コラム

【徹底解説】成年後見人とは?制度の仕組みやメリット・デメリット

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この記事の内容

この記事を監修した人
馬場龍行
弁護士法人えそら代表弁護士。鹿児島県出身。 2010年弁護士登録後、 個人の法律問題を多く取り扱う弁護士法人に入所。
2020年12月、 えそらごとを現実にすることを諦めないという理念の下、 弁護士法人えそらを設立。
中小企業法務を中心として、相続、離婚、 交通事故などの個人の法律問題も幅広く取り扱う。

この記事をおすすめする人

成年後見人のメリットやデメリットを知りたい方


この記事のポイント

  • 被後見人に判断能力がなくても、後見人による資産の管理が可能
  • 後見人を通していない契約を取り消すことができる
  • 申し立ての費用や後見人への報酬がかかる


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歳を重ねるにつれて多くの人が不安を感じるのが「もし認知症にかかったら」という問題です。もし、自分自身や親、きょうだいが認知症となったら、資産の売買をするときに正常な判断ができなくなったり、悪徳商法などで騙されてしまったり、といった懸念が生まれます。

そんな不安を軽減するための公的な制度として「成年後見制度」があります。これは、成年被後見人(判断能力を失ってしまった人)の契約などを後見人と呼ばれる人が代理するものです。本記事では、成年後見制度および成年後見人についてくわしく解説します。

成年後見制度とは?

成年後見制度とは、認知症や精神疾患などにより判断能力が不十分な人のために、財産を適切に管理したり法律行為をサポートしたりするなどして、被後見人を守る制度のことです。本人をはじめとする申立人の申し立てにより、成年被後見人となるか否かを家庭裁判所が審判し、後見開始が相当と判断されれば後見人が選任されます。

ちなみに、成年後見制度には「法定後見制度」と「任意後見制度」の2種類が存在しますが、今回は法定後見制度に絞って紹介します。

法定後見制度には3つの種類がある

法定後見制度には「後見」「保佐」「補助」の3つの種類が存在し、後見人(または保佐人、補助人)がおこなえる代理行為や同意行為、取消行為などの範囲が異なります。それぞれ、判断能力が不十分な人がどのように保護されるのかを解説します。

1. 後見制度

後見制度とは、判断能力が不十分な人に代わって後見人が契約をしたり、契約の取り消しをしたりすることができる制度です。すべての法律行為を後見人に委ねるため、本人が法律行為をしたとしてもそれは後見人が取り消すことのできる契約となりますし、被後見人の判断能力によってはそもそも無効とされることもあります。ただし、生活用品や食料品の買いものといった日常生活における法律行為は対象外であり、この場合は契約の取り消しなども原則としてできません。

一般的にいわれている「成年後見制度」は、この後見制度を指す場合がほとんどです。

2. 保佐制度

保佐制度とは、判断能力が不十分な人がお金を借りたり、不動産を売買したりする際に、保佐人の同意を得ることが必須となる制度です。後見制度はあらゆる法律行為が対象となりますが、保佐制度の場合は法律で定められた一定の行為についてのみ対象となる点が大きな違いとなります。日常生活における法律行為は後見制度と同様に対象外のため、保佐人による契約の取り消しなどは原則としてできません。

保佐制度の対象となる法律行為は、家庭裁判所の審判によってその範囲を拡大することも可能ですが、あくまでも本人の同意が必要なほか、保護が必要な範囲内に限定されます。

3. 補助制度

補助制度とは、判断能力が不十分な人の特定の法律行為について、補助人に対して同意権や取消権、代理権を付与する制度です。後見制度や保佐制度との最大の違いは、法律行為において本人の同意を得ることが必須という点です。

なお、後見制度および保佐制度と同様、生活用品や食料品の買いものなど日常生活における法律行為は対象外のため、保佐人による契約の取り消しなどは原則としてできません。

成年後見制度のメリット・デメリット

本人または家族が認知症を発症したなど、成年後見制度の適用を検討する人も少なくないと思います。しかし、成年後見制度は決してメリットばかりではなく、デメリットも少なからず存在します。あらためてメリットとデメリットを整理し比較してみましょう。

メリット1. 被後見人に判断能力がなくても資産の管理ができる

重度の精神疾患や認知症を発症すると正常な判断ができなくなり、自身の財産を失ってしまうおそれもあります。成年後見制度をうまく活用すれば、信頼できる人に資産管理や法律行為を代行してもらうことができ、財産を守れます。

メリット2. 後見人を通していない契約を取り消すことができる

精神疾患や認知症を発症した場合、正常な判断ができず身に覚えのない契約を結んでいた、というリスクも考えられます。たとえば自宅に訪問販売の担当者が訪ねてきて、いわれるがままに契約書へサインしてしまうと、本来は必要ではない高額な商品まで購入するといったケースもあり得るということです。

しかし、成年後見制度の適用が認められていれば、後見人の同意を得ていない契約や後見人が代理として行った契約でなければ取り消しが可能で、本人の財産を守ることにつながります。

デメリット1. 手続きが煩雑

成年後見制度はだれにでも適用されるものではなく、家庭裁判所への申し立てをおこない、審判の結果によってはじめて法律的な効力が発生します。自分自身の親が重度の認知症で、誤って高額な商品を購入してきたからといって、裁判所から後見人と認められていなければ、契約の取り消しによる無効を主張できません。

