コラム

【税理士に聞く!】相続税の節税対策と、本当にすべき相続への備え

この記事の内容

相続税の節税対策にはいくつかの方法がありますが、自分にとってどの対策が適切かを判断するのは難しいもの。またそもそも自分が節税対策をおこなうべきなのか、わからない方も多いのではないでしょうか。

今回は、相続税を専門とする税理士法人チェスター代表の福留 正明税理士に、相続税の節税対策と本当にすべき相続への備えについて伺いました。

相続税は、あまり一般的ではない税金

まず、相続税の概要を簡単に教えていただけますか?

相続税は、亡くなった方の財産を相続人の方が相続するときに課せられる税金のことをいいます。年間で亡くなる方のうち、課税対象になる方は10%くらいで、それほど一般的ではない税金です。

[相続税について、くわしく知りたい方はこちら]

相続税を節税するためには、どのような方法があるのでしょうか?

実はそれほど多くなくて、一般的なものは「生前贈与」「保険」「不動産」の3パターンです。対策したい方の資産状況にあわせて、3パターンを組みあわせていきます。

生前贈与とは、子どもや子どもの奥さん、そのほかの親族などに自分の財産をあげて、課税対象になる財産を減らすものです。もちろん親族でなくても、ほかにあげたい人がいればその人にあげたり、寄附の意味で施設や自治体に渡すこともできます。

贈与をおこなうと贈与税がかかりますが、年間110万円以内の贈与であれば基礎控除額以下となり、税金がかからず申告も必要ありません。

[生前贈与について、くわしく知りたい方はこちら]

保険は「相続人の数×500万円は非課税になる」という決まりのもと、保険でかけた金額分が節税対象になります。自分が亡くなったら子どもや配偶者に保険がおりる死亡保険などがあります。

不動産は、相続税を計算するうえでの不動産評価額が購入金額より下がる場合があるため、現金にかかる相続税より不動産評価額にかかる相続税のほうが少なく、節税になるという考え方です。ただし節税ができたとしても、不動産投資で損をする可能性もあるので、リスクのある方法ですね。

3つのうち一番手軽に、また効果的に節税できるのはどの方法ですか?

一番手軽にできるのは生前贈与だと思います。保険や不動産にはリスクがついてまわりますが、生前贈与はわかりやすく実施しやすいですし、一定の節税効果も見込めますね。

しかし、「生前贈与であること」を証明する難しさがあります。たとえば、子ども名義の銀行口座を作成して財産を贈与しても、通帳を親が管理していて子どもが自由に財産を使えない状況だと、贈与とみなされない場合があります。生前贈与をするときは、「贈与された人が財産を自由に使える状態にしなければならない」ことがポイントです。

また保険も、まだ非課税枠の金額分の保険に入っていない方は、入ることで効果的な節税ができます。
生前贈与と保険を活用し尽くして、さらに節税したい方は不動産を、というイメージです。

節税対策をする人は少ない。その難しさは「対策=財産を減らすこと」にある

「終活」が世の中に広がるなかで、相続に着目される方も増えているかと思いますが、相続税の節税について実施する方や相談に訪れる方は多いのでしょうか?

世間ではよく節税対策と言われていますが、実際に節税対策を積極的におこなっている方はほんの数%にも満たないと思います。我々は年間で1,300件の相続税申告をしていますが、そのなかでも生前に相続対策をされていた方はあまりいらっしゃいません。

節税対策をおこなう方が少ないのはなぜですか?

一般的に節税対策というのは「自分の財産を減らすこと」を意味します。税金のことも心配ですが、それ以上に老後の生活への心配があるでしょうから、積極的に対策される方は多くありません。

金融資産に余裕のある方でないと難しい、ということでしょうか?

