コラム

相続トラブルの原因は?弁護士に聞いた相続問題の事例と対策方法

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この記事の内容

この記事を監修した人
谷 靖介

弁護士法人リーガルプラスの代表として複数の法律事務所を経営しつつ、弁護士としては主に相続紛争業務や中小企業の法務労働問題を担当する。特に相続紛争問題は、遺留分に関するトラブルをはじめ、被相続人の預貯金使い込み問題、遺言内容の無効主張、遺産分割協議がまとまらないなど、相続人の間でスムーズな話し合いができない事案を中心に、絡まった諸問題を丁寧に紐解き、ご依頼者様が納得のいく解決を目指し活動している。

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この記事のポイント

  • 遺言書を作成する側にも説明責任がある
  • 対策をしておくことで、相続トラブルのリスクは減らせる
  • 生前に財産状況を共有しておこう


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年々増加する相続問題。遺言書の内容や相続人同士の関係によっては、裁判に発展し長引いてしまうケースもあります。財産をのこす側としては、自分がのこした財産がきっかけで家族が争ってしまうのは避けたいものですよね。

今回は、弁護士法人リーガルプラス代表の谷 靖介弁護士に、実際にあった相続争いの事例からわかる、相続問題の原因と対策を伺いました。

遺言書が相続争いの火種に。遺言書を作るうえで大切なこと。

――さっそくですが、相続ではどんなトラブルが起こりやすいのでしょうか?

とても多いのが、遺言書によるトラブルです。遺言書は財産をおもちの方がご自身の相続にまつわる希望を叶えるために必要なものですが、内容によっては相続争いの原因になります。

たとえば2人兄弟の親が亡くなった後、見つかった遺言書に「すべての財産を次男に相続する」と書かれていたとします。そうなると、自分の取得分が減った長男は納得できないですよね。

もちろん虐待などをおこなっていない限り、相続財産のうち一定の割合をもらう権利(遺留分、いりゅうぶん)は法律によって保証されています。しかし弁護士に相談される方は、この遺留分だけでは納得されない場合がほとんど。もし話しあいで解決できない場合には、遺言をめぐって裁判になることもあります。

――裁判にまで!確かに、遺言書にそんな内容が書かれていたら戸惑ってしまいそうです。

そうですよね。わたし個人の意見としては、遺言書を作られる方には「説明責任」があると思うんです。

――説明責任ですか?

はい。自分の希望どおりに相続人に相続してもらいたいのであれば、生前に遺言の理由や自分の気持ちを家族に話しておいたほうがいいと考えています。

「家族に話しにくいから、遺言書でのこすんだ」という方もいらっしゃいますが、やはりその方が話しにくい内容であればあるほど、死後に遺言を見せられる家族にとっては不意打ちを食らったように感じます。相続争いに発展するのは、そのようなケースがほとんどです。

亡くなってしまった後では、遺言の理由や親の気持ちを聞くこともできない。「なんで親は、こんな遺言書をのこしたんだろう?」と考えて、感情的になってしまうんです。それで話しあいができずに裁判になることで、相続争いが長期化してしまいます。

――それは、なんだか悲しいですね。

相続争いがおこってしまうと、金銭的にも時間的にも家族全員の負担になります。またそれ以上に、精神面の負担が大きい。

だから、生前に家族と話すことが大切なんです。死後に遺言書で突然財産の分け方を知るのと、生前に本人から聞くのでは、納得感が違いますから。あわせて、遺言書とは別に手紙や日記などで遺言の理由や動機などを具体的にのこしておくのも、ひとつの方法だと思います。

認知症の父に弟が書かせた遺言書。その効力は?

わたしが担当した相続トラブルの事例のなかには、ある2人兄弟の弟が、認知症の父親に自分に有利な公正証書遺言を書かせたものもありました。
(※公正証書遺言:公証役場で制作する遺言書。専門家に代筆してもらえるため、ほかの遺言書と比べて信用性が高い。)

――認知症の方でも公正証書遺言が作れるんですか?

作れます。「作れてしまう」というのが正直なところですが。遺言を作成したい方に認知症の症状が明らかに見られる場合は公証役場の公証人も断るのですが、公証人が話し、目視で症状がわからない場合は公証役場で遺言書が作れてしまいます。遺言書の形式さえ守られていれば、手続き(遺言執行)を進めることも可能になってしまいます。

ですが本来、遺言書は判断能力がない方が書いた場合は法律的に無効となるもの。なので、認知症の方が書いた遺言書は、裁判などで書かれた当時に判断能力がなかったと認められると無効となります。

――当時の判断能力が争点になるんですね。

はい。認知症に関する診断書や知能検査の結果、当時の記憶や会話能力などが証拠になります。また逆のケースで、しっかりとした意識で書かれた遺言書でも、内容を認めたくない相続人が「当時親は認知症だった」と主張する事例もありました。

――その場合は、どうすれば遺言書の効力を保てるのでしょうか?

