コラム

本格的介護が必要になった途端、高級有料老人ホームから「退去勧告」!? そのシビアな理由

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この記事の内容


高齢者施設へ入居するケースでは、大半が、「終の棲家」と考えての決断ではないでしょうか。介護が必要になって入居する場合も、比較的元気な状態で入居する場合も、「最期まで、安心して暮らしたい」と……。

けれども、こともあろうか、入居後、本格的な介護が必要になった途端に、「これ以上、うちでは看られません。ほかを探してください」と退去勧告を受けることがあります。

月払い方式で毎月約40万円も!

野川まゆみさん(51歳/仮名/東京都)の両親は、隣県の実家で2人暮らしをしていました。しかし、5年ほど前、母親が病気で他界。ひとり暮らしとなった父親(80代)は地元の有料老人ホームに入居しました。

「父は年金をたくさんもらっているので、お高めの有料老人ホームを選びました。実家マンションも売却しました。新しくて、ホテルのようにきれいなホームです。羨ましいくらい。父も、よいところが見つかったと喜びました」。

施設に支払う金額は、月額40万円ほど。「入居一時金を払えば、月額料金をおさえることもできましたが、もう高齢だし、月払い方式にしたのです」とまゆみさん。父親はカラオケのサークル活動に参加し、最初の1年程は穏やかに新たな生活を楽しんでいるようでした。けれども、すこしずつ、認知症の症状が現れたのです。

施設から「対応困難」と告げられた

父親はホームを抜け出してどこかに行こうとすることがありました。食事を上手に食べられないこともありました。「その都度、ホームのスタッフが介助してくれていました」とまゆみさんは当時を振り返ります。

しかし、認知症の症状が進み、父親はほかの入居者の部屋に入ってしまうようになったのです。しかも、その部屋の住人の私物をさわったり、持ち出したりすることも。

父親はスタッフとのやりとりで、大声を出して抵抗することが増えました。ほかの入居者に対して怒鳴ったり、夜中に騒いだりすることも……。

とうとうまゆみさんは施設から呼び出しを受けました。そして、「ほかの入居者から苦情が出ています。これ以上は、うちでは対応が難しい」と告げられたのです。

「耳を疑いました。確かに父の行為は申しわけないものですが、高齢者施設なんだから何とかしてよと思いました。毎月40万円も払っているんですよ」とまゆみさん。

しかし、抵抗も虚しく、「なるべく早く、行き先を見つけてください」といわれ、まゆみさんは途方に暮れていました。

“退去”となる3つの理由

入居中の施設から退去をいい渡されると、子としては相当慌てます。そもそも、なぜシニア向けの施設だというのに、本格的な介護が必要になった段階で「出て行け」といわれてしまうのでしょう。

「退去するかどうか決めるのは入居者だ」といいたくもなります。もちろん本人から退去を申し出る権利はありますが、通常、施設側からも要請できる契約となっています。

退去となるには、主に3つの理由があります。

  1. 月々の利用料を一定期間以上滞納した場合

  2. 入居者・身元引受人などに反社会勢力の該当が判明した場合

  3. 施設のスタッフ体制では対応できない看護や介護が必要になった場合

 
1~3のうち、もっとも注意が必要なのは3です。ここには、幅広い内容が含まれます。まゆみさんの父親は認知症が進んだことにより、共同生活に支障が生じ、施設のスタッフ体制では対応不可となったといえます。

認知症に限ったことではありません。別の女性の母親は、口から食事を食べられなくなり胃ろうを造設。結果、施設のスタッフ体制ではケアが難しいと退去を求められました。

住宅型ホームは人員配置の基準なし

まゆみさんは、「高額な有料老人ホームなら、まさか追い出されない」と思っていたようです。けれども、利用料の高い安いにかかわらず、対応できるケアの内容は施設ごとに定められています。

有料老人ホームには「住宅型」と「介護付き」があります。“高級有料老人ホーム”といわれるところは、「住宅型有料老人ホーム」が少なくありません。比較的元気な入居者が多く、充実したシニアライフをおくっています。

「介護付き有料老人ホーム」と異なり、介護が必要になった場合は、必要な介護サービスを別途契約して利用するシステムとなっています(「介護付き有料老人ホーム」は24時間体制で介護がおこなわれます)。

そのため、住宅型有料老人ホームには人員配置に関する基準はありません。つまり、重度の(言葉は悪いですが、手のかかる)介護をおこなう体制になっていないということです。

まゆみさんの父親が入居した施設も、「住宅型」だと思われます。

入居契約の前に重要事項説明書を読もう

まゆみさんのように、「こんなはずでは」となることを避けるためには、入居を決断する前に、契約書や重要事項説明書をしっかり読むことが大切です。そこには、「契約解除の内容(退去要件)」の項目が設けられています。「入居者からの申し出」と並んで「事業者からの申し出」の欄もあるので、見落とさないようにしましょう。

読むだけではなく、見学の際にでも、「これまで、どういうケースで、退去となった方がいますか」と聞いてみましょう。そして、退去となった人は、退去後にどこへ移ったかについても聞いてみてください。なかには、関連の施設に移れるところもあります。

まゆみさんの父親の場合、移る先としては介護付きの有料老人ホームか、特別養護老人ホームなどが候補となります。いずれにしても、個別に受け入れる条件や要件は異なるので、見学をしたうえで、父親の現状を話して、どのようにケアがなされるか聞いてみましょう。

何度も、施設を出たり入ったりするのは、本人にとっても、探すことになる家族にとっても負担です。「終の棲家」と考えるなら、日々のケアの内容に加えて、“看取り”についての施設の方針や考え方についても説明を受けてください。

まゆみさんの父親は、入居一時金を払っていませんが、もし支払う場合には、早期退去となる際の返還額についても確認することを忘れないようにしましょう。

まとめ

「最期まで安心して暮らしたい」との願いから、高齢者施設への入居を決断するケースが多いと思われます。ところが、必ずしも高齢者施設が「終の棲家」となるとは限りません。

通常、施設のスタッフ体制では対応できない看護や介護が必要になった場合は、退去に。対応できるケアの内容は、施設ごとに異なります。

入居後に、新たな施設に移るのは、本人にとっても家族にとっても大きな負担となります。契約書や重要事項説明書を読み込みましょう。そのうえで、不明点があればしっかり確認することが“こんなはずでは”を避ける大切なポイントとなります。


(情報は2022年6月3日時点のものです。)

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この記事を執筆した人
太田 差惠子

介護・暮らしジャーナリスト、NPO法人パオッコ理事長、AFP(日本ファイナンシャル・プランナーズ協会認定)

京都市生まれ。1993年頃より老親介護の現場を取材。取材活動より得た豊富な事例をもとに「遠距離介護」「仕事と介護の両立」「介護とお金」等の視点でさまざまなメディアを通して情報を発信する。企業、組合、行政での講演実績も多数。AFP(ファイナンシャルプランナー)の資格も持つ。一方、1996年親世代と離れて暮らす子世代の情報交換の場として「離れて暮らす親のケアを考える会パオッコ」を立ち上げ、2005年法人化した。現理事長。

<主な著書>「親が倒れた!親の入院・介護ですぐやること・考えること・お金のこと」「高齢者施設お金・選び方・入居の流れがわかる本」(共に翔泳社)、「遠距離介護で自滅しない選択」「親の介護で自滅しない選択」(共に日本経済新聞出版社)「親の介護には親のお金を使おう!」(集英社)ほか

http://www.ota-saeko.com/

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