コラム

【2023年10月】消費税法改正!インボイス制度のポイントと消費税の基本

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この記事を監修した人
上仲 孝明

みずほインベスターズ証券(現:みずほ証券)、KPMG税理士法人等を経て、上仲パートナーズ税理士事務所を開業。個人事業主、営利法人、公益法人等の税務顧問等を行っている。公益法人向けの情報サイト「公益法人会計アカデミー https://upc.jp 」も運営中。

常にお客様の立場に立って考え、長期的な視点で寄り添うパートナーを目指して活動している。 

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この記事のポイント

  • 2023年10月に改正消費税法が施行され、インボイス制度が導入される
  • インボイス発行事業者となることで、仕入税額控除などが適用される
  • インボイス発行事業者となるためには、税務署に登録しなければならない


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2023年10月、新しい消費税法が施行されます。

家計にとって負担を感じてしまう消費税ですが、今回の法改正は税率が変わるわけではなく、「インボイス制度」のスタートが大きな目玉となっています。

そもそも消費税はなぜ存在するのか、基本をおさらいするとともに、今回の法改正のポイントであるインボイス制度とは何かを見ていきましょう。

消費税とは

消費税とは文字どおり、消費者が商品やサービスの対価を支払う「消費」という行為に対して課税される税のことです。

ただし、消費者が買い物やサービスの対価を支払うたびに消費税を申告するのは膨大な手間がかかり、現実的ではありません。そこで、小売事業者などが消費者から消費税分を受け取り、それを納付しています。

このように、本来納税すべき人と実質的に納税する人が異なる税は「間接税」とよばれます。

消費税は1989年4月から導入され、当時の税率は3%でしたが、その後1997年に5%、2014年に8%へと増額され、2019年には現在の10%へと引き上げられてきた歴史があります。

ちなみに、消費税が8%から10%へと引き上げられたときには、引き上げ分は全世代型社会保障に充てられるとされていました。

消費税法とは

消費税について定めた法律を消費税法とよびます。具体的には、消費税額の算出方法やルール、だれが税金を負担し、だれが納付するのか、中間申告や確定申告といった納付方法などが規定されています。

2023年の消費税法改正

消費税法は消費税率が変更されるタイミングなどで改正されています。

2023年4月にも消費税法は改正されましたが、今回は税率の変更はなされておらず、主にインボイス制度が大きな変更点となりました。

インボイス制度は一般の消費者にとって大きな影響がない一方で、これまで消費税の免税事業者であった中小事業者や個人事業主、フリーランスなどが大きな影響を受けるとされており、大きな注目を集めています。

インボイス制度とは?

今回の消費税法改正の目玉ともいえるインボイス制度とは、具体的にどういった内容なのでしょうか。

そもそも、小規模事業者や個人事業主、フリーランスとして仕事をしている人のなかで、年間の売上が1000万円以下の事業者は免税事業者とよばれ、これまでは消費税の納付が免除されていました。

しかし、消費税の税率が段階的に上昇しているなかで、免税事業者が消費税分を受け取りながら免税されているのは公平性が保てないという議論が生じたことから、インボイス制度の導入にいたりました。

なお、「インボイス」とは、この後で解説する一定の要件を満たした請求書や納品書のことを指し、適格請求書ともよばれます。

適格請求書発行事業者=インボイス発行事業者とは?

事業者がインボイス制度を利用(インボイスを発行)するためには、管轄の税務署にてインボイス発行事業者として登録をしなければなりません。すなわち、インボイス発行事業者として登録せず免税事業者のままだと、インボイスを発行することはできません。

また、インボイス発行事業者は、インボイスの写しの保存や、インボイスに発行事業者の名前と登録番号を記載することも求められます。

区分記載請求書保存方式とは

2019年の消費税法改正にともない、飲食料品や新聞といった品目の消費税が8%となる軽減税率が適用されました。そこで、複数税率に対応するために、請求書に「軽減税率対象商品であること」と「税率ごとの合計額」を記載する「区分記載請求書保存方式」が導入され、現在も運用されています。

しかし、区分記載請求書保存方式はあくまでもインボイス制度が始まるまでの経過措置であることから、インボイス制度のスタートによって、これまで区分記載請求書保存方式を採用していた事業者もインボイス制度を利用するか否かを決定する必要が出てきます。

区分記載請求書保存方式と適格請求書保存方式(インボイス制度)のちがいは以下のとおりです。


区分記載請求書保存方式
適格請求書保存方式(インボイス制度)
登録制度
なし
あり
免税事業者からの仕入税額控除
対象
対象外(経過措置あり)
請求書等の交付義務
なし
あり
免税事業者等の交付
可能
適格請求書発行事業者以外は不可

インボイス発行事業者にならないことも可能

重要な前提として覚えておきたいのは、インボイス発行事業者として登録するかどうかの判断は任意であり、強制ではないということです。

インボイス発行事業者の登録をしなければ、引き続き免税事業者として従来と同様に消費税の納付は不要となります。

ただし、商品やサービスを売る相手が課税事業者であった場合、免税事業者から仕入れた分は仕入税額控除の対象とはなりません。すなわち、課税事業者が免税事業者に代わって消費税を納付しなければならないことを意味します。

その結果、免税事業者の場合、課税事業者との取引継続が困難になるケースが想定されているのです。

インボイス発行事業者となることで生じるメリットと負担

これまで売上1000万円以下であった免税事業者が、インボイス発行事業者となることで、どのようなメリットがあるのでしょうか。反対に、負担が増えるとされているポイントについても紹介しましょう。

