コラム

83歳男性が「施設は嫌だ。90歳までは、古くてもわが家で暮らしたい」と一念発起!

この記事の内容

「身のまわりのことをできるうちは、自宅で暮らし続けたい」というのが大方のシニア世代の本音だと思います。けれども、自宅には意外な危険が潜んでいます。消費者庁の資料によると、シニアの転倒事故の約半数は自宅で発生。その内、8割以上の方が通院や入院が必要なけがを負っています。「住み慣れた自宅」で暮らし続けるための方策はあるのでしょうか。

急勾配の階段から転落してしまった……

田中恒造さん(83歳/仮名/埼玉県)は妻を亡くしてからひとり暮らし。自宅は古い家屋で、1階は家業の土間で2階が住居となっています。75歳で廃業し、いまでは1階土間は荷物置き場に。

1階から2階へのアプローチは急勾配の階段。離れて暮らす長男からは、「危ないから、老人ホームに入るほうがいい」といわれ続けていたとか。「息子がいうことがわからないわけじゃないが、施設は嫌だ」と恒造さん。

ところが、ある日、長男の懸念は現実に。恒造さんは階段を踏み外して転落。運よく、配食サービスの配達員に動けなくなっているのを見つけられ、救急搬送されました。打撲だけで骨折していなかったのは、不幸中の幸いでした。

「息子は『だからいわんこっちゃない』と。でも、あと何年生きられるかわからないけれど、ここがいいんですよ。息子には、もし90歳まで生きたら施設に入ると約束しました」と恒造さん。そして、できる限り住まいの危険を撤去するため、長男、ケアマネジャーと相談しながら、住宅改修をおこなったのです。

90歳までは自宅で暮らしたい

恒造さんの住まいを見せてもらいました。各所に危険を予防するための工夫がなされています。改修には介護保険のサービスや公的な補助を利用しており、費用的にもリーズナブルです。

■階段昇降機を設置

急勾配の階段には階段昇降機を設置。2階まで座って上がることができます。

■トイレのドアは引き戸に

トイレでヘルパーの介助を受けたり、将来的に車いすを利用したりすることも想定して、ドアは引き戸に変更し開口部を広く確保。

■各所に手すりを設置

トイレまでの移動に役立つ手すりと、便座への立ち座り時に役立つ手すりを設置。そのほか、寝室への動線などにも手すりを付けています。

■玄関には段差解消の踏み台設置

上がりかまちが高めだったので、段差を解消する踏み台を設置。さらに手すりも備えています。また、靴の脱ぎ履きをする際に腰掛けられるように椅子を置いています(椅子は、もともと自宅にあったもの)。

介護保険の「住宅改修」を利用

恒造さん宅の住宅改修は、階段昇降機以外は、介護保険のサービスを利用しています。在宅で暮らす介護認定を受けた(要支援・要介護)人が安心・安全に暮らせるように住宅を改修できるサービスです。20万円を上限(数回に分けて使うこともできます)に改修費が助成されます。

恒造さん宅の改修費用は24万円(階段昇降機を除く)だったので、4万円のオーバー。恒造さんは介護保険の負担は1割だから、20万円の1割負担で2万円、オーバー分の4万円は全額負担で計6万円の支払いだったそうです。「6万円でこんなに改修でき、介護保険は得ですね」と恒造さん。

介護保険の住宅改修を利用したい場合は、事前にケアマネジャーか地域包括支援センターで相談する必要があります。

■介護保険の「住宅改修費の支給」対象の工事

  1. 手すりの取り付け
  2. 段差の解消
  3. 滑り防止や移動を円滑にするため等の床または通路面の材料の変更
  4. 引き戸等への扉の取替え
  5. 洋式便器等への便器の取替え
  6. 上記1~5の各工事に付帯して必要と認められる工事

階段昇降機は自治体助成を活用

階段昇降機の設置は、介護保険の住宅改修の対象とはなりません。けれども、自治体によっては独自に補助事業を行っているところもあります。恒造さんの暮らす自治体でも助成があるので活用しました。

恒造さん宅の場合、設置料の内27万円が補助されたそうです。階段昇降機の設置にかかった費用は80万円ほどだったので、53万円を自己負担。「お金はかかったけれど、これで自宅暮らしを継続できるんだからありがたい」と恒造さんは喜んでいました。

デイサービスでお風呂と運動

階段から転落するまで、恒造さんはデイサービスを利用していませんでした。介護保険ではホームヘルプサービスのみ使っていたとか。けれども、転落事故以降、危険回避のため、デイサービスで入浴するようになりました。「広いお風呂で気持ちいいですよ」と恒造さん(デイサービスで入浴するので、自宅の浴室は工事不要。改修費をおさえることができました)。

さらに、自治体のサービスで、緊急時に通報できる「緊急通報システム」も利用。ペンダント型のボタンになっており、緊急時にはそれを押すだけで、通報できる仕組みです。

恒造さんは1日も長く、自宅で暮らせるように、デイサービスでの運動にも精を出しているようす。「息子から『老人ホームへ入れ』とうるさく言わなくなりましたよ」と恒造さんはにっこり微笑みました。

まとめ

「できる限り自宅で暮らし続けたい」と考えるシニア世代は多いです。けれども、自宅には転倒などの危険が潜んでいます。バリアフリーになっていない古い家屋で安心・安全に暮らすためには住宅改修を検討しましょう。介護保険を利用すれば改修費の7~9割が支給されます。改修工事の上限は20万円です。
自治体によっては、介護保険では対象外となる改修費用の補助も行っています。階段昇降機の設置もその一つ。
介護保険、自治体の補助事業ともに、利用を希望する場合は、担当のケアマネジャーか地域包括支援センターに相談を。バリアフリーに改修することで、ある程度危険を軽減できますが、自身が健康に留意し、運動機能を維持することはより大切だといえるでしょう。デイサービスなどに通い、運動やリハビリにも取り組みたいものです。自治体によっては介護認定を受けていない元気なシニア向けにも、体操教室などを実施するところもあります。


(情報は2022年2月28日時点のものです。)

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この記事を執筆した人
太田 差惠子

介護・暮らしジャーナリスト、NPO法人パオッコ理事長、AFP(日本ファイナンシャル・プランナーズ協会認定)

京都市生まれ。1993年頃より老親介護の現場を取材。取材活動より得た豊富な事例をもとに「遠距離介護」「仕事と介護の両立」「介護とお金」等の視点でさまざまなメディアを通して情報を発信する。企業、組合、行政での講演実績も多数。AFP(ファイナンシャルプランナー)の資格も持つ。一方、1996年親世代と離れて暮らす子世代の情報交換の場として「離れて暮らす親のケアを考える会パオッコ」を立ち上げ、2005年法人化した。現理事長。

<主な著書>「親が倒れた!親の入院・介護ですぐやること・考えること・お金のこと」「高齢者施設お金・選び方・入居の流れがわかる本」(共に翔泳社)、「遠距離介護で自滅しない選択」「親の介護で自滅しない選択」(共に日本経済新聞出版社)「親の介護には親のお金を使おう!」(集英社)ほか

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