そうですね。老後資金をとっておいて、余裕のある部分で対策する形になります。

また要因はそれだけではなくて、財産をのこす側は節税対策まで意識がまわらない場合が多いんです。「節税対策をした方がいい」「節税したい」という気持ちは財産を受けとる側に強くあるものの、「節税対策をしてください」とはなかなか言えないのです。それはつまり、「財産をください」ということになってしまいますから。

財産を受け継ぐという意識の強い企業オーナーさんや代々受け継ぐ土地をもつ地主の家系でない限り、親の死について話す機会さえなかなかないのが現状です。

何より大切なのは、情報と思いを整理しておくこと

普段はどのような方が、どういった経緯で相談に来られるんですか。

親族の方が亡くなって相続が発生したことをきっかけに相続人の方が相談に来られて、こちらで相続税申告の代行をおこなう場合が多いです。

ほかにも、生前に「相続税を節税したい」「いまもし相続が発生したらいくら相続税がかかるのか、節税できるのか」などの相談に来られる方もいらっしゃいます。ご自身やご両親が病気をされたり余命宣告を受けられたりしたことがきっかけで、相続を意識される方が多いようです。

相談を効率的に進めるために、準備するものや調べておくべき情報はありますか?

やはりどのような財産をどのくらいもっているのかが重要なので、「財産目録」を作成しておくことですね。金融資産がいくらあって、土地はどこにあって、という情報をまとめておくと、税理士への相談だけでなく、相続の手続きを進めるうえでも助けになりますよ。

また複雑な家族関係の場合はとくにそうですが、家系図があると相続金額や実際にかかる相続税額が明確になってアドバイスがしやすいですし、実際に申告手続きをするときにも便利です。

相続や財産の贈与について、早いうちから備えておくべきことはありますか?

早くから節税対策を始めておくほうがいいと言われますが、相続税については難しいんです。対策をする=財産が減ることになるので、早く始めすぎて老後の資金がなくなってしまっては元も子もありません。また子どもに財産を早めに渡しておいたとしても、子どもが先に亡くなってしまう可能性もありますよね。

そういったリスクを考えると、節税対策を実際におこなうのは重たい決断です。「もし相続が発生したらどのくらい相続税がかかるのか」を確かめておくくらいで十分だと思います。

情報をまとめて整理しておくこと大切、ということでしょうか。

そうですね。やはり相続に関して一番重要になるのは「いかに揉めずに相続の手続きを終えられるか」です。たとえ法的効力がなかったとしても、財産の分け方に対する意思やその理由、メッセージなどがのこっているだけでも状況は大きく変わります。

そうした思いをのこすには、どのくらいの資産がどこにあり、相続が発生するとどのくらいの相続税がかかるのか、という情報を本人が整理できていることが大切になります。

きちんとご自分の財産を整理したうえで、意思をのこしたり、生前の感謝を伝えたり、情報のメンテナンスをおこなったり、という作業を丁寧に続けられるといいですね。

いまある財産を知って、自分にあった相続への備えを

福留税理士のお話から、相続税の節税は必ずしも「早いうちから対策をすればいい」というものではないとわかりました。まずは資産を整理してその全体像を知り、財産の分け方などについて、家族とコミュニケーションをとってみることが大切です。

終活アプリ『楽クラライフノート』であれば、財産状況の整理から家系図の登録、葬儀や相続などにまつわる自分の意思の共有まで、ひとつのアプリでサポートします。相続について不安が生まれたら、ぜひ活用してみてください。


(執筆編集:NTTファイナンス ライフノート編集部 情報は2020年10月27日時点のものです。)

この記事を監修した人
福留 正明

税理士法人チェスター代表税理士。
公認会計士・税理士・行政書士。相続税を専門に取り扱う税理士事務所の代表。相続税申告実績は税理士業界でもトップクラスの年間1,000件以上(累計5,000件以上)を取り扱う。相続税申告サービスやオーダーメイドの生前対策、相続税還付業務等を行う。相続関連書籍の執筆や各種メディアから取材実績多数有り。

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