認知症ではないという診断書のほかにも、手紙や日記などをのこしていれば証拠になります。

相続争いでは遺言書を作成する時点の判断能力が争点になることが多いので、遺言書を作る方は「意思がしっかりと反映されている遺言書である」と証明できるよう、準備しておくことを推奨しています。おすすめなのが、自分が話す様子を動画で撮っておくことですね。判断能力の証明になりますし、親族に気持ちを伝えられます。

親の財産を1億円使い込んでいた姉。親の財産を守る方法

ほかに相談されることが多いのは、亡くなった方の財産を親族のひとりが勝手に使い込んでいるケースです。老人ホームに入居中の方や認知症の方の財産を管理する親族が、魔が差して勝手に使ってしまう事例が多く発生しています。

ある事例では、親の財産を1億円使った人もいました。

――それは警察に捕まらないのですか?

親族の財産の使い込みで、警察が捜査を始めることは多くありません。刑法では親族の窃盗や横領は刑罰が免除される規定があるので、警察では相談で終わってしまうことがほとんどです。

――親の資産の使い込みがあったとわかった場合、どのように解決していくのでしょうか?

まず使い込まれた金額を相続財産に戻して、あらためて分配を提案することが多いですね。うまくいくケースもありますが、なかには「この財産はもらったもの」「親のために使った」と言う方もいて。

そのような場合は、使い込んだと認めなければ裁判になると忠告します。本人が認めずに裁判が起こった場合、相続が完了するまで2年、3年と長くかかってしまいます。最後にお金を取り戻せる可能性は高いですが、大変ですよね。

――事前に防ぐ方法はないのでしょうか?

すこしでも親の財産が使い込まれる可能性があると感じたら、「成年後見人」をつけるようにしてください。

――成年後見人ですか?

成年後見人とは、判断能力が低くなった方の財産保護をおこなう人のことです。ご家族から申し立てを受ければ、家庭裁判所が適格者を選任します。ご家族であっても、成年後見人の同意がなければその方の財産を使用できないので、非常に有効な手段です。

――自分の財産を自分で守るために、準備できることはありますか?

「任意後見人」を選任しておきましょう。任意後見人は、自分の判断能力が低下したときに代わりに財産管理をおこなってくれる人です。成年後見人と違い、任意後見人は自分で選べるので、信頼できる方にお願いしておくと安心です。

だれに任せるか迷ってしまう場合は、信託銀行などに選んでもらうのもおすすめです。

相続争いは感情の問題。気持ちのケアが大切。

――相続争いを起こさないために、大切なことはなんでしょうか?

「情報をオープンにすること」だと、わたしは思います。事前に相続争いを防ぐことができたケースのほとんどは、相続人が自分の財産状況を家族に共有していました。預金はこれくらいあって、不動産はこれくらい、保険はこれくらいと、家族や相続人全員に伝えているんですね。また相続の内容を事前に皆で相談して決めた家庭で、争いに発展することがほぼありません。

その点からも、相続争いは「感情」の問題だと考えているんです。

――「遺言の理由がわからず感情的になるから争いになる」というものですね。

相続問題に発展するケースの根幹は「相続分が少なくなるのは受け入れられるんだけど、理由や事情がわからないため受け入れられない。」といった気持ちであることが多いように思います。そういった寂しさやほかの相続人と比べるコンプレックスのような気持ちが、争いを大きくしているのではないかと感じることがあります。

だから、生前に話しあいの場をもつことが大切なんです。

相続や財産の分け方の理由を伝え、ほかの相続人と比べて取得する財産の金額や内容が不利な人には、気持ちのケアをおこなう。そうすることで、相続に納得感が生まれます。反対にそれを怠ってしまうと、死去後の話しあいが感情的なものになって、家族全員に負担がかかり、双方に弁護士がついたり、裁判所での手続きなどになってしまうんです。

家族のあいだで泥沼の争いを起こさないためにも、相続の理由を話すことや気持ちをのこすことを大切にしてほしいと思います。

相続争いを起こさないために、財産状況を共有しよう

谷弁護士のお話から、相続争いを起こさないためには、生前に家族と話しあいの場を設けること、そして財産状況を共有することが大切だとわかりました。あわせて、死後に家族が混乱しないように、遺言の理由や自分の気持ちをしっかりとのこしておきたいですね。


(執筆編集:NTTファイナンス 楽クラライフノート お金と終活の情報サイト編集部)


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