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孫への生前贈与|そのメリット・デメリットと注意点

この記事の内容

生前贈与の非課税枠とは?子や孫のライフステージの変化で賢く財産を引き継ぐ方法」でご紹介したように、相続ではなく生前贈与という形を採ることによって税負担を軽くする方法があります。

そこでシニアの方が思うのが、「かわいい孫に財産を与えるとき、いくらまでが非課税で、どんな点に注意しなければならないか」ということではないでしょうか。この記事では、そんな孫への生前贈与について解説します。

孫へ生前贈与することのメリットとデメリット

通常、親の財産は子に相続されるケースが一般的ですが、孫に対して生前贈与をするケースもあります。孫への生前贈与はどのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか。

孫へ生前贈与することのメリット

税負担が軽くなる場合がある

祖父母から親、親から子へと財産が相続される場合、相続手続きをおこなうたびに相続税がかかります。しかし、祖父母から孫への生前贈与では、後述する方法によって相続税がかからず、贈与税もかからなかったり低減できたりする場合があります。

また、生前贈与から3年以内に祖父母が死亡した場合、孫が相続人であれば相続財産と見なされ相続税の課税対象となってしまいますが、相続人でない孫へ生前贈与をしていた場合には相続財産と見なされません。

相続がスムーズに進む

祖父母が死亡したあとで財産を相続するとなると、残された家族は煩雑な相続手続きを行わなければなりません。しかし、生前贈与の場合は祖父母自身が財産の分配について手続きできるため、死亡時における相続手続きについてで家族の手間が軽減できます。

孫へ生前贈与することのデメリット

税負担が重くなる場合もある

相続する財産の額によって税率は異なりますが、一般的に相続税よりも贈与税のほうが高い税率となっています。

そのため、祖父母から親、親から子へ相続した場合と、祖父母からその孫へ生前贈与した場合の税負担を比較することが重要です。

税務調査の際に名義預金とみなされる場合もある

生前贈与にあたっては、贈与契約書の作成や贈与税の申告といったさまざまな手続きが必要です。もし、これらを適正におこなっていないと、税務調査の際に後述する名義預金とみなされ相続税の加算を求められることがあります。

孫に生前贈与する6つの方法

孫に対して生前贈与をおこなう場合、通常であれば贈与税を納付しなければなりません。しかし、一定の条件を満たすことで非課税とすることも可能です。具体的にどのような方法があるのか、今回は6つの方法について概要を紹介します。

1. 暦年贈与

暦年贈与とは、1人の受贈者に対して1年あたり110万円以下の贈与をおこなうことです。1年間で110万円以下の贈与では、贈与税の基礎控除額内となるため贈与税は非課税となり、申告手続きも不要です。

ただし、事前に贈与総額を決めたうえで毎年一定額の贈与をおこなう場合、定期贈与と見なされてしまい、一括で贈与した場合と同等の贈与税がかかる可能性もあります。

なお、暦年贈与は「令和3年税制改正の大綱」に控除廃止の方針が示されており、今後、廃止となる可能性もあるため、これから暦年贈与を検討している方は法改正の動きに注視しましょう。

2. 教育資金の贈与

学校の授業料や入学金など、教育資金として孫へ生前贈与する場合、受贈者1人につき1500万円までが非課税となります。教育資金は一括贈与が可能ですが、金融機関に教育資金口座を開設し、その旨を税務署へ届け出ることが条件となります。また、実際に教育資金を使用した場合、領収書を金融機関へ提出しなければなりません。

なお、孫が在学中に祖父母が亡くなった場合、金融機関への届出が必要であるほか、孫が学校へ在学中であることの証明書類も提出する必要があります。

3. 保険金の贈与

孫に対して暦年贈与をおこない、孫が贈与を受けした資産から生命保険料を支払い、被保険者を祖父母とし、保険金料の受取人をも孫にすることで、祖父母が亡くなった際に生命保険金を孫に贈与することが可能です。

暦年贈与にあたっては、定期贈与と見なされないために、贈与する年には必ず贈与契約書を作成しておく必要があります。

この方法であれば、孫が受け取った保険金に対しては所得税が一時所得として課税されるのみで、相続税や贈与税などはかかりません。

4. 結婚や子育て資金の贈与

孫の結婚資金を贈与する場合には300万円まで、出産、子育ての支援も含めると、トータルで1000万円までの資産を非課税で贈与できます。

教育資金の贈与と同様に、金融機関へ結婚・子育て資金口座を開設したうえで、税務署へ届け出ることが条件となります。また、結婚・出産・子育てに要した領収書も金融機関へ提出する必要があります。

なお、結婚や子育て資金として認められる費用は細かく定められており、新婚旅行にかかる旅費や家具の購入費用などは認められないため注意しましょう。

5. 生活費の贈与

家賃や食費、光熱費、その他雑費など、生活していくうえで必要な資金を孫へ提供した場合、贈与税の課税対象とはなりません

ただし、「向こう数年分の生活費を一括で贈与したい」といった場合には、使途が生活費であったとしても贈与税の納付義務が生じるため注意が必要です。

生活費を所定の口座に振り込んでもらう際には、それが生活費に使用されたことを明確に把握できるよう領収書などを保管しておくとよいでしょう。

6. 住宅取得等資金贈与

受贈者である孫が自ら居住することを前提に土地や住宅を取得する場合、その購入費用として資金を贈与することも可能です。ただし、これには一定の要件が存在し、孫が20歳以上かつ合計所得金額が2000万円(新築などをする住宅の床面積が40㎡以上50㎡未満の場合は1000万円)以下であること、贈与された翌年の3月15日までに住宅を取得し、居住することなどを満たす必要があります。

なお、贈与税の非課税枠については、こちら(リンク※164相続_生前贈与非課税)の記事でもくわしく紹介しているため、参考にしてみてください。

もし110万円をこえる財産を贈与するときの税率と控除額は?

