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相続登記にかかる費用は?司法書士の選び方や自分で相続登記する際の注意点も紹介

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この記事の内容

この記事を監修した人
森部修道司法書士事務所 司法書士 森部修道

福岡県久留米市の司法書士です。相続手続きはもちろんのこと、遺言や成年後見制度の利用支援等、幅広い業務を取り扱っております。「わかりにくい法律手続きをわかりやすく」をモットーに、気兼ねなくご相談いただけるよう心がけております。詳細につきましては弊所ホームページをご参照ください。

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この記事をおすすめする人

相続の手続きを依頼か自力でやるか迷っている方


この記事のポイント

  • 登記は土地や建物の所在地や住所を登録すること
  • 専門家に依頼せずに自分で手続きすることもできる
  • 自分で登記する場合は、平日の日中に時間を確保する必要がある


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国税庁が2022年12月に発表した「令和3年分相続税の申告事績の概要」によると、日本で相続税の申告対象となった相続財産のうち金額換算で約40%は土地や家屋といった不動産です。相続財産が土地と家屋だけしかない場合、とくに地方では相続税の申告対象にならないことも多いため、より多くの不動産が相続されていることが考えられます。

不動産を相続する場合、「登記」とよばれる手続きが不可欠です。もし登記をおこなわなければ、相続した不動産が自分のものであると証明できないなどのリスクがあります。

不動産の登記にあたっては、税金や手数料といったさまざまな費用が発生します。この記事では、不動産を相続するにあたって登記にどのような費用がかかるのか、その内訳についてくわしく解説します。

相続登記とは

土地や建物を購入した経験がない方にとっては、登記という言葉は耳にしたことがあっても、具体的に何を指すものなのか分からないケースは多いことでしょう。また、不動産を相続するタイミングで、はじめて登記という言葉を耳にする方も少なくありません。

そもそも不動産における登記とは、その土地や建物の所在地・所有者などを法務局で記録することです。登記をおこなうと、法務局の帳簿に土地や建物の所在地・所有者などの情報が記録され、その情報はだれでも閲覧できるようになります。

相続登記は所有者が亡くなった場合に、相続人へ名義を変更する手続きのことです。これまでは相続登記は任意の手続きとされてきましたが、2024年から義務化されることになりました。いずれにせよ、不動産の取引を行う際には、亡くなった人の名義のままだと取引ができないため、相続登記が必要になります。

相続で登記する際にかかる費用のすべて

土地や建物を相続した場合、不動産登記にかかる費用には税金や手数料などさまざまなものがあります。不動産の課税標準額によっても変動がありますが、相場金額・計算方法は以下のとおりです。

費用

相場金額・計算方法

登録免許税

課税標準額の0.4%の金額

司法書士に支払う報酬

5万円〜10万円

提出書類の取得費用

被相続人・相続人の状況により異なる

登録免許税

不動産を相続する際は、「所有権の移転の登記」とよばれる手続きが必要となります。「相続による名義変更」といえば、この所有権移転登記を指します。登記に際しては、登録免許税とよばれる税金を納付しなければなりません。

登録免許税の算出方法は以下のとおりです。

登録免許税額=課税標準額×税率

上記のうち、課税標準額とは、毎年度発行されている固定資産税・都市計画税の納税通知書のなかの「評価額」(または「価格」)に記載されている金額です。「固定資産税課税標準額」ではないため注意しましょう。なお、金額が1000円未満の場合は切り捨てとなります。

余談ですが、この評価額はあくまで登録免許税の計算に用いるもので、相続税の計算の際には別の金額を算出して計算することになります。土地の場合は路線価を基にした「路線価方式」と固定資産税評価額を基にした「倍率方式」があります。

また、相続の場合の税率は1000分の4(0.4%)です。ちなみに贈与や売買などの場合は1000分の20(2%)となります。なお、金額が100円未満の場合は切り捨てとなります。

司法書士に支払う手数料(司法書士報酬)

土地や建物といった不動産の相続手続きについては、司法書士へ依頼することも可能です。依頼内容もさまざまで、戸籍などの法務局提出書類の収集も含めて委託するケースもあれば、書類作成および申請手続きのみを委託するケースもあります。

相続する不動産の課税標準額や物件数などによっても司法書士報酬は変わってきますが、土地建物一つずつで5万円〜10万円程度が相場となっているようです。遺産分割協議書に記載する内容や相続する不動産の課税標準額によっても作成費用は異なるケースがあるため、事前に司法書士へ確認しておきましょう。

提出書類の取得費用

不動産の相続登記には、被相続人(亡くなった方)の戸籍謄本や除籍謄本、相続人の戸籍謄本や住民票、印鑑証明書などの書類を用意する必要があります。

戸籍謄本の取得には1通あたり450円または750円がかかるほか、自治体によって異なりますが住民票は200円〜300円、印鑑証明書も200円〜300円の費用がかかります。

