コラム

【FPが寄稿】老後破産してしまう人の共通点

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この記事の内容

この記事を監修した人
宮里 恵

M・Mプランニング 代表 https://www.mm-fp.net  

保育士・営業事務の職を経て、ファイナンシャルプランナーに。

主婦としての経験と女性の目線で独身世代から子育て世代、定年後の方まで幅広くアドバイスしている。

相談件数1000件以上15年目。

家計相談、保険見直し相談、資産運用、教育資金・老後資金相談、住宅ローン相談、相続対策、女性の働き方相談などお金に関する相談をうけている。

個別相談を主に行っているが、3か月に1回程度でマネーセミナーを実施。

お金や保険に関する記事の監修作業などもしている。

この記事をおすすめする人

これから老後の生涯設計を考えたい方


この記事のポイント

  • シニア世代になってから破産してしまう人が増えている
  • 現役世代から貯蓄がない、ローンが残っている人は要注意
  • あとに備えてきちんと残しておくことが重要である


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アクティブシニアという言葉に代表されるように、近年では老後も仕事や趣味を楽しむ明るいシニアの姿がクローズアップされるようになりました。一方で、暗い現実もあります。その一例といえるのが、さまざまなメディアで取り上げられる「老後破産」といえるでしょう。

老後破産はなんとしても避けたいものですが、そのためにはどんな人が破産してしまい、破産するとどういった生活になるのかといった実態を知ることが必要といえるでしょう。そこで、ファイナンシャルプランナーの宮里恵さんに老後破産寸前となった人の実例、老後破産する人の共通点などを寄稿していただきました。この記事を参考に、ご自身のマネープランをぜひ検討してください。

老後破産の実例

はじめまして、ファイナンシャルプランナーの宮里恵と申します。

この記事では、ファイナンシャルプランナーの目から見た老後破産について記していきますが、その前にみなさんはどれくらいの人が老後破産してしまっているか、ご存じでしょうか?

日本弁護士連合会がまとめた「2017年破産事件及び個人再生事件記録調査」という資料があります。2017年の時点で、破産した人のうち16.4%が60代、7.51%が70代以上という結果となっています。これだけでも、破産してしまうシニアの割合が多いことを実感できますが、より問題なのが破産者のうちシニアの占める割合が長期的に見て増えている点です。

60代は2000年=12%、2002年=14.23%、2005年=14.2%、2008年=12.54%、2011年=17.5%、2014年=18.71%。70代以上は2000年=3%、2002年=2.73%、2005年=3.05%、2008年=3.93%、2011年=5.02%、2014年=8.63%となっているのです。1997年時点での60代以上のシニアの破産者は全体の1割をすこしこえる程度だったのが、2014年には破産者の4人に1人はシニアという数字です。破産、と聞けばクレジットカードの利用で浪費してしまった若者や事業に失敗した経営者を思い浮かべる人もいるかもしれませんが、何らかの理由で生活が困窮してしまうシニアが結構な数おり、決して珍しくない存在であるのをご理解いただけると思います。

 当然、ファイナンシャルプランナーという仕事をしていると、生活が苦しい、とお話されるシニアの方と出会うこともあります。そこで、続いては老後破産寸前となってしまっている人の実際の事例を、ご本人のプライバシーを害さないよう配慮したうえでご紹介します。

その方は現役時代、公務員でした。現役時代の仕事は順調で、比較的多くの収入を得ていた方です。そんな方が、定年退職後、私に次のように相談に来られました。

「年金生活がはじまったのに、妻の支出が現役時代と変わらないんです。どうしたらいいでしょうか?」

お話を伺っていると、現役時代は収入が高い割には預貯金がすくなく、退職金はある程度あるものの、いままでの支出をしていたのではこの退職金もすぐ使い果たしてしまうのでないかという不安がありました。

そこで、私は現在から10年、20年、30年先の収入と支出を記したキャッシュフロー表をつくり、いまのままの支出を続けていた場合、老後破産してしまう可能性をご夫婦に説明し、併せて老後破産しないための具体的な支出額も示しました。すると、夫人からは、

