コラム

80代の1人暮らし男性が、ヘルパーに“掃除”を頼んだら断られてしまった理由

この記事の内容

支援や介護が必要になると、介護保険でさまざまなサービスを利用することができます。もっとも頼りになるサービスの一つが訪問介護(ホームヘルプサービス)だといえるでしょう。ホームヘルパーが自宅を訪問し、生活をサポートしてくれるものです。

高倉信也さん(80代/仮名/千葉県)は、妻を亡くして以来、自宅でひとり暮らしです。歩行が不自由で歩行器を利用。介護保険で、週に2回、ホームヘルパーに来てもらっています。

「ヘルパーが来てくれて助かるんだが、何でもやってくれるわけじゃない。このあいだ掃除を頼んだら、『できない』とい言われたんだよ」と、高倉さんは少々不満そうに話し始めました。

長男が使う部屋の掃除や布団干しはNG

高倉さんの長男は、結婚し、関西地方で暮らしています。久しぶりに家族を連れて帰省すると連絡があったときのことでした。

高倉さんは、長男らを迎えるためにホームヘルパーにあれこれと注文。けれども、ことごとく「できない」と却下されてしまったのだとか。

 高倉さんが、長男家族が来る前にヘルパーに頼んだことは3つです。

  • 落ち葉と雑草で汚いから、庭を掃除して欲しい。

  • 長男家族が使う和室の掃除をして欲しい。

  • 長男家族が使う布団を干して欲しい。

 

「ヘルパーがうちにいる時間は決まってるから『いつもの仕事はしなくていい』といったんだが、それでも、『できない』と断られたんだ」と高倉さん。

依頼できる仕事内容は決まっている

介護保険のホームヘルプサービスには、入浴、トイレ、食事の介助などをおこなう「身体介護」と、掃除、洗濯、食事の用意などをおこなう「生活援助」があります。「生活援助」に関しては、子どもと同居している場合は対象外となるケースが多いですが、高倉さんは1人暮らしなので利用可。

そして、高倉さんは「身体介護」と「生活援助」を週に1回ずつ利用しています。

実は、ホームヘルパーがおこなうケアの内容は、ケアマネジャーが作成するケアプランで決められています。ケアプランにないことは、ホームヘルパーはおこなうことはできないのです。

それに、「ケアプランに入れて欲しい」とケアマネジャーに頼んでも、なんでもかんでもおこなってもらえるわけではありません。原則、下記3種はNGです。

×本人の生活に直接必要性がない援助。

×本人以外の人にもかかわる援助。

×専門知識を必要とする医療行為。

高倉さんがホームヘルパーから断られた作業内容は、そもそもケアプランにないことなので、ヘルパーはおこないたくても、おこなえません。それに、ケアマネジャーに「ケアプランに入れて欲しい」と頼んだところで、どれも本人の生活に直接必要とはいえないため却下となるでしょう。長男家族が使う部屋の掃除や布団干しは「本人以外」の援助ですし、庭掃除は生活に直接必要性はないと判断されます。

ホームヘルパーは「お手伝いさん」ではないことを理解しましょう。納得したうえで利用しなければ、「頼んでいるのに、やってくれない」と不満が募ることになります。

また、できること・できないことの判断が難しくて迷うときには、ケアマネジャーとよく相談してください。たとえば、通常の爪切りは仕事の範疇ですが、巻爪など変形した爪だと、切ってもらうことはできません。

 

介護保険のホームヘルプサービスでNGの

主な仕事

×草むしり

×家具、家電の移動 模様替え

×大掃除

×家族のための掃除や調理

×ペットの世話

×本人の口をあけさせての服薬介助

×巻爪など変形している場合の爪切り

×金銭管理

               など

高齢の夫婦暮らしでも本人のケアのみ対象

気を付けたいのは、高齢の夫婦が2人で暮らしている場合です。

以前、こんな夫婦に会ったことがあります。妻が介護認定を受けており、ホームヘルプサービスを利用。「生活援助」により、トイレと浴室の掃除をしてもらっていました。夫も支援が必要だったのですが、妻のヘルパーが来てくれるので、「僕はサービスを利用する必要はない」といっていました。

ところが、突然、妻が病気で入院。入院すると、介護保険の利用はできなくなり、ホームヘルパーの訪問も休止に。

夫は、妻が入院、ホームヘルパーも来なくなり慌てました。「こんなことなら、僕も、日ごろからサービスを利用しておけばよかった」と後悔したのです(その後、夫も要介護認定を受けてサービスを利用するようになりました)。

介護保険以外のサービス利用も選択肢

介護保険では利用できなくても、日々の暮らしには必要なこともあります。庭掃除にしても、放置していると空き家のようで用心が悪いですし、近所から苦情が入ることもあるでしょう。

犬を飼っていて、散歩に行けなくなることもあります。

介護保険で対応してもらえないことでも、全額自費なら、サービスを利用できます。とはいえ、全額自費だと、負担が大きいですね。地域の有償ボランティアサービスなどでサポートしてもらえることもあります。地域包括支援センターのスタッフやケアマネジャーは、そのあたりの情報も把握しているので相談してみましょう。

まとめ

生活に不自由が生じたら、ホームヘルプサービスを上手に活用したいものです。ただし、ヘルパーさんは「お手伝いさん」ではないので、「できること」「できないこと」があります。「できないこと」で困ることがあれば、ケアマネジャーや地域包括支援センターに相談しましょう。介護保険以外のサービスで、課題を解決する方法を考えてくれるはずです。


(情報は2021年9月30日時点のものです。)

この記事を監修した人
太田 差惠子

介護・暮らしジャーナリスト、NPO法人パオッコ理事長、AFP(日本ファイナンシャル・プランナーズ協会認定)

京都市生まれ。1993年頃より老親介護の現場を取材。取材活動より得た豊富な事例をもとに「遠距離介護」「仕事と介護の両立」「介護とお金」等の視点でさまざまなメディアを通して情報を発信する。企業、組合、行政での講演実績も多数。AFP(ファイナンシャルプランナー)の資格も持つ。一方、1996年親世代と離れて暮らす子世代の情報交換の場として「離れて暮らす親のケアを考える会パオッコ」を立ち上げ、2005年法人化した。現理事長。

<主な著書>「親が倒れた!親の入院・介護ですぐやること・考えること・お金のこと」「高齢者施設お金・選び方・入居の流れがわかる本」(共に翔泳社)、「遠距離介護で自滅しない選択」「親の介護で自滅しない選択」(共に日本経済新聞出版社)「親の介護には親のお金を使おう!」(集英社)ほか

http://www.ota-saeko.com/

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