コラム

「介護のためのリフォーム」とその費用|これからもずっと住み慣れた自宅に住み続けるために

この記事の内容

高齢化の進行によって、介護を受ける人の数も増えています。2005年に417万人だった要介護度認定者数は2015年に606万人となり、約200万人も増えているのです(内閣府『平成30年版高齢社会白書』)。

そうなると、在宅で介護を受ける人も必然的に増えてくるでしょう。ただ、そこで少なくない数の人がまず思うのが「足腰がおぼつかないなかで、いまの自宅に暮らせるだろうか」ということではないでしょうか。元気なころはまったく気にもとめなかった家のなかの廊下や段差は、介護を受ける状態となると移動が非常に困難となってきます。

そこで必要となるのが、自宅のリフォームです。この記事では、介護を受けるためにどんなリフォームが必要か、費用の相場などを解説します。

家のなかのこんなところが、シニアにはつらい

多くの住宅は、現役世代の若い人が暮らしやすいようにつくられていますが、シニア世代となるとちょっと体を動かすだけでもひと苦労となってしまうことも。具体的に、家のなかのどんなところがシニアにとってつらいか、こちらで解説します。

玄関

読者のみなさんのご自宅に入るときを思い浮かべてみてください。一戸建てにお住まいの方は、玄関に入る前に一段、段差があるという場合が少なくないのではないでしょうか。こうした段差はロコモティブ症候群(運動機能が低下し、歩行などが困難になるシニア特有の症状)の人や車椅子で生活する人にとっては大きな障害となってしまいます。

また、玄関ドアもおなじく障害になります。手や腕の筋力が衰えると、ドアの開け閉めが難しくなるからです。さらに、車椅子の幅よりドアの間口の幅のほうが狭いと、家のなかに入ることができません。

トイレ

築年数が古い住宅であると、トイレが和式である場合もあるかもしれません。こうした和式トイレはしゃがむのに力を使うため、シニアにはつらい動作となってしまいます。

では、洋式トイレであれば安心かというと、そうでもありません。洋式トイレでも手すりがない状態で座るには、和式ほどではないものの足腰への負担がかかります。また、それ以上に恐ろしいのが、冬場の「ヒートショック」です。ヒートショックとは、急激な温度変化により血圧が大きく変動することで、これによって脳出血や脳梗塞、心筋梗塞を起こすリスクが潜んでいます。冬場に暖房の効いた居間から寒いトイレに移動すると、このヒートショックを起こす可能性があるのです。

浴室

浴室もトイレと同様に、冬場の気温が下がることからヒートショックを起こすリスクが存在します。また手すりがついていない場合は、滑ったときに手で掴めるものがなく、転んで頭を打ってしまう危険性があることも。さらに、バスタブのなかに入るのも、足腰が弱った状態であると負担となります。

その他

家のなかの長い廊下や階段は、介護を必要とするシニアにとっては移動がつらくなります。

リフォームの具体例と費用の相場

以上で取り上げたのは、とくにリフォームが必要となる箇所の代表的な例です。こうしたリフォームが必要な箇所では具体的にどんな改修をすべきなのか、その費用相場を解説します。

玄関

玄関の段差を解消する、スロープを取り付けるなどのリフォームをする場合、2万〜45万円が相場です。一方、手や腕の力が衰える、あるいは、車椅子で生活する場合には、玄関のドアを引き戸にするとスムーズな移動が可能となります。この場合のリフォーム費用の相場は、20万〜60万円です。

トイレ

介護を受ける場合、家のトイレが和式であれば洋式に変更したほうがよいことはいうまでもありません。こうした洋式トイレへのリフォームの相場は、20万〜60万円です。ヒートショックを防止するため暖房便座にするなど、トイレのグレードを上げるほど金額も上がっていきます。