「わかりました。この金額で暮らすように頑張ります」

との答え。本当に支出額を守ってもらえるかという若干の不安はあったものの、ひとまず危険な状態であるのを夫人に理解いただけたことに、安心しました。

それから数年後、再びあのシニアにお目にかかりました。開口一番、出た言葉が、

「もうほとんど貯金が残っていないんです」

聞けば、支出の金額は以前とあまり変わっていませんでした。預貯金が減ってしまったため、いまではリバースモーゲージによって借入も検討しているそうです。

老後破産する人の共通点

以上のケースは、だれでも陥りやすいといえます。現役時代の収入がいくら多くても、貯蓄をしていない、シニアになっても支出に対する感覚を変えられない、というのは決して珍しいケースではないのです。そこで、老後破産する人に共通していえることを解説します。

現役世代から貯蓄がない人。収入をそのまま支出に使うタイプの人

現役世代から収入に対してメタボ家計の方は、将来のために増やすお金に回すことが少なく、いわば貯蓄ができないというタイプです。

ある程度年収が高くても、もらえる年金額は決まっているため、その範囲内での支出ができず、退職金をもらったとしても使い果たしてしまうというケースもあります。

年金生活になってもローンが残っている人または家賃がある人

現役世帯の収入に比べると、年金額はどうしても少なくなります。もちろん、ボーナスもありませんよね。

そのため、できれば年金受給前に住宅ローンや車のローンは払い終えてしまいましょう。

そうはいっても、ずっと賃貸という方もいらっしゃると思います。

賃貸であれば当たり前ですが家賃はずっと発生しますので、持ち家の方よりも老後の備えは必要になります。

子どもに教育資金をかけすぎる

子どもの人数にもよりますが、あまり教育費などにお金をかけすぎると、せっかく貯めた老後資金が大きく削られるということもあります。

計画的に、教育費と老後資金を別に分けて用意することが必要になります。

結婚をしていない。または離婚している

結婚をしていてそのままシニアになると、2人分の年金が入ってきます。

反対に、独身で1人分の年金が唯一の収入となると日々の支出額に対して不足が出てくる可能性があります。したがってそれなりの準備が必要です。結婚している人でも、離婚で年金額が減る場合もあります。離婚する場合は、婚姻期間中の厚生年金納付額を2人で分けられる「年金分割制度」を利用しましょう。

自営業などそもそも国民年金しかない人、非正規雇用の人

公的年金は2階建て構造になっていて、1階部分が国民年金(老齢基礎年金)、2階部分が厚生年金(老齢厚生年金)です。

1階部分の国民年金は、20歳から60歳になるまで40年間保険料を納付した場合、満額の年額約78万円(令和2年度時点)を原則として65歳から老齢基礎年金として受け取ることができます。

もちろん、納めていない年数がある場合はその分減額されるということになります。

これに、2階部分の老齢厚生年金がありますが、そもそもこの2階部分がない人、または厚生年金の期間があっても年数が少ない、年収が少ないなどで年金額が少ない人もいます。

自営業者は老後も働けますが、あくまでも健康状態がよく仕事も継続できる場合なので、万が一のときのための備えが必要になります。

老後に家計が危うくなる前にしておくべきこと

以上の共通点に当てはまる人は、注意が必要です。また、当てはまらないという場合でも、預貯金をできるだけ多くして老後に備えておくに越したことはありませんし、シニア世代となってからは支出に対する感覚を現役世代のころ以上に厳しくしなければなりません。

そこで、家計が危険な状態とならないための準備についてここで記します。

現状の支出を見直すこと

現役世代の人は、老後の家計を考える前に現在の家計の状況を把握しましょう。

家計簿をつけていない方は、1か月でいいので生活費の内訳を書き出してみましょう。

削れるところがあれば見直して、浮いたお金を将来のための老後資金に回します。 

働く期間を延ばすこと

平均寿命が延び、90歳、100歳まで生きる人が多くなると、従来のように60代半ばまで働いても、それから先の老後の生活は30年以上続くことになります。

公的年金と蓄えた資産が頼みの綱ですが、たとえば2000万円の蓄えがあっても、公的年金では足りずに年間100万使っていては、20年で底をついてしまいます。

一方、すこしでも長く働いて、公的年金で足りない分、上記で言えば100万円程度の収入があれば2000万円の蓄えに手を付ける時期を遅らせることができます。

資産寿命を延ばすこと

気づいたときからでも遅くないので、老後のための資金をできるだけ多く準備しておくことが必要になります。基本的には、すこしでも早く毎月一定の金額を老後資金として積み立てること、そしてできるだけ長く続けることが大切になります。

