コラム

2022年からスタートした新年金制度|4つのポイントを解説

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この記事を監修した人
金子賢司(かねこけんじ)

東証一部上場企業で10年間サラリーマンを務める中、業務中の交通事故をきっかけに企業の福利厚生に興味を持ち、社会保障の勉強を始める。以降ファイナンシャルプランナーとして活動し、個人・法人のお金に関する相談、北海道のテレビ番組のコメンテーター、年間毎年約100件のセミナー講師なども務める。趣味はフィットネス。健康とお金、豊かなライフスタイルを実践・発信しています。 <保有資格>CFP

公式ホームページ https://fp-kane.com

この記事をおすすめする人

現在年金を受給している・これから受け取る予定の方


この記事のポイント

  • 働きながら受け取れる年金額が増加
  • 65歳以上は在職中でも、年1回年金額が増えるようになった
  • 受取開始の繰り下げ可能年齢が75歳まで拡大された


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シニアの生活を支えてくれる年金。この2022年新しい年金制度がスタートしたことを、ご存じでしょうか。新しい制度では、働きながらもらえる年金額がいままでより増える、65歳以降も働き続ければもらえる年金額が増える、などの点が従来の制度から変更されました。

この記事では、2022年からの新しい年金制度について解説します。

新しい年金制度のポイント

今回の制度改正は、2020年5月に「年金制度改正法」が成立したことによるもので、以下の4つのポイントが大きく変化しました。

  • 在職老齢年金制度の見直し

  • 在職定時改定が新設

  • 繰り下げ可能年齢が75歳まで拡大

  • 確定拠出年金に関する制度改正


変更の概要は、以下のとおりです。


2022年3月以前
2022年4月以降

在職老齢年金制度

(低在老)

賃金と年金受給額の合計が月額28万円をこえると、年金の全部または一部が支給停止
年金支給が停止される基準となる額が、月額47万円に引き上げ
在職定時改定

新設
繰り下げ可能年齢
70歳まで繰り下げ可能
75歳まで繰り下げ可能
確定拠出年金

・企業型DCの加入可能年齢は65歳未満

・iDeCoの加入可能年齢は60歳未満

・受給開始年齢は60〜70歳のあいだ

・企業型DCの加入可能年齢は70歳未満に

・iDeCoの加入可能年齢は65歳未満に

・受給開始年齢は60〜75歳のあいだに拡大

ここから、4つのポイントについてどのような変更が加えられたのか、一つずつ詳細を解説していきます。

在職老齢年金制度の見直し

それでは改正されたポイントの詳細に触れていきます。まずは、在職老齢年金制度の見直しについてです。

在職老齢年金制度とは、働き続けながら年金を受給している場合に、年金の一部を支給停止する制度のこと。なかでも今回の見直しの対象となるのは、60歳から65歳未満の方に適用される在職老齢年金、通称・低在老(低所得者在職老齢年金)です。

改正以前は、60歳から65歳未満の方について賃金と年金の合計額が28万円をこえると、年金の全部または一部が支給停止となっていました。これが、2022年4月からは年金支給停止の基準額が「47万円」に引き上げられ、この額をこえなければ支給停止がおこなわれないようになります。

(65歳以上の方に適用される在職老齢年金、通称・高在老(高年齢者在職老齢年金)については、従来の制度と変わらず47万円が年金支給停止の基準額となります。)

つまり、働きながらもらえる年金額がいままでよりも増えるということです。これには、シニアの就労意欲を高めるねらいがあります。

(参照:日本年金機構「在職中の年金(在職老齢年金制度)」2022年)

在職定時改定

在職定時改定とは、今回の制度改正によって新設された厚生年金に関する仕組みです。

従来は、65歳以上の厚生年金被保険者の年金額が改定されるのは、「資格喪失時(会社を辞めたとき、もしくは70歳になったとき)」のみでした。つまり、65歳以上で働き続け、なおかつ厚生年金保険料を支払い続けていても、すぐには年金額が増額されない仕組みであったということです。

これが、在職定時改定の新設によって、退職時の改定まで毎年10月に「前年9月から当年8月までに納めてきた保険料」が年金額に反映されることになりました。当然、働き続けていれば(年金保険料を納め続けていれば)その分の年金額が増えます。標準報酬月額が20万円の方の場合、1年間働けば年間1万3000円程度の年金額の増額となります。

こちらも低在老の条件緩和と同様に、シニアの就労意欲向上を目的としたものです。

(参照:日本年金機構「令和4年4月から在職定時改定制度が導入されました」2022年)

繰り下げ可能年齢が75歳まで拡大

これまで年金の受給開始時期は60歳から70歳のあいだで希望する時期を選択でき、65歳から繰り下げた月数が多くなるごとに年金の受給額も増えることは、ご存じの方が多いと思います。

