コラム

「救急車は呼ぶな」本人の言葉に従った結果、マヒと言語障害の後遺症が……

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ひとりで居るときに、転倒してケガをしたり、急に具合が悪くなったりしたらどうしますか。自宅で過ごしているときに、配偶者が急にしゃがみこんで「なんだか、からだが変だ」と言ったらどう対応しますか。

日中であれば、かかりつけの医師に電話をしてアドバイスをもらうこともできますが、深夜だと「朝まで様子をみよう」と考えがちです。大平みよこさん(60代/女性/仮名/千葉県)も、「夫がめまいに襲われた際、救急車を呼べなかった」と肩を落とします。

風呂から出てきた夫が倒れ込んだ

大平さん夫妻は閑静な住宅街で2人暮らしです。ある日、夜9時を過ぎたころ、風呂場から出てきた夫(70代)がめまいに襲われてベッドに倒れ込みました。みよこさんは「救急車を呼ぶわ」と言ったのですが、夫は「すこし休んだら楽になってきた。だいじょうぶだ」と言うのでようすを見ることに。

ところが翌朝、夫はまったくからだを動かすことができなくなっていたのです。救急車を呼び搬送したところ、脳梗塞だと判明しました。倒れてから時間が経過しており、重篤化。治療、リハビリをおこないましたが、半身マヒと言葉がうまく出ない後遺症が残りました。

「夫が大丈夫と言っても、あのときすぐに救急車を呼べばよかった。離れて暮らす長男からも、『せめて、僕に知らせてくれていたら』と言われました。後悔しています」とみよこさんは話します。

「脳卒中」は時間との勝負

シニアにとって、もっとも避けたいことの一つは寝たきりになることではないでしょうか。子どもにとってもおなじだと思います。

寝たきりの原因第一位は「脳卒中」です。脳の血管が詰まる「脳梗塞」、破れる「脳出血」や「くも膜下出血」があります。若い世代が発症することもありますが、年齢を重ねるほど発症率は高まり、重篤化する人も増えます。とはいえ、医療が進歩しており、早期に発見して治療をおこなえば、後遺症を最小限におさえることができる場合もあります。

脳卒中は時間との戦いなのです。

お笑いコンビ、爆笑問題の田中裕二さんが今年1月、午前2時ごろ、自宅で頭痛を訴え、救急搬送されたという報道がありました。脳梗塞とくも膜下出血との診断だったとか。迅速な対応と治療で、わずか1か月でテレビに復帰されています。記事には、「夫人が飛び起きて119番した」と書かれていました。

突然以下のような症状が起これば、躊躇せずに救急車を呼びましょう。

・片方の手足や顔半分にマヒ、しびれが起こる(手足のみ、顔のみの場合もあります)。
・ロレツが回らない、言葉が出ない、他人の言うことが理解できない。
・力はあるのに、立てない、歩けない、フラフラする。
・片方の目が見えない、ものが2つに見える、視野の半分が欠ける。
・経験したことのない激しい頭痛がする。
(参照:日本脳卒中協会

さまざまな症状がありますが、共通している特徴は、突然生じること。症状の始まりを、「何時何分から」というように特定できることが多いそうです。

「救急相談窓口」の所在を調べておく

救急車をタクシー代わりに使用する人がいる、という話を聞くことがあります。もちろん、そういうことは避けなければいけませんが、どちらかと言えば、救急車を呼ぶことに積極的な人より躊躇する人の方が多いのではないでしょうか。なかには、サイレンを鳴らして救急車がくることに「ご近所の方に迷惑だから」とか、「大袈裟にするのは体裁が悪い」という人もいます。実際、「音をならさないで来てください」と依頼する人が少なくないようです。しかし、緊急車両は緊急時にサイレンを鳴らして走行することが法で定められています。

すべての都道府県に設置されているわけではありませんが、救急車を呼ぶかどうか迷ったときの相談窓口として、「救急相談窓口」があります。たとえば東京都の場合、「#7119」と電話すれば通じます(大阪府や奈良県、埼玉県、福岡県、宮城県、新潟県などでも実施)。医師、看護師、トレーニングを受けた相談員が電話口で症状などを聞き取り、「緊急性のある症状か」「すぐに病院を受診する必要性があるか」を判断します。

対応する「救急相談窓口」はなくても、各都道府県の「医療情報ネット」を見ると、夜間や休日にあいている地域の病院などの情報を得ることができます。「厚生労働省/医療情報ネット」と検索してみてください。各都道府県のネットをリンクした厚生労働省のページがみつかるはずです。

具合が悪くなってからだと、調べるゆとりはありません。元気なうちに、相談できる窓口の所在有無と連絡先を調べておきたいものです。

迷ったら別居の家族に相談を

適当な窓口がない場合には、何かあったら、別居の子どもなどに連絡しましょう。みよこさんも長男に連絡していたら、違った判断になったかもしれません。その場に居合わせない人の方が、ものごとを冷静に決断できる場合もあります。

折しも梅雨空のなか、熱中症も心配な季節。実は、熱中症と脳卒中の症状は似ているそうです。めまいや立ちくらみ、手足のしびれなどの初期症状が共通します。熱中症だと勘違いし、搬送せずにいると重篤な後遺症を残したり、最悪命を落としたりすることにもなりかねません。とくに今夏はマスクをしています。厚生労働省も、「高温や多湿といった環境下でのマスク着用は、熱中症のリスクが高くなる」と警鐘を鳴らしています。屋外で人と十分な距離が確保できる場合には、マスクをはずすように求めています。

いずれにしろ、なるべく救急搬送という事態を招かないよう体調管理を怠らず、“健康”を過信しないことが大切です。

まとめ

具合が悪くなったとき、救急車を呼ぶかどうか迷うことがあります。自分たちで判断できないときは、かかりつけの医師や、救急相談窓口、別居の家族に相談しましょう。

救急車がサイレンを鳴らしてやってくることに抵抗感をもつ人もいますが、法で定められているので仕方ありません。それならと、タクシーで病院に行く人もいます。けれども、救急車で到着するのに比べて診察の優先順位は下がります。

また、脳卒中を熱中症と間違えてようすを見る、と判断することがあります(熱中症も侮ってはいけません。毎年、多くの人が命を落としています)。

何にせよ、食事、運動、睡眠、喫煙、飲酒などの生活習慣を見直しましょう。“救急搬送”云々の前に、健康意識を高めることが重要です。


(情報は2021年6月30日時点のものです。)

この記事を執筆した人
太田 差惠子

介護・暮らしジャーナリスト、NPO法人パオッコ理事長、AFP(日本ファイナンシャル・プランナーズ協会認定)

京都市生まれ。1993年頃より老親介護の現場を取材。取材活動より得た豊富な事例をもとに「遠距離介護」「仕事と介護の両立」「介護とお金」等の視点でさまざまなメディアを通して情報を発信する。企業、組合、行政での講演実績も多数。AFP(ファイナンシャルプランナー)の資格も持つ。一方、1996年親世代と離れて暮らす子世代の情報交換の場として「離れて暮らす親のケアを考える会パオッコ」を立ち上げ、2005年法人化した。現理事長。

<主な著書>「親が倒れた!親の入院・介護ですぐやること・考えること・お金のこと」「高齢者施設お金・選び方・入居の流れがわかる本」(共に翔泳社)、「遠距離介護で自滅しない選択」「親の介護で自滅しない選択」(共に日本経済新聞出版社)「親の介護には親のお金を使おう!」(集英社)ほか

http://www.ota-saeko.com/

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