基礎知識

年金にも税金がかかります|控除と課税対象は?

この記事の内容

買いものをするたびに課税される消費税や、居住する自治体から徴収される住民税など、日本ではさまざまな税金を納めなければなりません。仕事をして得た収入に対しては収入額に応じて所得税がかかりますが、年金を受け取るようになったとき、所得税の扱いはどうなるのか不安に感じている方も多いのではないでしょうか。

そこで今回の記事では、年金にはどのような形で税金がかかるのか、控除はいくらなのかを紹介します。また、年金をもらいながら仕事をしているケースなども含めてくわしく解説します。

年金に関する税金の基本的考え方

ひと口に年金といっても、老後に受給する「老齢年金」と、病気やケガによる障害が認定された場合に受給できる「障害年金」、そして生計維持者が亡くなった場合に一定の条件の下で受給できる「遺族年金」があります。これらはいずれも「公的年金」にあたり、障害年金および遺族年金については非課税ですが、老齢年金のみ一定額以上を受給した場合に「雑所得」とみなされ、所得税の課税対象となります。

ちなみに、年金と税金の関係で抑えておかなければならないのが「公的年金等」という言葉です。これには、以下の3つの年金がすべて含まれます。

  • 国民年金法・厚生年金保険法・公務員等の共済組合法などによる年金

  • 企業年金

  • 外国の公的年金

「老齢年金は一定額以上を受給した場合に所得税の課税対象となる」と紹介しましたが、上記で挙げた3つの「公的年金等」による収入のうち、課税対象となるのは次の場合に限られます。

  • 65歳未満:108万円以上

  • 65歳以上:158万円以上

上記の課税対象となる場合、年金額から各種控除を差し引き、プラスとなる場合はその額に税率(一般的には5.105%)をかけて算出された金額を所得税として納めなければなりません。

所得税=(年金額ー各種控除)×税率(一般的には5.105%)

なお、原則的に年金にかかる所得税は源泉徴収がされています。

年金をもらいながら仕事をしていたら税金はどうなる?

年金への課税には「年金受給者のための確定申告不要制度」があり、以下の2つの条件を満たしている場合に限り確定申告をおこなう必要はありません。

  1. 年金による収入が400万円以下

  2. 年金以外の所得合計額が20万円以下

しかし、老齢年金だけでは生活費を賄うことが難しく、年金をもらいながら再雇用やアルバイトなどで給与所得を得る方も少なくありません。このような場合、一般の会社員と同様に所得税が源泉徴収され、年末調整がおこなわれます。ただし、年末調整の対象となるのは、再雇用先やアルバイト先で得られる給与所得のみであり、年金は雑所得として確定申告をしなければなりません。

なお、上記の2つ目の条件にある「所得合計額」とは、収入金額から必要経費を差し引いたものになります。たとえば、自営業者として売上が50万円あったとしても、経費で35万円かかっている場合には所得金額が15万円であり、確定申告は不要となります。しかし、再雇用やアルバイトとしてフルタイムで働き給与を得ている場合には、控除を鑑みても所得が年間20万円以上となるケースが多いと思われ、そのような方は確定申告の対象になります。

給与所得と年金の場合は双方で源泉徴収がされているため、確定申告において所得税の納付は必要ないか、還付されるケースが多いでしょう。一方、事業所得を得ている自営業者などの場合は、確定申告で正しく所得税を納付する必要があります。

年金と確定申告についての詳しい内容については、以下の記事でも紹介しているため参考にしてみてください。

くわしく知りたい方はこちら(※年金 確定申告へリンク)

年金にかかる各種控除

年金に課税される所得税は、「年金額から各種控除を差し引いた額に5.105%を掛けて算出する」と紹介したとおり、控除額が大きくなればなるほど所得税額が減ることになります。では、各種控除とはどのようなものがあるのでしょうか。

公的年金等控除

公的年金受給者であれば全員が受けられる控除です。給与所得者の基礎控除に相当するのが公的年金控除で、年齢および収入金額に応じて控除額も変動します。年金以外の所得が年間1,000万円未満の場合、公的年金等控除は以下のとおり計算されます。

65歳未満

年金額

公的年金等控除額

60万円超130万円未満

60万円

130万円以上410万円未満

年金額×25%+27.5万円

410万円以上770万円未満

年金額×15%+68.5万円

770万円以上1,000万円未満

年金額×5%+145.5万円

1,000万円以上

195.5万円

※公的年金等の収入金額の合計額が60万円までの場合は、所得金額はゼロとなる

65歳以上

年金額

公的年金等控除額

110万円超330万円未満

110万円

330万円以上410万円未満

年金額×25%+27.5万円

410万円以上770万円未満

年金額×15%+68.5万円

770万円以上1,000万円未満

年金額×5%+145.5万円

1,000万円以上

195.5万円

※公的年金等の収入金額の合計額が110万円までの場合は、所得金額はゼロとなる。

配偶者控除

控除対象の配偶者がいる場合、配偶者の年齢に応じて控除額が変わります。ただし配偶者控除を受けるには、年金を受け取る人の合計所得金額が1000万円以下で、配偶者の合計所得金額が48万円以下(収入が給与のみの場合はその収入額が103万円以下)となっている必要があります。

  • その年の12月31日時点で70歳未満の配偶者がいる場合:38万円

  • その年の12月31日時点で70歳以上の配偶者がいる場合:48万円

なお、納税者本人の合計所得金額が1,000万円を超える場合は、配偶者控除は受けられません。また、納税者本人の合計所得金額が900万円超1000万円以下の場合、控除額が減額されます。

