コラム

熟年離婚の財産分与について|退職金や年金などの分割方法とは

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この記事の内容

この記事を監修した人
谷川 聖治

弁護士法人ALG&Associates 執行役員弁護士。弁護士法人ALG&Associatesは、東京・宇都宮・埼玉・千葉・横浜・名古屋・大阪・神戸・姫路・福岡に支部をもち、約90名の弁護士が所属している法律事務所であり、相続、離婚、刑事、交通事故、企業法務・労務、医療過誤など幅広く専門性を追求。総合病院型の法律事務所を目指しており、当職はその中でも相続分野に注力している。同法人で執行役員として、相続分野を中心に新人教育等を担っている。

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この記事をおすすめする人

熟年で離婚をする際の財産分与や相続を悩んでいる方


この記事のポイント

  • 生活資金・健康面での不安・家事などが懸念ポイント
  • 婚姻中の貯金などは原則として2分の1に分けられる
  • 熟年離婚に踏み切る際は慎重に


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近年、高齢となってから夫婦が別れる熟年離婚が目立つようになっています。すべての離婚した夫婦のうち、18.5%は「同居期間が20年以上」(参照:国立社会保障・人口問題研究所「人口統計資料集」2020年)という熟年夫婦であり、これは1947年以降、もっとも高い数字です。

熟年離婚する場合、年金の分割など若い人の離婚にはない争点も起こり得ます。この記事では熟年離婚する場合の財産分与や相続についてをご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。

熟年離婚する原因

そもそも、長年にわたって連れ添ったにもかかわらず、なぜ熟年離婚にいたるのでしょうか。原因となる4つのポイントをピックアップしました。

子どもが成人したから

夫婦間に何らかの問題やトラブルを抱えていても、子どもがいることを理由に離婚を踏みとどまる夫婦は少なくありません。しかし、子どもが成人し独立すると、親の責任を果たしたと考え、あらためて離婚を本気で考えるケースもあるようです。

夫婦間のコミュニケーションが少ないから

夫婦とはいえ、お互いに言葉に出さないとわからないこともあります。長年にわたって一緒に生活していると、夫婦であることが当たり前に感じてしまい、自分の考えや思いはあえて話さなくても相手は分かっているだろうと勘違いしてしまうもの。コミュニケーションが少ないと、徐々にお互いの考えや価値観が分からなくなり、夫婦間に亀裂が生じ離婚にいたってしまうこともあるようです。

配偶者の不貞やDVがあるから

配偶者による不貞行為やDVは、離婚の大きな要因になり得るものです。DVと聞くと肉体的な暴力をイメージしがちですが、必ずしもそれだけが該当するとは限りません。たとえば、相手を侮辱する言葉を日常的に繰り返している、大切なものを無断で捨てる、生活費を渡さないなど、精神的・経済的な暴力行為もDVに該当します。

その他

熟年離婚世代にあたる50代、60代になると、相手の親の介護が必要になってくる年代です。義理の親とはいえ、血のつながっていない人の面倒をみることに嫌悪感を示す方もなかにはいます。たとえば「配偶者は働きに出ていて、結果的に自分だけが介護を押し付けられている」と不満に感じ、離婚への引き金になることもあるようです。

また、共働き世帯の場合、自身の収入の一部を少しずつ貯金し、安定して暮らしていける経済的な目処がたったことで離婚に踏み切る夫婦も少なくありません。これは夫婦間に不満を抱えているなど、複合的な要因が絡み合っているケースが多く、経済的不安の解消が最後の引き金になるパターンといえます。

離婚したいシニアが考えなければならないこと

50代、60代になると、離婚をしたくても今後の不安が脳裏をよぎり、なかなか決断できないことも少なくありません。離婚の決断を下す前に、どのようなことを考えるべきなのか、3つのポイントを中心に解説します。

長い老後の生活資金を確保できるか

まず第一に考えるべきなのは、今後の生活資金についてです。ある程度の貯金があったとしても、将来働けなくなったときに経済的に困窮する可能性はゼロではありません。当面の生活費を得るための仕事はあるか、または年金の受給予定までの歳月などもあわせて確認しておきましょう。

ひとりになっても家事ができるか

これまで配偶者に家事を任せきりにしていた場合、離婚と同時に洗濯や料理、掃除などができず、日常生活に支障をきたすケースがあります。自分ひとりになっても身の回りのことができるのか、単身での生活をシミュレーションしてみましょう。

健康面での不安を感じないか

50代以上の人の離婚において大きな不安として残るのが、健康面での心配です。特に持病を抱えている方の場合、ひとりでの生活が始まると、万が一体調が悪くなってもサポートしてくれる人がおらず、命の危険にさらされるリスクが大きくなります。配偶者以外に子どもや親戚など、いざという時に頼れる人がいるか振り返ってみましょう。