また、相続する不動産の情報を申請書に正確に記入するためには、登記簿謄本も必要です。これを法務局の窓口で取得するためには、1物件あたり600円の手数料が必要です。

これらの金額は、被相続人・相続人が本籍地を移した過去がある場合はその分の戸籍謄本などが必要となりますし、相続人の数が増えれば取得する書類も多くなります。よって、一概にいくらかかるとはいえません。

相続登記は2024年から義務に!不動産登記をしないことで生じるリスク

2024年4月1日から相続登記は義務になります。相続で不動産の所有権を取得したことを知った日から、正当な理由なく3年以内に登記・名義変更の手続きをしないと、10万円以下の過料を課せられる可能性があるため、忘れずに相続登記を行わなくてはなりません。

不動産の処分・活用ができない

相続登記がされていないと、事実上、不動産を売却することができません。これは登記簿で売主を確認することができないことから、売却しようとしても取引を断られてしまうためです。売却だけでなく、相続登記されていない土地にアパートを建てたり、駐車場経営等で有効活用しようとしても、登記簿で所有者であることが確認できないと取引が難しくなります。

遺産分割協議が難航する

遺産分割協議は相続人全員でおこなう必要があります。協議書にも相続人全員分の捺印が必要であり、相続人全員が納得しなくてはなりません。時間が経つと相続が繰り返され相続人が当初よりも多く出てきてしまい、協議が難航することも。また、時間の経過により相続人の中に判断能力を失う方が出てきた場合、遺産分割協議自体が難しくなってしまいます。遺産分割協議をスムーズに進めるためにも、早めに相続登記しておいた方が安心でしょう。

持分の限りで差し押さえられる可能性がある

相続登記を完了させていない状態で、共同相続人に借金がある場合、共同相続人の借金の債権者が不動産の持分を差し押さえることが可能です。そのため共同相続人に借金があると、借金を抱えていない相続人にまで迷惑が掛かってしまうので、早めに相続登記しておくようにしましょう。

依頼する司法書士を選ぶポイント

司法書士に相続登記の手続きを依頼する場合、円滑に相続登記を進めるためには、安心できる司法書士を選ぶことがポイントです。ここでは依頼する司法書士を見極める3つのポイントを紹介します。

費用がわかりやすい司法書士を選ぶ

最初の段階で、依頼した場合の費用がいくらなのか、司法書士に聞きましょう。相続登記の内容によっては追加で調査が発生し、当初よりも費用が増えることもあります。最初に相談した際にどの程度費用が増える可能性があるのか、教えてもらえる司法書士であれば、安心して依頼することができるでしょう。もちろん、司法書士の側も具体的に何を依頼されるのかがわからないと、金額を出せません。相談の段階で自身が相続登記をしなければならないこと、そのほかに抱えている課題などをきちんと話し、見積もりを出してもらうようにするとよいでしょう。また、そのためにも相談の前に、何を依頼すべきかリストアップしておけるとよいですね。

相性が良い司法書士を選ぶ

相続登記はほとんどの司法書士で対応できます。そのため「相続登記ができる」という点だけでは、どの司法書士に依頼したらいいか、選びにくくなってしまいます。

司法書士を選ぶ際は、自身と相性が良い司法書士を選びましょう。たとえば、早く相続登記を進めたいのであれば「連絡がマメな司法書士」であったり、一つひとつ理解しながら進めたいのであれば「説明がわかりやすい司法書士」など、自身と相性が良い司法書士に依頼することで、円滑に進めることができるでしょう。

不安な場合は各都道府県の司法書士会に相談

「どの司法書士に依頼したらいいのかわからない」という方は、各都道府県の司法書士会に相談すると、最適な司法書士を紹介してもらうことができます。これまでに司法書士に相談したことがない方や、どんな司法書士を選べばいいかわからない方は、ぜひ相談してみてください。

参考:全国司法書士会一覧|日本司法書士会連合会

相続登記は自分でもできる?

不動産の相続登記と聞くと、「法律にくわしくないから自分には無理」、「司法書士でなければ手続きできないのでは?」と考える方も多いでしょう。たしかに、専門家に依頼する場合には司法書士に依頼することになります。しかし、相続登記は必ずしも専門家でなければ手続きができないというわけではなく、自分自身でおこなうことが可能です。

