コラム

「いつまで親を放っておくんだ、同居のことを考えろ」と親戚からいわれたら?

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高齢の親が実家でひとり暮らし、2人暮らししていると、放置しているような罪悪感に苛まれることがあります。とくに、昨年からはコロナの影響で帰省しにくかったため、気がかりな状況が続いているのではないでしょうか。

そんなとき、親の周囲にいる親戚から「いつまで親を放置しているんだ」などと責められると、結構こたえます。

佐藤健太さん(40代/男性/仮名/東京都)の母親(70代)も片道4時間かかる東北地方の実家でひとり暮らしです。「僕は長男だし、同居について考えないわけではないのですが、八方塞がりなんです」とため息をもらします。

「Uターン」も「呼び寄せ」も難しい

佐藤さんの父親は佐藤さんが幼いころに交通事故で亡くなり、母親は女手一つで佐藤さんと妹を育ててくれました。佐藤さんは地元の高校を卒業して、東京の大学に進学。そして就職、結婚しました。妹も千葉で暮らしていますが、夫の親と同居しており、家を留守にしにくいようです。

佐藤さんの妻は東京育ちで、その両親は2人とも元気。一方、佐藤さんの母親は肺の病気を患っており、疲れやすく、動きもゆっくり。介護保険では「要支援2」と認定されています。「病気もあるので、コロナに感染させることが怖くてずっと帰省できていません」と佐藤さん。

半年ほど前、実家近所で暮らす伯父(母親の兄)から電話がかかってきました。帰省できない佐藤さんに代わって、ちょくちょく母親のようすをのぞいてくれています。伯父からは、「同居しないのか、これからどうするんだ」といわれました。

「仕事があるので僕が実家に戻ることは難しいです。母に『東京に来る?』と聞いたことがありますが、『私に東京暮らしは無理』といわれました」と佐藤さん。

呼び寄せるには、佐藤さん側にも課題があります。

「うちは2LDKのマンションですし、スペース的にも母の居室を用意できない。妻も働いており、『同居する自信がない』ともいいます。この先、どうしようもなくなったら、僕が仕事を辞めて、単身実家に戻ることになるのかな……」と佐藤さんは不安気に話します。

介護離職は選択肢からはずす

遠くで暮らす親に介護が必要になったらどうするかは、多くの子世代に共通する悩みです。佐藤さんは「いよいよとなったら、介護離職して単身Uターン……」とも考えているようですが、それはおすすめできません。

親のことは大切でも、佐藤さん自身の生活もあります。もし、実家に戻って再就職できたとしても、収入は大幅減となるでしょう。長女の教育費も必要ですし、佐藤さん夫婦の老後も待っています。母親のことを優先すれば、妻や長女と気持ちのすれ違いが生じる可能性が……。

それに、現在の仕事へのやりがいは? 親のために手放すと、後悔したり、親のことを恨んだりしかねません。

親の人生と子の人生は別物です。親の介護について考える際、まず「介護離職はしない」と決断を。決断しておけば、後々「どうしよう」と気持ちが揺れることもありません。そして、医療や介護の専門職には「仕事は辞めずに親をささえたい」といってください。子が傍にいないことを前提に、支援するプランを提案してもらえるはずです。

職場にも「介護休業制度」があります。対象家族ひとりにつき通算93日まで休業できるほか、さまざまな両立支援制度があります。

遠距離介護でマネジメント

Uターンすることも呼び寄せることも難しいなら、第3の方法として「遠距離介護」が選択肢となります。

いうまでもありませんが、遠距離介護では、通って食事介助やトイレ介助をおこなうわけではありません。行ったときだけおこなっても、普段の生活がまわりませんから。

子が傍にいなくても親をサポートできる体制を整えるのです。原則、直接介護は、親の傍にいるプロにお願いします。子どもは仕事のマネジメントとおなじよう、親の介護をマネジメント。ビジョン、課題、予算などを把握したうえで、親のかかりつけ医や担当のケアマネジャーらと連携します。

手を貸してくれる親戚には感謝

親をささえる体制ができれば、同居を勧めてくる親戚などにも報告しましょう。

そして、「いつもありがとうございます」と頭をさげることをお忘れなく。遠距離の場合、何か起きてもすぐには駆けつけることは困難です。とくに、コロナのような状況になると難しいといわざるをえません。そんなとき、近所の親戚はありがたい存在です。多少うるさくても手を貸してくれるなら心強い味方だといえるでしょう。

まとめ

離れて暮らす親と同居して介護をしようと検討しても、現実は難しいケースが多いと思います。そんなとき、早まって介護離職をしないでください。親の人生と子の人生は別物です。

「離職」は選択肢からはずす。そして、親のかかりつけ医や担当のケアマネジャーらと連携しつつ、子が傍にいなくても親をささえられるマネジメント体制を築きます。さらに、多少「うるさい親戚」も、手を貸してくれるなら感謝の気持ちを忘れずに付きあっていきたいものです。


(情報は2021年7月30日時点のものです。)

この記事を監修した人
太田 差惠子

介護・暮らしジャーナリスト、NPO法人パオッコ理事長、AFP(日本ファイナンシャル・プランナーズ協会認定)

京都市生まれ。1993年頃より老親介護の現場を取材。取材活動より得た豊富な事例をもとに「遠距離介護」「仕事と介護の両立」「介護とお金」等の視点でさまざまなメディアを通して情報を発信する。企業、組合、行政での講演実績も多数。AFP(ファイナンシャルプランナー)の資格も持つ。一方、1996年親世代と離れて暮らす子世代の情報交換の場として「離れて暮らす親のケアを考える会パオッコ」を立ち上げ、2005年法人化した。現理事長。

<主な著書>「親が倒れた!親の入院・介護ですぐやること・考えること・お金のこと」「高齢者施設お金・選び方・入居の流れがわかる本」(共に翔泳社)、「遠距離介護で自滅しない選択」「親の介護で自滅しない選択」(共に日本経済新聞出版社)「親の介護には親のお金を使おう!」(集英社)ほか

http://www.ota-saeko.com/

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