コラム

家族間でのサポートはどこまで?頼りすぎた結果、長女が激怒!

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[この記事を執筆した人]

心身の具合が悪くなると、何かと家族に頼むことが増えます。それ自体は当然なのですが、距離感を上手に保たなければ、親子であっても大きな衝突を招くことがあります。

大前たか子さん(70代/仮名/兵庫県)は、夫を癌で亡くして以来、ひとりで暮らしています。ある日、自宅の階段で足を滑らせて転落し大腿骨を骨折して入院。治療、リハビリの甲斐あって1人で歩行できるまでに回復したのですが……不用意なひと言で長女を激怒させてしまったのです。

「娘を生んでおいてよかった」

たか子さんには長男と長女がいます。長男は車で30分ほどのところで妻と子どもと4人暮らし。長女も結婚し、車で1時間30分ほどのところで夫婦で暮らしています。長女は夫との自営業で、多少時間の調整がしやすいらしく、入院中も度々病院に来てくれました。

「私が、娘に甘えちゃったのがいけなかったの。でも、洗濯とかって、息子には頼めないでしょ。息子のお嫁さんにもお願いしづらいし」とたか子さんは話します。

退院するとき、病院の医療ソーシャルワーカーから介護保険の申請をするように勧められました。けれども、「娘がいますから、介護保険はいいです」とたか子さんは断ったそうです。

退院後、長女は週に1回来て、車で買いものに連れて行ってくれるようになりました。

たか子さんは、長女とは良好な関係を築けていると思っていました。けれども、長女は負担に感じ、不満を募らせていたのかもしれません。

2人で買いものを済ませて、一緒に昼ご飯を食べていたときでした。たか子さんが発したひと言が引き金となり、長女の表情が険しくなったのです。

再現すると、こんな感じだったそうです。

 

母「娘を生んでおいて、よかった」
長女「えっ、何それ!? 私は、お母さんの介護をするために生まれてきたの?」
母「そんなわけないでしょ。あなたのおかげで、歩けるようになった。ありがとう」
長女「前から聞きたかったの。どうして、アニキじゃなくて、なんでも私に頼むの?アニキの方が近所に住んでいるのに。それに、なぜ、介護保険を利用しないの?」
母「だって、〇〇(長男)は忙しくしているし、男だから……。介護保険は、他人が来ると疲れちゃうし」
長女「私だって忙しいのよ。いつも仕事を抜けて来ているの。お母さんのせいで、◎◎(夫)にも申し訳なくて、いいかげんにしてよ」


長女はここまで話すと、 「言い過ぎた」と謝り、その日は帰っていきました。

介護では、“娘”に負担がかかりがち

たか子さんの長女は、週に1回のペースで通ってきてくれていました。当然、仕事にも支障があったものと思われます。たか子さんの長女は夫との自営ですが、正社員やパートとして勤務している子も多く、いまは共働きが一般的です。度々、親の介護で休暇を取ると仕事に遅れが生じたり、同僚に対し申し訳ない気持ちになったりします。

親のほうにそのつもりはなくても、子が「親の介護でこれ以上職場に迷惑を掛けられない」と仕事を辞めるケースもあります。“介護離職”と呼ばれ、その数、年間10万人も。もちろん、女性だけでなく、離職する男性もいます。一旦離職すると、再就職できたとしても、年収は男性で4割減、女性で半減という報告もあります。経済的な困窮はストレスを招きがちです。子の生活設計にも大きく影響します。

腹を割った話しあいが不可欠

たか子さんの長女が激怒した一件は、長い目で見れば良かったのかもしれません。「長女とのことは、長男にも報告したんです。そうしたら、2人が日程をあわせてうちに来てくれたので、これからのことをしっかり話しあうことができました。娘に頼り過ぎていたことを反省しました」とたか子さん。

そして、たか子さんは介護保険を申請。「要支援2」と認定され、ホームヘルプサービスとデイサービスを週に1回ずつ利用するようになりました。買いものは生協で個別宅配を頼むことにしたとか。

支援や介護を必要とする期間は、長期に渡ることも考えられます。家族に負担を強いずよ良い関係を保ち続けていくためには、介護保険などの社会的なサービスを利用することは必須です。

家族には、家族にしかできないサポートをお願いしましょう。たか子さんも2人の子と今後の暮らし方を一緒に考えることができ、心強かったようです。介護保険のサービスや個別宅配の利用をはじめ、長女が来るのは週1から月1~2回に。「来てくれる回数は減りましたが、用事が減ったのでお茶を飲みながら他愛ないことを話す時間が増えました」とたか子さんは喜んでいました。

まとめ

介護が必要になると、家族間の接点が増えます。だからこそ、距離感の保ち方には注意しましょう。介護保険などの社会的なサービスを利用し、子どもに負担がかかりすぎないよう配慮を。家族には家族にしかできないケアを担ってもらいたいものです。

また、世代間には価値観や考え方にギャップがあります。見ない振りをしていると、いつか不満が爆発しかねません。トラブルを防ぎ、心地よい生活をおくるためには、早い段階で本音の話しあいをもつことが大切です。


(情報は2021年9月9日時点のものです。)

この記事を監修した人
太田 差惠子

介護・暮らしジャーナリスト、NPO法人パオッコ理事長、AFP(日本ファイナンシャル・プランナーズ協会認定)

京都市生まれ。1993年頃より老親介護の現場を取材。取材活動より得た豊富な事例をもとに「遠距離介護」「仕事と介護の両立」「介護とお金」等の視点でさまざまなメディアを通して情報を発信する。企業、組合、行政での講演実績も多数。AFP(ファイナンシャルプランナー)の資格も持つ。一方、1996年親世代と離れて暮らす子世代の情報交換の場として「離れて暮らす親のケアを考える会パオッコ」を立ち上げ、2005年法人化した。現理事長。

<主な著書>「親が倒れた!親の入院・介護ですぐやること・考えること・お金のこと」「高齢者施設お金・選び方・入居の流れがわかる本」(共に翔泳社)、「遠距離介護で自滅しない選択」「親の介護で自滅しない選択」(共に日本経済新聞出版社)「親の介護には親のお金を使おう!」(集英社)ほか

http://www.ota-saeko.com/

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