、四十九日までは「御霊前」や「御香典」、それ以降は「御仏前」「御香典」などが作法の例として挙げられます。

代表的な宗旨・宗派の特徴:曹洞宗

禅宗では臨済宗とは別にもう一つの宗派、曹洞宗を解説します。

概要

禅問答を基調とする臨済宗とは対照的に、曹洞宗は雑念を捨てひたすら座禅を組む「只管打坐(しかんたざ)」「黙照禅(もくしょうぜん)」が重視されます。また、単に座禅を組むだけでなく、たとえば靴を脱ぐときにきちんと揃える、歯磨きでは1本1本、丁寧に磨くというように、日常生活の一つの場面すら禅の修行という捉え方をします。

永平寺(福井県。写真)と総持寺(神奈川県)が大本山で分派はありません。

お葬式でのマナー

曹洞宗の焼香は2回ですが、1回目は額にいただいて念じる、2回目は額にいただかずそのまま香炉にくべます。一連の動作のなかでも1回目と2回目で異なる動きとなりますので、覚えておくとよいでしょう。

線香は1本立てます。

香典の表書きは、お通夜やお葬式では「御霊前」「御香典」、四十九日を過ぎたら「御仏前」「御香典」などの袋を用意するのが一般的です。

代表的な宗旨・宗派の特徴:日蓮宗

法華系にあたる日蓮宗の概要やお葬式におけるマナーは以下のとおりです。

概要

日蓮宗では「南無妙法蓮華経」の題目をとなえれば、久遠の釈迦如来が来世ではなく現世で救いを導いてくれるという教義です。御本尊は、仏教の世界観を「南無妙法蓮華経」という文字の周囲に多数の神仏の名を記した「十界曼荼羅」のほか、三宝尊や日蓮聖人像が安置されます。

お葬式でのマナー

日蓮宗の焼香は1回、線香は1本立てるのが一般的です。また、香典袋には「御霊前」または「御香典」と記載します。

まとめ

今回紹介した仏教の宗旨・宗派は、信徒数が100万人をこえる代表的なものです。たとえば、浄土真宗一つとっても本願寺派と大谷派とでは、焼香の回数、本尊である阿弥陀如来の仕様、仏壇・仏具が違います。

実際には、これらの宗派すべての考え方やマナーを把握している一般の人はいません。焼香や線香の作法、香典袋への書き方など、まずは自分の宗旨・宗派の作法を把握したうえで、相手の宗旨・宗派を尊重するふるまいに気を配るとよいでしょう。宗派を問わず共通しているマナーも多いため、それを最低限押さえておくことが重要です。そのうえで、宗派のちがいによる些細なマナー違反があったとしても、厳しく咎められることはないでしょう。

一方で、お葬式や法要に参列する際には、お経や式の進行などから宗派のちがいがどこにあるのかを観察してみるのも勉強になるものです。


(執筆編集:NTTファイナンス 楽クラライフノート お金と終活の情報サイト編集部)

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