コラム

親が倒れる前に知っておきたい「介護保険」のことと「子の役割」

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この記事の内容

この記事を監修した人
太田 差惠子

介護・暮らしジャーナリスト、NPO法人パオッコ理事長、AFP(日本ファイナンシャル・プランナーズ協会認定)

京都市生まれ。1993年頃より老親介護の現場を取材。取材活動より得た豊富な事例をもとに「遠距離介護」「仕事と介護の両立」「介護とお金」等の視点でさまざまなメディアを通して情報を発信する。企業、組合、行政での講演実績も多数。AFP(ファイナンシャルプランナー)の資格も持つ。一方、1996年親世代と離れて暮らす子世代の情報交換の場として「離れて暮らす親のケアを考える会パオッコ」を立ち上げ、2005年法人化した。現理事長。

<主な著書>「親が倒れた!親の入院・介護ですぐやること・考えること・お金のこと」「高齢者施設お金・選び方・入居の流れがわかる本」(共に翔泳社)、「遠距離介護で自滅しない選択」「親の介護で自滅しない選択」(共に日本経済新聞出版社)「親の介護には親のお金を使おう!」(集英社)ほか

http://www.ota-saeko.com/

突然、親が倒れると、子としてはどうすればよいかわからず、アタフタとなりがちです。

ひと昔前までは、家族だけで介護をおこなうことも多かったのですが、現在は、介護保険制度があります。介護保険は社会全体で介護をしようとの理念のもと、2000年に創設されました。上手に活用すれば家族の負担はかなり軽減します。

しかし、うまく使えば役立ちますが、じっとしていては利用できないまま日が流れていきます。

実家に戻って介護をスタート

山口あやかさん(50代/仮名)の父親(80代)は埼玉県内の実家でひとり人暮らしをしていました。東京都内で暮らしていたあやかさんは、父親の心身が弱ってきたため実家に戻って同居しました。「私はシングルです。父はたったひとりの家族なので、介護は私の役割かなと思ったのです」とあやかさん。

実家に戻ったことで、それまで職場まで30分ほどの距離だったのに、片道2時間弱かかるようになりました。「往復4時間かかるので、忙しいときは早まったかな、と思うこともあります。でも、一緒に暮らしているとようすもよくわかるし、幸い、週の内半分はリモートワークできるので、まあ、なんとか」と話します。 

父親は要介護認定の調査日に逃亡

あやかさんの父親は介護保険のサービスを利用していません。

介護保険のサービスを利用するためには、「支援や介護が必要」と認定される必要があるのです。認定を受けるためにはまず利用したいと申請し、要介護認定の訪問調査を受ける必要があります。

「父も要介護認定をしてもらえるように申請しました。けれども、認定調査の日に、“逃亡”してしまったのです」とあやかさん。

認定調査員は自宅まで来てくれて、1時間程度の聞き取り調査がおこなわれます。けれども、本人がサービス利用に前向きではない場合、あやかさんの父親のように、その時間に家から出て行ってしまうとか、なかには、「今日は都合が悪くなりました」と電話で断ってしまう親もいます。

また、認定調査を受けても、問われることに対して、本人が「ひとりでできます」「問題ないです」と元気に振る舞うことも多いです。その結果、実態よりも軽い認定結果が出てくることもあります。すると、必要なサービスを利用できないケースも生じます。

主治医から勧めてもらえば効果的

認定調査の日に逃亡したり、実態以上に元気に振る舞ったりするシニアがいるのはなぜでしょう。

親の性格にもよりますが、「他人の世話になるのは申しわけない」という控えめな気持ちや、「自分のことは自分でできる」というプライドなどが影響していることが多いように思います。  

だからといって、サービスの利用を控えると、すべて家族の肩にかかってきます。

親が利用を渋る場合は、「どういう風に勧めると、利用してくれるだろう」と考えてみましょう。たとえば、子の言葉に従わない親も、医師の言葉なら聞き入れることがあります。そこで、主治医からすすめてもらったところ、「うまくいった!」という声をしばしば聞きます。

不明点は地域包括支援センターに相談を

認定調査を受けると、1か月ほどで認定結果が出ます。要支援1、2もしくは要介護1~5と認定されるとサービスを利用できます。ホームヘルパーが自宅を訪問して介護をしてくれる訪問介護サービスや、日帰りで施設に通って介護を受けるデイサービス、住まいを安全にする住宅改修費の支給サービスなどがあります。

介護保険のことでわからないことがあれば、地域包括支援センターに問い合わせましょう。住んでいる地域ごとに担当のセンターが決まっており、さまざまな悩みや疑問に対し無料で相談にのってくれます。所在がわからない場合は、親の暮らす自治体の役所に聞いてください。

社会保障は厳しい方向に進む

介護保険を利用する際は、地域包括支援センターの職員やケアマネジャーという介護のプロがサポートしてくれます。

そして、介護を抱え込まないことが重要です。抱え込むと、負担が集中し、自身の生活に支障が生じます。離職に至ったり、健康を害したりすることも珍しくありません。

いま子世代の人も、10年、20年と経てばシニアの仲間入りをして介護が必要になることもあり得ます。

実は、介護保険は3年ごとに改正がおこなわれています。サービスを利用する際の負担割合も、もともとは全員が1割でしたが、現在は所得に応じ1割、2割、3割とちがいがあります。たとえば単身世帯の場合、年金収入などが年間280万円以上の人は2割、340万円以上の人は3割。今後の改正で、2割負担の範囲を広げることが議論されています。

少子高齢化の影響を受け、将来的に介護保険だけでなく、社会保障全体が厳しい方向に進むでしょう。現在の子世代の方が老いるころには、いまよりも厳しい状況に。だからこそ、親の介護で利用できる制度はとりこぼさないようしっかり活用したいものです。

子の役割は自分の人生を精一杯生きること

子世代は自分自身のライフプランも考えたうえで、親の介護に対し、過度な負担は避け、“できる範囲”でのかかわりを心掛けたいものです。

子の役割は、親のために介護保険制度などのサービスを上手に使うこと。そして、自分の人生を精一杯生きること。親も自身の介護で子が疲弊することを望んではいないはずです。

あやかさんも、再度、父親のために介護保険の申請をしました。「今度は、父が逃亡しないよう認定調査の日が決まれば休暇を取って、付き添うつもりです」と話します。

まとめ

介護の必要なシニアを社会全体でささえることを目的に、2000年に介護保険制度は創設されました。うまく活用すれば家族の負担はかなり軽減します。しかし、高齢の親世代には、利用することに対し前向きではない人も少なくありません。が、だからといって利用を控えていると、家族に負担が集中するので注意が必要です。

一方、介護保険は3年ごとに改正が行われており、負担割合がアップしたり、給付がカットされたりと利用しづらい方向に。少子高齢化の影響で、いま子世代の方がシニアの仲間入りをするころには、より厳しい制度になっているかもしれません。自分自身の将来のためにも、親の介護で疲弊しないように気を付けましょう。子の役割は、介護全般を自らの手でおこなうことではなく、サービスを上手に使うこと。そして、自分の人生を大切にすること。親も、子が自身の介護で疲れ果てる姿を見たくはないはずです。

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