今回の制度改正では、昭和27年4月2日以降生まれの方・または受給権取得日から5年が経過していない方を対象に、この繰り下げの上限年齢が75歳まで引き上げられました。
もし限度いっぱいの75歳まで受給年齢を繰り下げると、65歳から受給するより84%受給額が増額されます。
(参照:日本年金機構「令和4年4月から老齢年金の繰下げ受給の上限年齢が75歳に引き上げられました」2022年)

また同時に、受給開始時期を早める「繰上げ受給」をおこなった場合の年金減額率も見直されました。(昭和37年4月2日以降生まれの方が対象です。)
改定後の減額率は1月あたり−0.4%で、60歳まで繰り上げる場合は、65歳から受給するより24%の減額となります。
(参照:日本年金機構「令和4年4月から老齢年金の繰上げ減額率が見直されました」2022年)

確定拠出年金に関する制度改正

国民年金や厚生年金に加えて、老後の経済基盤をより強くしてくれる確定拠出年金。この確定拠出年金に関しても制度改正がなされました。

大きなポイントとして次の3つが挙げられます。

  • 加入可能年齢の拡大(2022年5月から)

  • 受給開始年齢の上限引き上げ(2022年4月から)

  • 中小企業向け年金制度・個人型確定拠出年金(DC)の加入対象拡大(2022年10月から)

(参照:厚生労働省「2020年の制度改正」最終アクセス 2022,03,15・厚生労働省・国民年金基金連合会「確定拠出年金制度が改正されます」2021年)

加入可能年齢の拡大

従来の企業型DCの加入可能年齢は65歳未満でした。しかし働くシニアが増えたことを背景に制度改正が行われ、2022年5月からは70歳未満の方まで加入できるようになりました。(企業によって条件が異なります。)

また、iDeCoの加入可能年齢はこれまで60歳未満でしたが、65歳未満まで拡大されています

受給開始時期の上限が75歳に引き上げ

企業型DCとiDeCoの老齢給付金の受給開始時期にも、変更があります。

従来の確定拠出年金の受給開始時期は、60歳から70歳のあいだで加入者が決定していました。これが、上限が引き上げられ「60歳から75歳」のあいだと選択の幅が広くなっています。

こちらも、働くシニアが増えているなかで柔軟な年金受給を目指すものとなっています。

中小企業向け年金制度・個人型DCの加入対象拡大

中小企業には、「簡易型DC」「iDeCoプラス」と呼ばれる企業年金制度があります。従来はこれらの加入条件が従業員100人以下規模の企業となっていたものが、制度改正によって従業員300人以下規模まで拡大されています。

また、従来は企業型DCに加入している人がiDeCoに並行して加入するためには、労使合意が必要とされていました。今回の制度改正では、2022年10月以降は原則として個人の意思によって企業型DCとiDeCoへの同時加入ができるようになっています。(ただし、企業型DCの事業主掛金とiDeCoの掛金の合計学が一定額をこえる場合、企業型DCにおいて加入者掛金を拠出している場合などは例外となります。)

その他の改正点

以上の4つのポイントは、おもに被保険者(年金保険料を払い、年金を受けとる人)の視点から見た改正の大きなポイントです。

一方、企業側から見た大きな改正点も存在します。それは、社会保険(厚生年金・健康保険)の加入義務がある企業が拡大された点です。

従来は、短期間労働者(アルバイト・パート)の社会保険への加入が義務づけられていたのは、従業員が常時501人以上の事業所でした。これが、年金制度改正法の施行によって2022年10月から「従業員が常時101人以上の事業所」に対象が拡大されます。さらに2024年10月からは「従業員が常時51人以上」にまで適用基準が引き下げられる予定です。

(参照:日本年金機構「令和4年10月からの短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用の拡大」2021年, 最終アクセス 2022,03,15)

自分自身の生き方・働き方を考えてみよう

年金制度改正法の施行に先立つこと1年前の2021年4月に、改正高年齢者雇用安定法が施行されました。この法律では、企業に65歳定年を義務づけるとともに、70歳定年制や定年廃止などの努力義務が設けられています。

こうした長く働くための仕組みづくり、そして年金制度の改正をどう受け止めるかは、みなさんそれぞれが置かれている環境や「生き方・働き方をどうするか」の判断によって変わってくることでしょう。

まずは、ご自身がお勤めの会社の雇用制度がどうなっているかを確認することが第一歩となりそうです。そのうえで、シニア世代となってからどう働くか、いつから年金を受給するかを考えてみてはいかがでしょうか。


(執筆編集:NTTファイナンス 楽クラライフノート お金と終活の情報サイト編集部)

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