一定の様式に則ったインボイスを発行しなければならない

従来の区分記載請求書方式と比較した場合、インボイスでは請求書に記載すべき内容が増え、一定の様式に沿ったものを発行しなければなりません。

以下の表にあるように、「適格請求書発行事業者の登録番号」および「税率ごとの消費税額および適用税率」が追加され、事務負担が増えることになります。


区分記載請求書保存方式
適格請求書保存方式(インボイス制度)
請求書記載項目

発行者の氏名・名称

取引年月日

取引内容

取引金額

交付を受ける者の氏名または名称

軽減税率の対象品目である旨

税率ごとに合計した対価の額(税込)


発行者の氏名・名称

取引年月日

取引内容

取引金額

交付を受ける者の氏名または名称

軽減税率の対象品目である旨

税率ごとに合計した対価の額(税込)

適格請求書発行事業者の登録番号

税率ごとの消費税額および適用税率

インボイスの写しを保存する必要がある

適格請求書発行事業者は、交付したインボイスの写しまたは電子データを一定期間保存しておかなければなりません。

保存期間は「交付した日又は提供した日の属する課税期間の末日の翌日から2月を経過した日から7年間」と定められており、こちらも事務負担の増大につながります。

仕入税額控除が適用できる

仕入税額控除とは、自社の売上に対する消費税分から、仕入れの際にかかった消費税分を差し引いて納税できる仕組みのことです。

インボイス発行事業者として登録し、商品やサービスを買う相手が課税事業者であった場合、仕入税額控除が適用され消費税の納付金額を抑えられる可能性があります。

負担軽減策が利用できる

インボイス制度は小規模事業者にとって負担が大きいことから、政府ではさまざまな負担軽減策を用意しています。

たとえば、会計ソフトを導入することで「IT導入補助金」が適用されるほか、売上税額の2割に軽減する「2割特例」も2026年9月末まで実施されます。

また、仕入れ事業者に対しては、1万円未満の仕入れについて2029年9月末まで適格請求書の保存が不要となるほか、免税事業者からの仕入れに対して2026年9月末までは仕入税額の80%、2026年10月から2029年9月末までは仕入税額の50%が控除される経過措置も実施します。

インボイス発行事業者に登録しない場合のメリットと負担

インボイス発行事業者として登録しない選択をした場合、どのようなメリットがあるのか、懸念される内容も紹介しましょう。

発行事業者になる場合の負担がない

インボイス発行事業者として登録しないということは、これまでどおり免税事業者として事業を継続できます。

消費税の納付が不要なほか、上記で紹介したようなインボイスの写しの保存や請求書様式の変更なども不要なため、事務負担が増える心配もないでしょう。

取引先から敬遠され、事業継続が困難になる可能性がある

懸念される内容としては、取引先からの受注が減り、事業に影響を及ぼす可能性が考えられます。

課税事業者である取引先からしてみれば、免税事業者と取引を継続するということは仕入税額控除が受けられず、自社の利益が圧迫される可能性が出てきます。その結果、インボイス発行事業者として登録しているほかの事業者に乗り換えられるケースも出てくるでしょう。

あなたは発行事業者として登録すべき?

小規模事業者やフリーランスのなかには、インボイス発行事業者として登録すべきか迷っている方も少なくありません。

もし、商品やサービスを売る相手や取引先が課税事業者のほうが多い場合には、今後の取引に影響を及ぼす可能性があるため、インボイス発行事業者として登録したほうがよいと考えられます。

一方、飲食店や美容室の経営など、一般の消費者を相手にする事業者の場合には、上記で挙げたようなデメリットは少ないと考えられることから、現在のまま免税事業者として継続していくのも一つの方法といえます。

インボイス発行事業者になるための登録の方法

インボイス制度のスタートは2023年10月1日から予定されており、インボイス発行事業者となるためには9月30日までに申請を行わなければなりません。当初の締め切りは2023年3月末まででしたが、個人事業主やフリーランスからの登録者数が伸び悩んだこともあり、半年間延長されています。

インボイス発行事業者になるためには、国税庁のサイトから「適格請求書発行事業者の登録申請書」をダウンロードのうえ必要事項を記入し、管轄のインボイス登録センターへ郵送またはe-Taxで申請を行います。

消費税はどう納付する?

これまで免税事業者であった方は、インボイス発行事業者として登録後、消費税をどのように納付するのか分からないという方も多いはずです。

消費税は所得税と同様、確定申告を行ったうえで納付する必要があります。納付方法は税務署・銀行窓口での納付やコンビニ納付、クレジットカード納付、振替納税、e-Taxの5種類から選択できます。

ちなみに、課税売上高が5000万円以下の事業者の場合、経理の負担軽減を目的として「簡易課税方式」による計算も選択できます。6つの事業区分ごとに40%から90%の「みなし仕入率」が定められています。

7月中には登録すべきかの判断を

申請の期限は9月末まで延長されましたが、国税庁の発表によると登録まで1〜2か月程度かかり、インボイス発行事業者となる場合はなるべく早めに、できれば7月中に申請をしたほうがよいといえます。

発行事業者となると、手間や税負担がありますが、当面は負担軽減策も存在するため、それも加味して検討するのがよいでしょう。

なお、今回の消費税法改正では一般消費者にとって大きく変わる点はありません。


(執筆編集:NTTファイナンス 楽クラライフノート お金と終活の情報サイト編集部)

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