基礎知識

【基本知識編(基本のき)】介護に備えよう

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いまは元気でも、結構な確率で将来的に支援や介護が必要となります。

こちらの記事では、健康状態が悪化したり、サポートが必要になったりしたときに備えて知っておきたいポイントを解説します。

85歳以上の6割は支援や介護が必要になる

「もしも介護が必要になったら……?」と心配しているシニア世代の方は多いと思います。しかし脅すわけではありませんが、「もしも」ではありません!年齢を重ねると、高確率で介護が必要となります。

65歳から75歳では、介護保険の認定を受けているのは全体の4.2%ほどですが、75歳以上になると33%ほどとドンと割合が上がります。85歳以上に限定すると6割もの人が認定を受けています。

こんなにも多くの人たちが支援や介護を必要とするようになる原因は何でしょう。

多い順に……。

  1. 「認知症」18.7%
  2. 「脳血管疾患(脳卒中)」15.1%
  3. 「高齢による衰弱」13.8%
  4. 「骨折・転倒」12.5%


男女別では原因にすこし違いがあり、男性は「脳血管疾患(脳卒中)」が23.0%、女性は「認知症」が20.5%ととくに多くなっています。

女性の2人に1人、男性の4人に1人以上は90歳超生きる時代

ここまで読んで、「85歳までは生きないからだいじょうぶ」という声が聞こえてきそうです。実際、筆者が介護セミナーなどでこの話をしても、「そんなには生きないから、心配はない」と言い切るシニアが少なくありません。しかし、そこにも考え違いが……

男性の平均寿命は 81.41歳、女性の平均寿命は 87.45歳ですが、これはあくまで平均値です。90歳まで生存する人の割合は男性27.2%、女性51.1%となっています。つまり、女性の2人に1人、男性の4人に1人以上は90歳超生きる時代なのです。さらに2020年9月には、100歳以上の高齢者の数は初めて8万人を突破、80,450人となりました。

自分自身も100歳超生きる可能性は十分にあり、いまは元気でも、結構な確率で将来的に支援や介護が必要となる」と考えておくほうがよいでしょう。配偶者のいる人であれば、双方が生涯支援や介護を必要としないという確率は低いと言えます。

病院での相談窓口

支援や介護が必要になる過程として、認知症の場合は、自宅で生活しているあいだにすこしずつもの忘れが増える、などの変化が生じるのが一般的です。一方「脳血管疾患」などそのほかの要因では、入院を経て退院後に支援や介護が必要となることが多いと言えます。

現在、病院での入院期間は短くなっており、「こんな状態なのに退院?どうやって生活するの?だれに介護してもらうの?」ということが起こりがちです。不安ですね。でも、悩みが深まると、心身の具合にも悪影響を及ぼします。抱え込まないようにしたいものです。

退院後のことはもちろん、入院費用のことや入院生活上のことなど心配は色々……。しかし、医師や看護師は忙しそうなので、聞きたいことがあっても聞くのをためらいがちです。そのようなときに頼りになるのが「医療ソーシャルワーカー」です。広い意味で「ケースワーカー」と呼ぶこともあります。

ある程度の規模の病院では「医療相談室」「地域医療連携室」などと呼ばれる部門を設けており、そこに医療ソーシャルワーカーが在籍しています。わからない場合は、病院の窓口で聞いてみてください。

必須の資格はありませんが、社会福祉系大学などで専門の教育を修了している人が多いです。また病院によっては、社会福祉士、精神保健福祉士などの国家資格を取得している人に限定して採用しているところもあります。

医療ソーシャルワーカーは本人の相談にはもちろん、家族からの相談にも対応します。

【医療ソーシャルワーカーはこんな悩みに対応】

  • 入院、外来を問わず、療養中の困りごと
  • 退院後の療養生活の準備のこと
  • 退院後の介護のこと
  • ほかの病院や施設に移ること
  • 医療費や生活費などの心配ごと など

 

介護のことでの相談窓口

退院後は、いよいよ介護の始まりです(もちろん、療養やリハビリによって徐々に元気な状態に戻っていくこともあります)。

病院の医療ソーシャルワーカーに自宅に戻ってからのことを相談すると、必ず教えられるのが「地域包括支援センター」のことです。介護についての「よろず相談窓口」と覚えておきましょう。