贈与税の納付が必要な場合、以下の計算式に当てはめることで贈与税額を算出できます。

贈与税額=(1年間の受贈金額-基礎控除額110万円)×贈与税率-控除額


暦年贈与で「年間110万円までは非課税」と紹介したのは、贈与税の基礎控除額が110万円であるためです。もし110万円をこえる財産を受贈した場合、正確な納税金額を算出するためには贈与税率と控除額を把握しておく必要があります。

受贈者である孫の年齢によって「一般贈与財産」と「特例贈与財産」の2パターンが存在し、それぞれ税率は異なります。

一般贈与財産(孫の年齢が20歳未満の場合)

基礎控除額(110万円)差引き後の受贈金額贈与税率控除額
200万円以下10%0
300万円以下15%10万円
400万円以下20%25万円
600万円以下30%65万円
1000万円以下40%125万円
1500万円以下45%175万円
3000万円以下50%250万円
3000万円超55%400万円

特例贈与財産(孫の年齢が20歳以上の場合)

基礎控除額(110万円)差引き後の受贈金額贈与税率控除額
200万円以下10%0
400万円以下15%10万円
600万円以下20%30万円
1000万円以下30%90万円
1500万円以下40%190万円
3000万円以下45%265万円
4500万円以下50%415万円
4500万円超55%640万円

孫に生前贈与するときの注意点

孫に対して生前贈与をする場合、必要書類の作成や使途の明確化など適切に処理をしなければ、生前贈与と見なされない可能性もあります。生前贈与にあたってはどのようなポイントに注意すべきなのか、5つの点に分けて解説します。

1. 定期贈与と見なされないよう注意する

暦年贈与の場合、あらかじめ贈与総額を決めて毎年110万円ずつを分割贈与する方法も考えられるでしょう。しかし、このような場合、税務調査が入った際に定期贈与とみなされてしまい、実質的に一括贈与とおなじ高額な贈与税を納付しなければなりません。

このような問題を回避するためには、贈与契約書を1年ごとに作成・保管しておくことが求められます。

2. 相続開始前3年以内の贈与は相続税の対象となることに注意する

被相続人が亡くなる3年前までに生前贈与を受けていた場合、相続財産として見なされてしまうため、相続税が加算されます。ただし、これは配偶者や子のような相続人に贈与することのみに適用され、相続人でない孫に生前贈与していた場合には相続税の加算が発生しません。

3. 名義預金と見なされないよう注意する

祖父母名義の口座から、預金を孫名義の口座に移しただけで生前贈与が完了したと考えているケースもあります。しかし、これだけでは名義が孫であるだけで実質的には祖父母が管理している財産(これを名義預金といいます)と見なされてしまい、相続税の納付が求められる可能性もあります。

このような問題を防ぐためには、祖父母と孫との間で贈与契約書を締結したうえで、孫本人またはその親が管理している預金口座など資金を贈与することが重要です。

4. 学資保険の受取人に注意する

孫の教育資金を捻出するため、学資保険への加入を検討している方も多いことでしょう。しかし、学資保険の受取人をだれに設定するかによって支払うべき税金の種類や納税額も変わってきます。

もし、祖父母が学資保険の契約者となり、孫を受取人として設定した場合、保険金を受け取った孫は贈与税の対象となります。一方、契約者と受取人が一緒の場合には、贈与税ではなく所得税の対象となります。

贈与税の場合、受け取った保険金そのものが算出のベースとなりますが、所得税の場合は支払った保険料と受け取った保険金の差額がベースとなります。そのため、所得税のほうが支払う税金を安く抑えられることが多いのです。

5. 特別受益に注意する

特別受益とは、法定相続人が被相続人から生前に得た特別な利益(住宅取得費用や学費、留学費用、事業資金の援助など)のことを指します。特別受益があると見なされた場合、遺産分割協議などの際に特別受益分と相続財産分を合算して、各相続人へどれだけ相続されるかが決められます。そうしなければ、特別受益を得ていない人に不公平感が生まれてしまうためです。しかし、孫の場合は法定相続人にはあたらず、一部の例外を除き特別受益に該当しないケースがほとんどです。

法定相続人が複数存在する場合、特定の相続人の子(孫)だけが特別受益に相当する利益を得ていたとしても、特別受益にはあたらないことが多いです。

まとめ

結婚や出産にかかる資金や教育資金、さらには生活費まで、生前贈与として非課税となる範囲は意外と広いと感じられた方も多いのではないでしょうか。

ただし、非課税の対象として認められるには一定の条件があり、適正に書類を作成・保管していたり、申告していなければ税務調査が入った際に課税対象と見なされたりする可能性もあります。

税金がかからないと思っていたら課税されてしまった、とならないにも税理士をはじめとした専門家に日ごろから相談しておくことが大切です。


(執筆編集:NTTファイナンス 楽クラライフノート お金と終活の情報サイト編集部 情報は2022年1月31日時点のものです。)

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この記事を監修した人
叶税理士法人 東京事務所代表 不動産専門の税理士 萱谷有香
不動産投資に特化した税理士事務所で働きながら収益物件について税務と投資面で多くの知識を得られたことを活かし
自らも不動産投資を手掛ける。
大手管理会社、ハウスメーカーや賃貸フェアなどで講演実績があり、記事執筆も行う。
不動産投資の規模を拡大していくために、なくてはならない金融機関からの融資についても積極的に紹介やアドバイスを行う。
物件購入前、物件保有中、物件売却時、相続時、どの時点で相談を受けても必ず投資家にプラスになるアドバイスを心掛けている。
著書に『減価償却節税バイブル』( 技術評論社)がある。

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