自分で相続登記をおこなうときのメリット・デメリット

では、相続登記を自分自身でおこなう場合、どのようなメリット・デメリットが考えられるのでしょうか。それぞれのポイントを整理して紹介します。

自分で相続登記をおこなうメリット

相続人自らが相続登記をおこなうと、やはり費用面の負担をおさえられるのが大きなメリットです。

費用を抑えられる

自分自身で相続登記の手続きをおこなう場合、司法書士へ依頼する必要がないため、手数料を抑えられるメリットがあります。

登録免許税や戸籍謄本、住民票、印鑑証明書といった法務局提出書類を揃える最低限の費用はかかりますが、それ以外にかかる費用はありません。

不動産の状態を自分で確認できる

土地や建物といった不動産の登記された情報は、所有者本人ですらも目にする機会が多くありません。自分自身で相続登記をおこなうことにより、より関心をもって登記簿を確認できます。

自分自身が不動産の権利関係を把握しておくことで、不動産を売却したり担保に入れたりといった手続きが必要になったとき、スムーズに手続きを進められるようになるでしょう。

自分で相続登記をおこなうデメリット

自分で不動産登記、相続登記をおこなったことのある方はほとんどいないでしょうし、反対に相続登記をおこなったことのある方がいたとしても、それほど多くの回数ではないと思います。やはり、自分で相続登記をおこなうデメリットは、不慣れな手続きによる手間だといえます。相続登記が義務化される点からも、自分でおこなってみて時間がかかりそうだと感じたら、早めに司法書士へ依頼するのがおすすめです。

平日日中に時間を確保しなければならない

登記申請書を提出する法務局、および相続登記に必要な戸籍謄本や住民票、印鑑証明書などを取得する役所は、基本的に平日の日中しか窓口が開いていません。

また、手続きの仕方や書類の書き方を法務局に質問するときや、書類の不備があった場合に連絡を受け、訂正する際にも、平日の日中に対応しなければなりません。法務局への相談は原則的に予約制になっており、一度で済めばまだよいですが、手続きに不慣れな一般の方であれば複数回法務局を訪れることも珍しくありません。

そのため、自分自身で相続登記をおこなう場合には、平日日中に(それも何度も)時間を確保できることが必要となります。

税金の計算が煩雑

相続する土地や建物が複数存在する場合や共有持分のみの相続の場合、物件ごとの課税標準額から登録免許税を算出しなければなりません。また、物件のなかには評価額の記載のないものもあり、法務局と金額の擦り合わせが必要な場合もあります。土地一つ建物一つ程度であれば計算も簡単ですが、共有持分の相続であったり評価額の記載がない場合などは計算も煩雑となってしまいます。

もし、税金の計算を誤ったまま法務局へ登記申請書を提出し登録免許税を納付してしまうと、不足する場合は追加納付、納め過ぎの場合は還付手続きの連絡が来ます。還付手続きには別途還付申請書を作成し提出しなければなりません。還付金は法務局から返ってくるわけではなく、管轄の税務署を通じて事後的に還付されることになりますので、注意が必要です。

抵当権の登記がある不動産に注意

抵当権とは、お金を借りる際に不動産を担保にすることで、返済不能に陥った場合に備えて債権者(銀行など)が差押えて競売にかけられるようにしておく権利です。
たとえば住宅ローンを利用して家を買うとき、その家に銀行が抵当権を設定するケースが代表的です。この場合、もし借り手がローンを返済できなくなれば銀行は抵当権を行使して家を差し押さえ、競売手続きを経て貸したお金を回収します。

もし、相続する不動産に抵当権が設定されたままになっており、すでに借金が返済されているという場合は銀行などとやり取りしたうえで相続登記と併せて抵当権抹消の手続きをしましょう。相続する不動産に抵当権が設定され残債があるという場合は、被相続人が債務者であることが多いでしょうから、その債務の引継ぎや債務者の変更登記も含めて銀行などとのやり取りが必要になります。もし、プラスの財産よりもマイナスの財産の方が明らかに大きい場合は、相続放棄も含めた検討が必要となります。

まとめ

相続人が配偶者と子どもだけのケースなど、比較的シンプルな相続の場合では、自分自身で相続登記をおこなうことも不可能ではありません。

一方で、兄弟姉妹が相続人となるケース、相続人のなかに死亡している方がいるケース、相続が複数回発生しているケース等の場合は、登記手続きは複雑化し膨大な労力がかかるものです。もし、「自分だけで相続登記の手続きは無理かも……」と思ったら、司法書士をはじめとした専門家に依頼することも検討してみましょう。


不動産の相続登記に期限はない?|登記しないときのデメリットとは|楽クラライフノート お金と終活の情報サイト

登記はいつまでにすればよいのでしょうか?  実は現行の法律では、登記の期限は明確に定められていません。しかし、相続した不動産の登記をしないままでいると、不動産の本当の所有者が誰なのかわからなくなることをはじめとした、さまざまな弊害が生じあります。また、2021年4月21日に成立した改正法により2024年4月1日から相続登記が義務化されます。  そこで、この記事では相続した不動産の登記の期限や登記をしないことのデメリットを解説します。

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(執筆編集:NTTファイナンス 楽クラライフノート お金と終活の情報サイト編集部)

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