もう退院?自宅に戻って生活できる?そのとき慌てないために
実家の父親が迷子に!?コロナ禍で会いにも行けない
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この記事の内容
介護・暮らしジャーナリスト、NPO法人パオッコ理事長、AFP(日本ファイナンシャル・プランナーズ協会認定)
京都市生まれ。1993年頃より老親介護の現場を取材。取材活動より得た豊富な事例をもとに「遠距離介護」「仕事と介護の両立」「介護とお金」等の視点でさまざまなメディアを通して情報を発信する。企業、組合、行政での講演実績も多数。AFP(ファイナンシャルプランナー)の資格も持つ。一方、1996年親世代と離れて暮らす子世代の情報交換の場として「離れて暮らす親のケアを考える会パオッコ」を立ち上げ、2005年法人化した。現理事長。
<主な著書>「親が倒れた!親の入院・介護ですぐやること・考えること・お金のこと」「高齢者施設お金・選び方・入居の流れがわかる本」(共に翔泳社)、「遠距離介護で自滅しない選択」「親の介護で自滅しない選択」(共に日本経済新聞出版社)「親の介護には親のお金を使おう!」(集英社)ほか
この記事をおすすめする人 親の実家から離れたところで生活している方 この記事のポイント
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コロナの影響により、「盆も正月も帰省できていない」という声が多数聞こえてきます。心身の弱った親が1人暮らし、2人暮らしというケースでは、さぞ心配なことでしょう。「こんなに親と会えないなら」と、仕事を辞めて故郷に戻った人の声もちらほら……。
今回紹介する佐藤さん(50代/男性/仮名/東京都)も、実家では両親(父80代,母70代)が2人暮らし。2020年秋口に、母親からSOSの電話が入り、一度帰省したものの、サポートする術がみつからず頭を抱えていました。
「お父さんが帰ってこない」
佐藤さんのスマホに母親から電話がかかってきたのは、2020年の9月でした。父親はその年のはじめに、かかりつけの内科医から軽度の認知症かもしれないと、と言われていました。そのあと、コロナが拡がったこともあり、専門医を受診することなく様子見の状態でした。ところが、この日、父親は昼過ぎに散歩に出たまま戻ってこなかったのです。夕方7時をまわっていました。佐藤さんは「警察に電話を」と母親に指示。2時間ほどで警察が保護してくれて、父親は無事自宅に戻ってきました。
翌日、土曜日だったので、佐藤さんは新幹線で実家へ。父親は何事もなかったように落ち着いており、佐藤さんが病院に連れて行こうとしても拒否。「医者に行く必要などない。病院なんかに行って、コロナに感染したらどうするんだ」と頑なでした。それどころか、「なぜ、こんな時期に東京から帰省したんだ」と怒り出す始末。
結局、佐藤さんは何もできないまま、1泊で東京に戻りました。「嫌な予感がなかったと言えばウソになりますが、一時的なことだと思いたかった。仕事もあるし、ずっと実家に居るわけにはいきませんから」
母親が共倒れしてしまう
佐藤さんの嫌な予感は当たりました。母親から「お父さんが、居なくなった」と度々、電話がかかってくるようになったのです。母親は父親から目を離せなくなり、疲れ果てているようす。「このままでは、母親が倒れてしまいます。でも、帰省しようと思っても、母親から『帰ってくるな』と言われました。コロナの感染者が増えるなか、ご近所の手前、東京の息子が帰ってくることは避けたいようで……」
帰省できない状態に、佐藤さんは焦りが募りました。佐藤さんは妻と長男との3人家族です。長男は就職しており、妻も正社員で働いています。当面の家計は何とかなると考え、仕事を辞めて単身実家に戻る検討を始めました。筆者が佐藤さんと出会ったのはそんなときでした。
認知症による行方不明は年1万7000人超
筆者は佐藤さんに対し、具体的に、「何が心配か」と質問しました。
佐藤さんの心配は……
- 離れて暮らしているから受診させることも、手助けすることも、何もできない。
