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世帯分離とは?手続き方法やメリット・デメリットを徹底解説
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この記事の内容
ファイナンシャルプランナー(CFP®認定者)、相続手続きカウンセラー。
大手金融機関での営業や企業の経理など、お金に関する仕事に約30年従事。
43歳のとき乳がんを発症し、誰にも言えない悩みこそ誰かを頼るべきことだと気づく。
2015年2月金融商品を販売しないFP事務所を開業。
主に子どものいない方、がんなど病気を抱えている方、医療従事者の「お金に関する相談」、「残さない終活プランニング」、講演を行っている。
この記事をおすすめする人 現在親世帯と住民票を1つにしている方 この記事のポイント
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シニア世代と現役世代が同居されているご家庭の場合、住民票上では親子が同一の世帯に入っているケースもあると思います。
一方、このように同居を続けながら、住民票上の世帯は分ける「世帯分離」ができることをご存じでしょうか。
この記事では、なぜ世帯分離という仕組みがあるのか、世帯分離することのメリット・デメリット、手続きについて紹介します。
世帯分離とは
世帯分離とは、現在、住民票上で一つとなっている世帯を二つの世帯に分離させることです。
一つの家に住んでいたとしても、収入や日常生活でかかる支出は親世代・子世代それぞれで別に管理している場合があります。こうして「生計を分ける」ことを住民票のうえで明確化するために、世帯分離の仕組みがあります。
後述するように、世帯分離によって介護費用や国民健康保険料を軽減できる可能性があります。ただし、役所・役場の窓口で世帯分離の手続きをするとき、こうした費用軽減を理由としてしまうと、本来の趣旨に沿わないとして受理されないケースがあるので注意しましょう。世帯分離の目的や理由は、あくまでも「生計を分けること」と覚えておいてください。
世帯分離のメリットとデメリット
世帯分離のメリットは、介護や国民健康保険の費用負担を軽減できる可能性があること。一方、デメリットは手続き上の負担が増える点です。くわしく解説します。
世帯分離のメリット
世帯分離によってとくに大きな効果があるのが、介護費用です。
介護保険制度では、世帯の所得に応じて介護費用の自己負担額が決まります。つまり、親世代と子世代が同一の世帯になっていると、現役で働いている子世代の所得によって世帯の合計所得金が高くなり、自己負担の割合が高くなる可能性があるのです。
同様に、介護費用の自己負担額の上限も世帯の所得によって変化するため、世帯分離によって自己負担割合と上限額をどちらも下げられるケースがあります。
また、場合によっては国民健康保険料の負担も軽減できるかもしれません。国民健康保険料は「前年の所得」と「被保険者の人数」に応じて決まるため、世帯分離によって世帯の所得が下がれば保険料も下がる可能性があります。
世帯分離のデメリット
親世代も子世代も国民健康保険に加入している場合、同一世帯時には一緒に保険料を支払えるものの、世帯分離をすると世帯ごとに別々で支払わなければならなくなります。とくに、銀行口座からの引き落としを選択している人は、世帯分離時に親(あるいは子)の引き落とし口座を届け出るのを忘れないようにしましょう。
世帯の中に介護が必要な人が2人以上いる場合、同一世帯であれば、介護における利用費用を合算して払い戻しの申請ができますが、世帯分離することにより、世帯合算できなくなります。
また、役所・役場での手続きも、同一世帯時より煩雑になります。たとえば、足腰の弱い親の代わりに子が住民票の写しを役所へ受けとりに行く場合、同一世帯ならば問題なく親の住民票を受けとれますが、世帯分離すると「委任状」が必要となります。
さらに、子どもが会社勤めで扶養手当や介護手当を受けとっていると、世帯分離によって手当が出なくなるケースもないとはいえません。あらかじめ会社の就業規則を確認するか、総務などの担当部署に問いあわせるとよいでしょう。
世帯分離で軽減できる可能性がある費用
ここまで述べたように、世帯分離によって介護費用や国民健康保険の費用負担を減らせる可能性があるほか、後期高齢者医療制度保険料も下がる可能性があります。
介護費用
介護保険制度では、介護費用の自己負担割合が世帯の合計所得金額に応じて1割・2割・3割と区分されています。年金収入とそれ以外の所得の合計が多いほど自己負担割合も増えます。同一世帯時には介護保険の自己負担割合が3割だった人が、世帯分離によって収入が年金のみとなり1割負担となることもあり得るのです。