しかし、現在のように低金利の預貯金の積立では資産を増やしていくことは難しいと思う方もいるでしょう。

そうした場合は、つみたてNISAや個人型確定拠出年金(イデコ)を利用することも検討してください。

運用中の収益が非課税になるため、効率的に資産を増やすことができます。 

繰り下げ受給で年金額を増やす

老齢年金は生きている限りお金を受給できる制度です。自分の寿命がわからないから何ともいえないということもありますが、上記のようにできるだけ長く働き、年金受給も繰り下げ受給を検討すると資産寿命をより延ばせます。老齢年金を65歳で請求せずに70歳まで繰り下げた場合は、65歳で受給するよりも42%年金額が増額されます。繰り下げには、老齢基礎年金の繰り下げと老齢厚生年金の繰り下げがあり、どちらかのみ繰り下げをするということもできます。もちろん、両方とも繰り下げることも可能なので、老後に年金以外の収入が確保できる場合はぜひ検討してください。

もし老後破産してしまったら

ここまで記してきたように、老後破産を防ぐためにはお金と心の準備が必要です。それでも、家計の収支のバランスを保てずに破産、あるいは破産に近い状況になってしまったら、どうすべきなのでしょうか?

まず、さまざまな課題を抱え生活に困窮する方のために、生活困窮者自立支援制度があります。生活全般にわたる困りごとの相談窓口が全国に設置されています。支援項目としては、就労支援・就労準備支援、家計改善支援、住居確保給付金、一時生活支援などになります。

それでも難しい場合は、頼れるのであれば家族・親族に支援を要請することを検討してください。後述する生活保護の相談をしに行政を訪れても、行政側が親族に援助が受けられないかを書面や電話で確認する「扶養照会」がおこなわれる場合がほとんどです。本来、扶養照会は行政に課せられた義務ではなく最近ではこの行程に対する世論からの批判も起こってはいますが、福祉行政の現場ではまだまだおこなわれているのが実情です。気心の知れた親族がいる、生活保護の前に行政から扶養照会をされて気まずい思いをしたくない、という人は家族・親族からの支援を考えてほしいと思います。

どうしても頼れるあてがない場合には、迷わず生活保護の受給に踏み切りましょう。シニア世代のなかには行政の支援に頼るのを恥と受け止める人もいるかもしれませんが、生活保護は憲法や法律で定められた人間がすべき最低限度の生活を保証するための制度であり、国民の権利です。また、厚生労働省の調査では2021年7月時点で生活保護を受けている人は200万人以上に上り、国民の1.63%が受給しています。街なかで100人の人とすれちがったらそのうち1人か2人は生活保護を受給していると考えれば、躊躇する気持ちもすこしは和らぐのではないでしょうか。最初から生活保護の受給を行政に相談するのは気が引ける場合には、市区役所・町村役場の福祉関連の窓口に「民生委員を紹介してほしい」と要請する方法もあります。民生委員とは、介護や子育て、経済的困窮に関する相談相手として行政が任命している人のことです。当然、老後破産した人、老後破産寸前の人の相談にも乗ってくれます。

老後破産は当然、だれもが避けたいと思うはずです。その思いを現実にするためには、やはり心とお金の備えが必要です。一方で、もし経済的に困窮したときに支えとなる仕組みがあることも知っておいたほうがよいといえるでしょう。もちろん、私たちファイナンシャルプランナーも老後破産を防ぎたい多くの人の相談に乗っています。

まとめ

ファイナンシャルプランナーである宮里さんのリアルな老後破産の実態、みなさんはどうお感じになられましたでしょうか。「老後破産する人の共通点」で書かれているように、貯蓄する習慣がない人や住宅ローンがのこっている人などは、とくに注意が必要といえるでしょう。そうでなくても、退職金の多くを事業や投資にあててしまうなどをせず、あとに備えてきちんとのこしておくのが大切です。

また、老後破産を避けるためには知識を身につけることも必要となります。宮里さんのようなファイナンシャルプランナーに相談するのも、そうした知識を身につけるための手段の一つといえるでしょう。


(執筆編集:NTTファイナンス 楽クラライフノート お金と終活の情報サイト編集部)

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