コラム

【終活カウンセラーに聞く】親の終活、どう切り出す?

この記事の内容



人生の終わりに備えて、資産の整理や日用品の断捨離などを行っていく「終活」。いまやこの言葉も一般的に使われるようになってきました。

子どもの立場から考えると、親に突然もしものことがあったとき「遺産相続のトラブルが起こったら……」「遺品の整理が大変そう……」などさまざまな心配がつきまといますよね。となると、「自分の親にも終活をしてもらえたら、いいのに」と思う方も多いのではないでしょうか。

そこで、「終活カウンセラー」の生みの親である一般社団法人終活カウンセラー協会代表理事の武藤頼胡さんに、親に対してどうやって終活を切り出し、どう進めていくべきか、お話を伺いました。

そもそも終活カウンセラーが考える「終活」とは?

――終活カウンセラーの立場として、武藤さんは「終活」とはどのようなものだとお考えですか?

私たち終活カウンセラー協会では独自に、終活を「人生の終焉を考えることを通じて、自分を見つめ、いまをよりよく自分らしく生きる活動」と定義しています。「いまをよりよく生きる」ために、先にある不安や心配事を元気なうちに解消して、「自分らしく生きましょう」というのが私たちの終活のコンセプトです。

――「自分らしく生きる」というのは、具体的に何をやっていけばいいのでしょうか?

まず、自分らしさとは何かを理解するために、終活ノート(エンディングノート)を書くのをおすすめしています。私たちが考える終活ノートは、亡くなることを念頭に置いたノートではなく、「人生の棚卸しをするためのノート」です。毎年、自分の人生を整理整頓しながら振り返ってもらい、それをノートに記すことで「今年も頑張って生きるぞ」「自分らしく、あるがままに生きよう」という気持ちになるためのものだと思っています。

――「終活」は何から始めるのがよいのでしょうか?

身近なことから始めるのが、大切です。たとえば、「家の中の危険度チェック」が挙げられます。それって終活と関係あるの?と思われるかもしれませんが、私が終活に関する講演をおこなう際に、「100歳まで生きると決まっているとしたら、どんな人生を歩みたいですか?」と聞くと、いつも回答のダントツ1位となるのが「楽しい・生き甲斐のある人生を送りたい」なのです。さらに「これからの人生のなかで一番の心配事は?」と聞くと、1位は「健康・からだ」のこと。そこで、健康を維持するためには家の中の危ないところを再確認することが必要となってきます。

というのは、65歳以上の方が怪我をする場所の7~8割は「家の中」といわれており、家の中にはさまざまな危険が隠れています。じゅうたんや玄関マットにつまずいての転倒や、ベッドから立ち上がる勢いでそのまま転倒など、思いがけない場所での事故も多いという結果も出ています。リフォームなどの大がかりな話ではなく、たとえば「じゅうたん・マットを置かない」「ベッドの横に手を置ける家具を置く」「災害時の避難経路の確認」など、小さなことでもより良く楽しい人生をおくるための第一歩になるでしょう。これもまた人生の整頓であり、終活の一つだと考えています。

終活はひとりで始めようとするとなかなか難しいもの。人にはそれぞれにとっての終活の始め方があります。その一歩目から一緒になって考え、サポートしていくのが終活カウンセラーなのです。

親に終活をすすめた方がいい?

――単に終わるための準備が終活ではないということですね。終活をする世代の方には子をもつ人も多いと思いますが、子どもが親の終活にかかわれるものなのでしょうか?

もちろん、かかわれます。もし、子どもの立場から親に終活をすすめるとしたら「親の人生を知れる」という大きなメリットがありますね。自分の親の人生をくわしく知らない方も多いのではないでしょうか。たとえば、お母さんの名前の由来を知っていますか?お父さんの卒業した小学校は?親子でも離れて暮らしていると、そういった話をする機会がないものです。親子で一緒に終活を始めるなら、まず親子のコミュニケーションから始めていって欲しいと思っています。

――なぜ「親の人生を知る」ことが必要なのでしょう?

親の最期のときに、親の嗜好や思いといった情報が大切になってくるからです。万が一、お葬式の希望を聞けずに亡くなってしまうことがあっても、親の人生を知り、さまざまな思いを聞いておけば「お母さんはこのお花が好きだった」「○○さんと連絡を取ろう」と、希望に添った選択ができることもあります。

私が提唱している「終活で大切な10のこと」のなかには「『ありがとう』といいたい人をリストアップする」「過去に住んだ場所など愛着のある土地を洗い出す」といった項目があります。親と一緒に終活をすることで、おのずと親の人生や人とのつながりがわかっていくでしょう。

武藤さんが提唱する「終活で大切な10のこと」

  • 「ありがとう」と言いたい人をリストアップする
  • 年に一度健康診断に行き自分の体を知る
  • 過去に住んだ場所など愛着のある土地を洗い出す
  • 自分のお金、物の現状を把握する
  • 家族、大切な人と一日3回以上会話する
  • 自分の個性を書き出してみる
  • 「今」そして「未来」の人生に必要なものを選ぶ
  • お葬式、お墓は自分の未来のこと元気なうちに考える
  • 毎年誕生日にエンディングノートを書く
  • 生きてるうちに大切な人に「ありがとう」を伝える

――親が子どもと一緒に終活をするメリットはありますか?