社会福祉士、保健師、主任ケアマネジャーなどの資格をもつ介護の専門職が、高齢者本人やその家族の相談に対応します入院を経ていない場合でも相談できるので、「困ったときには、地域包括支援センターへ」と思い出してください。

概ね中学校区に1か所設置されており、住所地ごとに担当のセンターが決まっています。所在地は医療ソーシャルワーカーに聞いてもよいですし、役所に電話して住所を言えば教えてもらえます。

地域包括支援センターでの相談は無料なので、気楽にコンタクトしてみてください。介護保険をはじめとする、さまざまなサービスの利用方法や申込をおこなうこともできます。心身の具合が悪くてセンターまで行けないときは、職員が自宅まで来てくれるでしょう。 

なかには「このくらいの状態では、まだ相談するレベルではない」と考えてしまう人がいますが、心配ごとにレベルなどありません。たとえば「介護が必要な状態になることを予防するために、転倒しにくくなる体操教室などはないでしょうか」といった相談もOKです。

【地域包括支援センターで相談できること】

  • 加齢によって生活で困っていることや心配なこと
  • 介護保険やそのほかのサービスの紹介、利用手続きのこと
  • 認知症のこと
  • 介護をしている家族の支援について
  • 介護予防のこと など

 

家族と話しあっておきたいこと

介護が必要になるときに備えて、元気ないまから家族で話しあっておきたいことがあります。

配偶者がいる人は、介護が必要になったらどこでどのように生活するかを相談しておきたいものです。ホームヘルプサービスやデイサービスを利用すれば、結構な期間、自宅での暮らしに支障はないと思います。そのうえで「高齢者施設に移ることを念頭に置くのかどうか」「サービスや施設にかかる費用をどこから捻出するのか」など具体的に考えておきましょう。 

配偶者の具合が悪くなって在宅で介護をする場合、老々介護となると体力的にも厳しいものがあります。状況によっては、「在宅は限界」となることもあるかもしれません。しかし「配偶者を施設に入れるのはかわいそう」という気持ちから、提案することを躊躇する人が少なくないのです。

元気なうちに話しあい、いっしょに「こういう状況になったら施設介護を選ぼう」と決めておけば、いざとなったときに迷いが生じず、スムーズに施設入居について検討できます(共倒れを防げます)。

 また、子どもがいる人は、夫婦間で決めたことは子どもにも伝えておきましょう。「自分自身で親を看てあげたい」との気持ちから、仕事を辞めて介護に専念しようとする子どももいます。こうした状況は介護離職と呼ばれ、年間約10万人もの子世代が仕事を辞めており、社会問題となっています。キャリアが途絶え、再就職をしても、年収は大幅にダウン。それでは、子どもの生活まで共倒れしかねません。

まとめ

配偶者や子どもなど、家族の有無や人数にかかわらず、サービスや施設を利用することで、きっと介護は何とかなります。サポートしてくれる専門職は大勢います。しかし、待っているだけでは手助けしてもらえません。困ったときには、自ら地域包括支援センターなどに「サポートして欲しい」と発信することが大切なのです。

(参照:内閣府『令和2年版高齢社会白書』2020年、厚生労働省『令和元年簡易生命表の概況』2019年)


(情報は2020年12月1日時点のものです。)

この記事を執筆した人
太田 差惠子

介護・暮らしジャーナリスト、NPO法人パオッコ理事長、AFP(日本ファイナンシャル・プランナーズ協会認定)

京都市生まれ。1993年頃より老親介護の現場を取材。取材活動より得た豊富な事例をもとに「遠距離介護」「仕事と介護の両立」「介護とお金」等の視点でさまざまなメディアを通して情報を発信する。企業、組合、行政での講演実績も多数。AFP(ファイナンシャルプランナー)の資格も持つ。一方、1996年親世代と離れて暮らす子世代の情報交換の場として「離れて暮らす親のケアを考える会パオッコ」を立ち上げ、2005年法人化した。現理事長。

<主な著書>「親が倒れた!親の入院・介護ですぐやること・考えること・お金のこと」「高齢者施設お金・選び方・入居の流れがわかる本」(共に翔泳社)、「遠距離介護で自滅しない選択」「親の介護で自滅しない選択」(共に日本経済新聞出版社)「親の介護には親のお金を使おう!」(集英社)ほか

http://www.ota-saeko.com/

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