また介護費用の自己負担上限額(月額)は、次の6段階に区分されます。
区分 | 負担の上限額(月額) |
課税所得690万円(年収約1160万円)以上 | 14万100円(世帯) |
課税所得380万円(年収約770万円)〜課税所得690万円(年収約1160万円)未満 | 9万3000円(世帯) |
市町村民税課税〜課税所得380万円(年収約770万円)未満 | 4万4400円(世帯) |
世帯の全員が市町村民税非課税 | 2万4600円(世帯) |
世帯の全員が市町村民税非課税で前年の公的年金等収入額+その他の合計所得金額の合計が80万円以下など | 2万4600円(世帯) 1万5000円(個人) |
生活保護を受給しているなど | 1万5000円(世帯) |
(参照:厚生労働省「令和3年8月利用分から高額介護サービス費の負担限度額が見直されます」2021年)
ここでも世帯分離によって自己負担上限額が下がる可能性があるということになります。
さらに、世帯分離によって所得や預貯金等合計額が基準額以下であれば、介護保険施設(特別養護老人ホーム、介護老人保健施設など)の居住費や食費の負担額をおさえる「介護保険負担限度額認定制度」で認定を受けられる場合もあります。
国民健康保険料
前述のとおり、国民健康保険料は「前年の所得」と「被保険者の人数」によって決まります。保険料率は年度によっても変わってくるため、一概にいくら軽減できるとはいえませんが、世帯分離によって負担をおさえられる可能性があります。
自治体によってはウェブサイトで国民健康保険料のシミュレータを用意している場合もあります(東京都江戸川区のシミュレータ)。もちろん、こうしたシミュレータで算出される額がそのまま国民健康保険料となるわけではないので、注意しましょう。
後期高齢者医療制度保険料
医療を1割負担(現役並み所得者は3割)で受けられる後期高齢者医療制度。その原資となる保険料を、世帯分離によって軽減できる可能性があります。
世帯分離によって住民票上「一人暮らし」となった世帯では、年金とその他の所得の合計が43万円以下で7割軽減、71万5000円以下で5割軽減、95万円以下で2割軽減となる場合があります。
世帯分離の手続き
実際に世帯分離をするにあたっては、市区町村役所・役場に届け出をする必要があります。その方法を解説します。
準備
役所・役場におもむく前に、手続きに必要となるものを準備しましょう。
本人確認書類(運転免許証、マイナンバーカード、パスポートなど)
印鑑
国民健康保険証(国民健康保険加入の場合)
委任状(親の代理で手続きをする場合。各市区町村のウェブサイトに書式が公開されている場合が多い)
お住まいの地域によって要件や必要書類は異なるので、前もって確認しておくと安心です。
届け出を提出
世帯分離の届出書は、一般に「世帯分離届」「世帯変更届」などの名称となっており、自治体によって名称や様式が異なります。役所・役場の窓口で世帯分離したい旨を話せば、必要となる書類を教えてくれるでしょう。
繰り返しになりますが、世帯分離はあくまでも「実際の生計が分かれていること」をもとにおこなわれるものです。窓口で世帯分離する理由を尋ねられたとき、介護や健康保険の費用軽減と答えると受理されない場合があります。本来の趣旨を忘れないようにしましょう。
もし世帯分離のメリットがなくなってしまったら?
時間が経ち親も子も年を重ねてくると、世帯分離をすることによるメリットがなくなることもあり得ます。また親子ともに年金暮らしとなると、現実の生計を同一にするケースがあるかもしれません。
こうしたときには、「世帯合併」が可能です。手続きは世帯分離のときとほとんどおなじですが、新しい世帯主を決める必要があります。
費用軽減ができるかのシミュレーションをしよう
今回ご紹介したように、世帯分離をすることで社会保障関連の費用負担が軽減できる可能性があります。実際にこうした費用の負担が重いと感じているのであれば、まずは世帯分離をした場合のシミュレーションをしてみましょう。どう計算すればよいかわからないときには、ファイナンシャルプランナーに相談するという手段もあります。
また世帯分離の目的は、「生計を別にすること」を明示することであると述べてきました。費用負担が見込めるからといって世帯のなかの一人の判断で世帯分離を進めるのではなく、家族の考えもきちんと聞いて進めてみてください。
(執筆編集:NTTファイナンス 楽クラライフノート お金と終活の情報サイト編集部)
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