浴室

浴室でのヒートショック防止策として、浴室内の暖房設置が挙げられます。この設置費用は20万〜50万円が相場です。また、床材を滑りにくいものに張り替えることで転倒を防止できます。この費用は10万〜20万円が相場です。さらに、足腰に不安がある場合にスムーズな移動を可能とするため浴室内に手すりをつける工事をおこなうと、1万5000〜2万5000円がかかります。

その他

家のなかでの移動で負担を軽減するためには、手すりの設置をおこないます。費用の相場は1万〜15万円となっていますが、手すりを設置する場所や長さによって、費用が膨らむケースもあります。

また、手すりだけにとどまらず、以上で挙げたようなリフォームを家全体でおこなおうとすると、およそ350万円以上かかるとされています。

リフォームの優先順位

家全体のリフォームで350万円以上というのは、そうやすやすと出せる金額ではありませんよね。そこで、予算が限られる場合に、リフォームの優先順位をつけることが必要です。たとえば、外出はあまりしないけれどもお風呂で過ごす時間が大好きな方は、玄関のリフォームは後回しにして浴室のリフォームを優先的におこなう、といった方法があります。

一方、優先順位をどのようにつければよいかわからない、という方もいるかもしれません。こうした場合には、排せつ、衛生、休息に関する場所からリフォームしていく、との考え方があります。これらは介護を受けるなかでも、とくに重要度の高い生活の場面であるためです。この考え方に従ったときのリフォームの一例として、トイレ→浴室→寝室→居間という優先順位となります。

介護保険を利用してリフォームの費用を軽減する

訪問介護や通所介護、施設での介護というように、介護サービスを受ける際の公的な給付制度として介護保険があります。この介護保険を利用して介護のためのリフォームで費用負担を軽減させる方法があります。給付の限度額は20万円です。このうち、リフォームで実際に補助を受ける割合は7〜9割となるので、最大の支給額は18万円となります。制度の利用には要介護認定か要支援1〜2の認定を受けている必要がありますが、認定度による支給額の差はありません。また、リフォームの対象となる住宅が被保険者の住所と一致している必要があります。病院や福祉施設に入院・入所している場合は、支給されません。

リフォームのために介護保険を利用するには、まずケアマネージャーにその旨を相談しましょう。ケアマネージャーが作成するケアプランのなかに、介護のためのリフォームが組み込まれます。続いて、行政への住宅改修費の事前申請をおこないます。ここで作成・用意するものは、(介護保険の)支給申請書、住宅改修を必要とする理由書、工事費見積書、改修後の完成予定がイメージできるもの(図や写真など)です。書類に書く理由などをどうすればよいかわからない場合は、こちらもケアマネージャーに相談しましょう。次に行政による家屋調査を経たあと、リフォーム会社に工事を依頼し、施工、完成です。完成後に、領収書、工事費内訳書、完成後の状態を確認できる書類(写真など)を行政に提出し支給決定がなされてから、介護保険によるリフォーム費用の給付が受けられます。つまり、工事費用を業者に先払いし、給付はそのあとに受けられることになります。あらかじめまとまったお金を用意しておく必要があるので、注意しましょう。

公的支援を受けつつ、リフォームを検討しよう

介護を受けるためのリフォーム費用は非常に高額となる一方で、介護保険からの支給額は最高20万円ということに対し「思ったより、助成が少ないなあ……」と感じた方もいるかもしれません。

しかし、介護保険以外にも自治体単位でシニアのためのリフォーム費用を支援しているケースがあります。たとえば東京都世田谷区の場合、手すりの取りつけや段差の解消などといった「予防改修」に20万円、浴槽やトイレなどの「設備改修」に10万6000〜37万9000円を助成する制度を設けています。お住まいの自治体の福祉関連部署やケアマネージャーに聞いてみると同様の制度があるかもしれませんので、ぜひご確認ください。

たくさんの思い出が詰まった我が家に、これからも長く住み続けられるとよいですね。


(執筆編集:NTTファイナンス 楽クラライフノート お金と終活の情報サイト編集部 情報は2021年11月12日時点のものです。)

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