熟年離婚するときの財産分与

熟年離婚の際に多くの方が気になるのが財産分与の方法やルールについてではないでしょうか。今回は特に押さえておきたい3つの重要なポイントを解説します。

預貯金や婚姻期間中に築いた財産

婚姻期間中に築いてきた預貯金をはじめとする財産については、原則として2分の1ずつに分けられます。仮に夫または妻が家事に専念し収入を得ていなかったとしても、割合が減ることはありません。ただし、夫婦間で合意した場合には、異なる比率での財産分与も可能です。

退職金

退職金の分与は、退職金を支給する会社での勤務年数、および婚姻期間などによって分ける比率は異なります。また、離婚時点で退職金は支給されていなくても、あと数年、または数か月程度で退職金が支給される見込みがある場合には、財産分与の対象となるケースもあります。

ちなみに、離婚時点ですでに退職金を使い切っていた場合には、財産分与の対象とならない可能性が高いようです。

年金

厚生年金または共済年金に加入していた場合、離婚によって年金分割制度を利用できる可能性がありますこれはあくまでも会社員などが加入している厚生年金および共済年金の部分のみで、国民年金の部分は年金分割制度の対象になりません。

また、たとえば配偶者が厚生年金に加入していた年数が30年で、うち婚姻期間が20年であった場合には、婚姻前の10年間は分割対象に含まれないため注意が必要です。

熟年離婚と相続

親などから相続した遺産は、財産分与の対象となるのでしょうか?また、離婚したあとに自分が亡くなったら、財産の相続順位はどうなるのでしょうか?ここでは熟年離婚と相続について、解説します。

相続した財産は原則、財産分与の対象とならない

配偶者が自身の親族などから資産を相続した場合、夫婦間においては財産分与の対象となりません。財産分与の根本にある考え方は、婚姻期間中に夫婦が共同で築き上げてきた資産を分割するというものです。しかし、相続の場合、夫婦が共同で得た資産とは見なされません。そのため、預貯金や年金、退職金とは異なり、離婚によって財産を分割することはできないのです。

離婚すると子どもの相続割合が増える

夫婦間が不仲であっても、婚姻関係が続き配偶者である限り、夫婦の一方が死亡したときには、他方の夫又は妻は、相続人となります。子どもがいる世帯では、妻が全体の2分の1を相続することになり、残りを子どもたちが兄弟姉妹の人数に応じて相続することになります。

一方、離婚が成立した場合には、配偶者は相続人になりませんので、原則として子どものみが相続人となり、その結果、子どもが相続する財産の割合が増加します。

離婚するときの決着のつけ方

ひと口に離婚といっても、互いに納得したうえで決断する場合もあれば、第三者に判断を委ねる解決の方法もあります。どのような決着のつけ方があるのか、3つの方法を解説します。

協議離婚

協議離婚とはその名の通り、夫婦間で話し合い、互いに納得したうえで離婚届を提出する方法です。協議離婚においては夫婦間で合意がとれていれば法的に理由が求められることはありません。日本国内での離婚の87.4%(参照:国立社会保障・人口問題研究所「人口統計資料集」2020年)が協議離婚であり、もっとも一般的な決着のつけ方といえるでしょう。

離婚調停

正式には「夫婦関係調整調停」とよび、家庭裁判所で調停手続を行う方法です。夫と妻双方が出席することが大前提となっています。そのため仮にどちらか一方が出席を拒んだ場合、調停不成立となり解決にはいたりません。離婚調停では親権者や養育費、財産分与などの問題も一緒に解決できます。

訴訟

相手が離婚調停に出席しない、または話し合いで解決しなかった場合には、訴訟によって解決することになります。訴訟をおこない、判決によって強制的に離婚を成立させるためには、離婚理由が存在することが認められる必要がありますが、訴訟中に和解によって離婚が成立することも多数あります。

まとめ

離婚には多大な労力がかかり、離婚訴訟ともなると1年以上にわたるといった長期化する場合もあります。結果的に離婚に至ったとしても、満足な生活費がなく後悔する人も存在します。

さらに、子どもが成人したから離婚に踏み切るという場合でも、やはり子ども本人にとって両親の離婚は好ましいことではありません。また、子どもの側からは両親別々に介護しなければならない、親から生活費の援助を求められるのが嫌といった不満・不安の声もあります。さらに、離婚すると子どもの相続割合が増えることを述べましたが、相続権のない片方の親から相続した資産を分けてほしいと要求され、遺産相続トラブルにつながってしまうなんてことも。現在、熟年離婚を考えている方は、本当に離婚しても1人で暮らしていけるのか、子どもをはじめとした家族が納得できるものかを慎重に考えることが不可欠といえるでしょう。


(執筆編集:NTTファイナンス 楽クラライフノート お金と終活の情報サイト編集部)

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