裁判所への申し立てをおこなう際にはさまざまな書類を揃えなければならないほか、審判の結果が出るまで時間も要します。

デメリット2. 申し立ての費用や後見人への報酬がかかる

家庭裁判所への申し立ては手続きが煩雑なため、弁護士または司法書士へ依頼するケースが一般的です。裁判所に申し立てる際に発生する手数料などの費用が発生するほか、後見人に対しても報酬を支払わなければならない場合があります。後見人への報酬は必ず発生するものではなく、「報酬付与の申し立て」があり、裁判所が認めた場合に発生することとされていますが、多くの場合には報酬が認められています。


成年後見人の費用はいくらかかる?申し立ての諸経費から報酬額まで紹介|楽クラライフノート お金と終活の情報サイト

多くの人が抱く成年後見人に関する悩みとして費用の問題が挙げられます。手続きにかかる書類の送料や印紙代はもちろんのこと、弁護士や司法書士へ手続きを依頼する場合報酬も支払わなければなりません。  そこで本記事では、成年後見人の申し立てにあたってはどのような費用がかかるのか、その相場と内訳についてくわしく解説します。

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後見人になれる人、なれない人

成年後見制度では、本人にとって信頼できる人を後見人にすることが重要です。なかには、弁護士や司法書士を後見人として選任するケースもありますが、家族や親族も選任可能です。

ただし、以下に該当する人は後見人になれません。

  • 未成年者

  • 家庭裁判所で解任された法定代理人、保佐人または補助人

  • 破産者

  • 本人に対して訴訟をしている人、その配偶者、その直系血族

  • 行方の知れない者


上記のうち、破産者のなかで免責(借金の返済義務がなくなった人)を受けた人の場合、財産状況や適格性なども鑑みて裁判所が後見人として認定するケースもあります。

成年被後見人申し立ての手続き

成年後見制度の適用にあたっては、実際にどのような手続きが必要なのでしょうか。申し立てから審査、審判までの流れと、手続きの詳細についてを解説します。

申し立てができる人

成年被後見人として認めてもらうために、裁判所に対して申し立てができるのは以下のいずれかに該当する人です。

  • 本人

  • 配偶者

  • 4親等内の親族

  • 成年後見人等

  • 任意後見人

  • 任意後見受任者

  • 成年後見監督人等

  • 市区町村長

  • 検察官


注意しておきたいのは、上記はあくまでも申立人であって、後見人とは異なるということです。後見人は特定の条件を除きだれでも選任することができますが、申し立ての手続きは上記いずれかに該当する人でなければできません。ちなみに、本人や配偶者が弁護士および司法書士に依頼することも可能です。

申し立てをおこなうまで

成年被後見人の申し立ては、所轄の家庭裁判所に対しておこないます。

申し立てに必要な書類は、「後見・保佐・補助開始申立書」や「代理行為目録」、「同意行為目録」など多数存在し、申し立てをする制度によっても必要書類は異なります。なお、東京家庭裁判所後見センターのWEBサイトには必要書類が一式アップロードされているため、参考にしてみてください。

また、申し立て書類のなかには医師の診断が必要なものもあります。該当する項目や書類については、かかりつけの医師へ依頼し記入してもらいましょう。

審査

成年被後見人の申し立ては、裁判所に必要書類を提出したからといってすぐに認められるものではありません。書類提出後、審査がおこなわれますが、この前に申立人および成年後見人の候補者と裁判所側で面接がおこなわれるケースがほとんどです。個別の状況について当事者からくわしくヒアリングすることが目的であり、面接の所要時間は裁判所によっても異なりますが、1〜2時間程度の場合が多いようです。

面接が終了した後は審査に進みます。審査では成年被後見人の精神鑑定をはじめとして、調査官による調査、家族照会などがおこなわれます。

審判

審査の結果を鑑み、審判によって後見人、保佐人または補助人のいずれかが必要であるか決定されます。認知症や精神疾患の状況に応じて決定されますが、審判に不服がある場合は2週間以内に不服申立てをすることが可能です。不服申立てがされなければ、成年後見等開始審判の法的な効力が確定し、裁判所が法務局に対して審判内容を登記するよう依頼します。

なお、成年後見人として認められた人の戸籍には、成年後見人であることは記載されません。もし、後見人が自らを後見人であると証明するためには、登記事項証明書を取得する必要があります。

成年後見制度で分からないことがあれば専門家へ

成年被後見人としての審判を受けるまでの手続きは煩雑で、弁護士や司法書士への費用の面から諦めてしまう人も少なくありません。

しかし、認知症患者の数は2025年には730万人に達するとの推計もあり、今後、成年後見制度を申し立てる人の数は増加すると考えられます。自分自身はもちろんですが、親や親族などが成年後見制度の適用を受けたほうがよいのか、難しい判断を迫られることもあると思います。そのような場合には、弁護士や司法書士が相談に乗ってくれますので、専門家の話を聞いたうえで適切な判断をおこないましょう。こちらのリンクにあるように、各地の弁護士会が成年後見制度に関する相談窓口を開いています。


(執筆編集:NTTファイナンス 楽クラライフノート お金と終活の情報サイト編集部)

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