親も年を取れば取るほどに不安や心配事が多くなっていきます。親の立場から考えても、終活を通して子どもと不安・心配事を共有しておくことで、体調を崩したときに「助けて」と伝えやすくなるのではないでしょうか。

親への終活の切り出し方

――「親になかなか終活をどう切り出せばよいのかわからない」と悩む方もいると思います。そうした人へのアドバイスはありますか?

親に終活をすすめるとき、親子のコミュニケーションが取れていない状態で「終活ノートを書いて」といっても上手くはいきません。まずは「お父さんお母さんに元気で長生きして欲しいから、一緒に家のなかの危険度チェックしよう」と話すことから始めてみてはいかがでしょうか。危険度チェックをきっかけに、身の回りの整理や財産整理につながっていくこともあります。

「親に死を意識させたくない」「財産目当てだと思われそう」と、終活を切り出せない方もいらっしゃるかもしれません。そんな方におすすめしたいのは「親と一緒に、自分の終活をしてみてください」ということ。親に終活をすすめるなら、まず自分が終活に取り組み、よかったところや嫌だったところを理解することが大切です。親に終活をしてもらっている人には、自分自身もしっかりと終活に取り組んでいる人が多いと感じます。

――どうしても終活をしたがらない親とはどう接するべきでしょうか?

親にだって意思がありますので、無理に終活をさせなくてもいいと考えています。自分にご兄弟がいるのであれば、もしものときのために兄弟みんなで集まって話しておきましょう。兄弟で話し合えばさまざまな知恵が出てくるかもしれません。それも子どもの立場で考える、親の終活なのです。

親の終活で子どもができること

――親の終活に対して子どもができることの具体例を教えてください。

繰り返しになりますが、親と一緒に終活ノートや楽クラライフノートに終活に必要な項目を記入しては、いかがでしょうか。たとえば終活カウンセラー協会が発行する終活ノート『マイ・ウェイ』(写真)では、「私について」「財産について」など全6章30ページほどの内容ですが、書き進めるのはなかなか大変だと思います。親に「2人で一緒に終活ノートを書いてみよう」と伝えて、話を聞き出しながら、一緒に考えて書き進めてみるのもいいでしょう。

もっとも大事なのはノートを書くこと・項目を埋めることではなく、自分の終活や人生について考えることです。ノートを開きながら、親子でいろいろな会話をして、いままでとこれからの思いや考えを一緒に整理していきましょう。一緒に終活を始めることで、親子の関係が良くなったという報告も耳にしています。相談者の父親と旦那さんが仲良くなり、一緒にゴルフに行くようになったというケースもあります。

――子どもがやってはいけないルールやマナーはありますか?

親のものを自分のものだと思わないことですね。親の人生を尊重して、何か手続きをするときには承認・許可・共有を徹底しましょう。また、親にも触れて欲しくない領域というのがあるものです。一緒に暮らしていない時間が長いほど、その領域は大きくなっていきます。そこで必要なのは、やはりコミュニケーション。小さいころ良く遊んでいたこととか、名前の由来とか、どんな音楽が好きだったとか、具体的な会話でコミュニケーションを取りながら進めていくのがいいでしょう。

親子で一緒に終活を進めよう

終活とは、あくまでも「これからの人生を、より良く生きるため」のものです。親に終活をすすめることは、決して親を嫌な気持ちにさせることではなく、親のこれからの人生をより良くするためのものだとご理解いただけたと思います。

遺産や遺品の整理、親の心配事の確認など子どもの立場でできることもたくさんあります。コミュニケーションを密に取りながら一緒に終活ノートを書き、親とともに終活を進めていくことは「親のこれまでの人生を知り、これからの人生についてともに考えていくこと」なのです。

親の終活についてまだ悩みがあるという方は、今回お話を伺った武藤さんのような終活カウンセラーに相談してみることも検討してみてはいかがでしょうか。


(執筆編集:NTTファイナンス ライフノート編集部 情報は2021年9月21日時点のものです。)

この記事を監修した人
武藤 頼胡

1971年生まれ。一般社団法人終活カウンセラー協会 代表理事。終活カウンセラーの生みの親、「終活」という考えを普及するべく全国の公民館や包括センター(行政)での講演を年間200回以上行い、日本の高齢者を元気にする活動に励む。テレビ、新聞、雑誌などメディアへの掲載多数。

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