- 出歩く父親を制止させるのは、高齢の母親には荷が重い。母親の共倒れが心配。
- もし、行方不明になったら取り返しがつかない。
確かに、佐藤さんの不安はもっともです。認知症を原因とする行方不明者数は年々増加。2019年は1万7479人(警察庁)でした。約7割が当日に発見され、大半は1週間以内に保護されていますが、なかには命を落とすケースも……。そんなことになったら、取り返しがつきません。しかし、佐藤さんが実家に戻れば、本当にすべて解決なのでしょうか。
会えなくてもできることはある
佐藤さんの父親は、その時点で介護保険を利用していませんでした。筆者は、早急に、介護保険の申請をすることを勧めました。本来、介護保険の申請は、本人や家族がおこなうのですが、「代行申請」という方法があります。地域には高齢者の総合相談窓口の役割を担う「地域包括支援センター」があり、依頼すれば、無料で代わりに手続きをしてくれます。
早速、佐藤さんは「地域包括支援センター」に電話し、父親のことを相談。職員が実家に行って状況を確認し、介護保険の申請を代行してくれました。職員は父親に対し、受診することも勧めてくれました。「迷子になるのは、認知症に限ったことではない。どんな病気が隠れているか診てもらったほうがいい」という言葉に、渋々ながら父親は了承し、母親が専門医に連れていきました(子どもの言葉には耳を傾けなくても、第三者の言葉には従う親は結構います)。
幸い、実家のある地域は、コロナの感染者数は少なく、介護サービスは通常通りおこなわれています。父親は「要支援2」と認定され、日帰りで介護を受けるデイサービスに通い始めました。
さらに、自治体の「小型GPS端末機の貸出サービス」も利用。外出時に戻れなくなるおそれのある高齢者を対象としたもので、位置を特定して早期発見し、事故などを未然に防ぐためのものです。借りたのは靴に取り付けられるタイプの発信機です。父親が帰ってこないとき、母親はタケシさんに電話してきます。タケシさんがスマホで父親の位置情報を確認。「いまどきは、公的サービスが充実しているのですね。驚きました。地域包括の職員さんは親切で、もし、どうしても父親が見つからなくなったら『連絡をください』と言ってくださり肩の荷がおりました」と佐藤さん。
さらに、地域の民生委員が週に1回、「困っていることはないですか」と実家をのぞいてくれるようになったそうです。
母親のこともケア
地域包括支援センターの職員は、母親が感染を恐れ、自宅で過ごすことが多くなっていることも気遣ってくれました。介護によるストレスを発散することも必要です。そこで、父親がデイサービスに行っているあいだに、介護予防の体操教室に参加することを提案してくれました。さらに、母親の負担が軽減するよう、週に2回は、昼食の個別宅配のサービスも。手渡しなので、もし両親に異変があったら、佐藤さんに連絡がくることになっています。
「デイサービスに通うようになったせいか、父親が出て行ってしまう頻度は減ったようです。それに、GPSや地域包括の職員さんが頼りになるので、精神的な負担はかなり軽減しました」と佐藤さん。コロナ禍だからこそ、地元の人々のありがたみが余計に身にしみると言います。今後、認知症が進んだら、施設のことも考えるつもりだとか。専門家にアドバイスをもらいながら、「できることをおこなっていくつもり」と佐藤さんは話します。
まとめ
コロナ禍であっても、親のためにできることは色々あります。自分が帰省できないなら、地元の専門家を頼り、親にはサービスを利用してもらいましょう。サービス内容、対象は自治体ごとに異なるので、必ず親の暮らす自治体に問い合わせを。両親が2人暮らしで、一方がもう一方を介護している場合は、介護をおこなう親のことも気遣ってください。感染予防で外出を控え、自宅に2人きりでこもっていると、ストレス過多の状況に陥っている可能性があります。親の地元の専門家とタッグを組み介護体制を築くことは、コロナ禍はもちろん、収束後も役立つはずです。
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