また、配偶者控除の対象とならない場合(配偶者の年間所得が48万円超)でも、「配偶者特別控除」が受けられます。

扶養控除

その年の12月31日時点で16歳以上の扶養親族がいる場合、1人あたり38万円の扶養控除が受けられます。

特定親族扶養控除

その年の12月31日時点で19歳以上23歳未満の控除対象扶養親族がいる場合、1人あたり63万円の特定親族扶養控除が受けられます。

老人扶養親族控除

その年の12月31日時点で70歳以上の控除対象扶養親族がいる場合、1人あたり48万円の老人扶養親族控除が受けられます。また、納税者またはその配偶者の直系尊属と同居している場合、58万円の控除となります。

障害者控除

本人または控除対象配偶者、扶養親族のいずれかが障害状態にある場合、1人あたり27万円の障害者控除が受けられます。

特別障害者控除

本人または控除対象配偶者、扶養親族のいずれかが障害の程度が1級又は2級の方など、重度の障害があると判断されれる方は、1人あたり40万円の特別障害者控除が受けられます。

同居特別障害者控除

特別障害者である控除対象配偶者または扶養親族と同居している場合、1人あたり75万円の同居特別障害者控除が受けられます。

医療費控除

年間で10万円以上または所得金額が200万円以下で所得金額の5%以上の医療費を支払っている場合には、確定申告をおこなうことで医療費控除が受けられます。ただし、年金を含めた所得金額が200万円未満で、医療費の年間負担額が所得金額の5%を超えた場合は確定申告をおこなうことで還付を受けられる場合もあります。

生命保険料控除

生命保険料や介護医療保険料、または個人年金保険料を支払っている場合、年間の支払保険料に応じて一定の生命保険料控除(最高で12万円)が受けられます。控除額は以下のとおりです。

新契約(2012年1月1日以降に締結した保険契約等)

年間の保険料

控除額

20,000円以下

支払保険料の全額

20,000円超40,000円以下

支払保険料×50%+10,000円

40,000円超80,000円以下

支払保険料×25%+20,000円

80,000円超

一律40,000円

旧契約(2011年12月31日以前に締結した保険契約等)

年間の保険料

控除額

25,000円以下

支払保険料の全額

25,000円超50,000円以下

支払保険料×50%+12,500円

50,000円超100,000円以下

支払保険料×25%+25,000円

100,000円超

一律50,000円

地震保険料控除

地震保険料を支払っている場合、年間の支払保険料に応じて一定の地震保険料控除が受けられます。控除額は以下のとおりです。

区分

年間の支払保険料の合計

控除額

(1)地震保険料

50,000円以下

支払金額の全額

50,000円超

一律50,000円

(2)旧長期損害保険料

10,000円以下

支払金額の全額

10,000円超

20,000円以下

支払金額×1/2+5,000円

20,000円超

15,000円

(1)・(2)両方がある場合

(1)、(2)それぞれの方法で計算した金額の合計額(最高50,000円)

社会保険料控除

社会保険料を支払った場合、社会保険料控除が受けられます。生計を一にする親族が負担すべき社会保険料を支払った場合も控除を受けることができます。

その他の控除

所得税に関して設けられている控除にはこのほかにも「ひとり親控除」「雑損控除」「勤労学生控除」などがあります。そのなかでも、とくに年金受給者に関連するものとして、寡婦控除と寄付金控除が挙げられます。

寡婦控除は次の1または2のいずれかに該当し、年金受給者本人の所得の見積額が500万円以下の場合に該当します。

  1. 以下の(1)・(2)のどちらかに該当し、扶養親族(子以外)のいる人
    (1)夫と死別・離婚した後、婚姻していない人
    (2)夫の生死が明らかでない人

  2. 以下の(1)・(2)のどちらかに該当し、扶養親族のいない人
    (1)夫と死別した後、婚姻していない人
    (2)夫の生死が明らかでない人

寄付金控除は、ふるさと納税などの寄付がある人が対象です。ただし、65歳以上で年金収入の金額が150万円以下の場合は、控除額が0円となってしまいます。

年金受給者も税金を納めなければならない場合がある

年金を受給する方のなかには、条件に応じて課税対象ではなかったり、確定申告が不要なケースも存在します。しかし、老後の生活資金に余裕がなく、パートやアルバイトをしたり自営業で仕事を続けながら年金を受け取る方も少なくありません。そのような場合、所得金額によっては確定申告で所得税を納めなければならない可能性があります。一方で、この記事で紹介した各種控除、とくに多額の医療費を負担し医療費控除が受けられる方などは、確定申告をすることによって還付されることもあります。

しかし、会社勤めをしていたときは確定申告の経験が少なく、どのような手続きをすればよいのかわからず不安に感じる方も多いでしょう。税務署では納税に関するさまざまな相談に乗ってくれるほか、確定申告シーズンになると地域の税理士会が無料相談をおこなうケースもあるため、ぜひ活用してみてください。


(執筆編集:NTTファイナンス ライフノート編集部 情報は2021年9月29日時点のものです。)

この記事を監修した人
増田浩美税理士事務所 代表 増田浩美

大学3年生で税理士を志し、約5年の試験勉強を経て、 25歳で税理士試験合格。 約3年間、地元中堅税理士法人に勤務し、28歳で独立開業。 開業後は、個人事業主、零細・小企業を中心に顧客を増やし、 現在は、相続税申告・相続税対策などの資産税にも力を入れ、 相続手続きを中心業務とするあいリーフ行政書士法人の代表も務め る。 仕事の傍ら2人の子供の育児にも奮闘中。https://www.zeimukaikei.jp

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