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【節税の基礎知識】サラリーマンでもできる正しい節税対策方法5つ

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この記事を監修した人
星田 直太

星田税務会計事務所 代表税理士
税理士(東京税理士会新宿支部)、ファイナンシャル・プランナー(CFP® 日本FP協会)、登録政治資金監査人(総務省 政治資金適正化委員会)、租税訴訟補佐人

一般企業勤務後、30歳の時に税理士法人へ転職し、税務・会計業界へ。中堅・中小企業の税務業務、上場準備支援、管理会計制度構築、組織再編成等の様々な業務に従事した後、平成26年10月に独立開業。現在は法人決算・税務申告から個人の税務相談まで多岐に渡り活躍。

https://www.hoshida-tax.com/

この記事をおすすめする人

節税対策をしたいサラリーマンの方


この記事のポイント

  • 年収2000万円以上、複数箇所から収入等の場合確定申告が必要である
  • ふるさと納税、住宅ローン控除など節税対策はさまざまある
  • 投資をする場合はiDeCoやNISAを活用すると非課税に


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サラリーマンの方の多くは、勤めている会社が年末調整をおこなってくれるので、確定申告や納税について意識することはあまりないでしょう。

しかし実は、会社に勤めていてもほんのすこしの工夫で節税することができます。また副業や株式投資をおこなっているなら、とくに意識しておきたいポイントも。

こちらの記事では、ラリーマンの方でも実施できる節税のポイントをご紹介します。さらに記事の最後には、iDeCoやNISAなど金融資産形成を促進するための制度もご紹介していますので、節税対策だけでなく老後のための資産形成も視野に入れていきましょう。

確定申告

まずは納税に関する大切な手続きである「確定申告」について、くわしく解説します。

確定申告とは

1年間に得た所得を計算して、所得税(復興特別所得税を含みます。以下おなじです。)の額を確定させる手続きのことを確定申告といいます。

サラリーマンの方は、所属する会社が税額の過不足を精算する「年末調整」をおこなってくれるため、原則として確定申告をおこなう必要はありません。

しかし一定の条件を満たしている場合はサラリーマンでも確定申告の対象になり、自分で手続きをおこなう必要が出てきます。

確定申告の対象となるサラリーマンの条件

確定申告が必要になる一定の条件とは、以下のとおりです。

  • 給与収入が年間2000万円をこえること
  • 1か所から給与収入を得ていて、給与所得や退職所得以外の所得金額(収入ではなく、必要経費を差し引いたあと等の金額)の合計が20万円をこえること
  • 2か所以上から給与収入を得ていて、年末調整がされなかった給与収入金額とそれ以外の所得金額(給与所得・退職所得を除きます)との合計額が20万円をこえることなど


高額の給与収入がある場合や、いま勤めている会社以外からも収入がある場合には、原則として確定申告が必要になります。
(参照:国税庁ホームページ「給与所得者で確定申告が必要な人」2020年)

サラリーマンの節税方法(1)ふるさと納税

ふるさと納税とは、ご自身が選択した市町村などに寄附をすることで、所得税と住民税が減額される制度です。計算の対象は、寄附した金額から2000円を引いた金額となります。

このふるさと納税は、寄附として実際に支出した金額から2000円を控除した額について、後から税の減額という形で恩恵を受ける仕組みです。納税額が減るため「節税」にはなりますが、単純に収支だけをみるとマイナスになってしまいます。

しかし、お米やお肉などの返礼品を受けとることができるため、そのお得感から人気があるようです。ふるさと納税には限度額があり、所得が多いほど限度額が高くなりますので、給与収入が多い方ほど大きな効果があるといえます。


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2008年にスタートした「ふるさと納税」。自治体に寄付をすることで所得税や住民税が控除されるだけでなく、魅力的な返礼品がもらえることもあり、この制度は広く定着したように感じられます。  ただ、ふるさと納税の利用者は2020年時点で400万人(総務省「ふるさと納税に関する現況調査結果(令和2年度実施)」)であり、日本全体の納税者の数からするとまだ一部の人しかおこなっていません。  今回はふるさと納税に関心のある方、これからはじめてみたいという方に、どんな制度であるかを解説します。

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サラリーマンの節税方法(2)特定支出控除

「特定支出控除」は、サラリーマンにも認められている追加的な必要経費のようなものといえます。

「特定支出」の額の合計が給与所得控除額の2分の1(最高125万円)をこえる分について、確定申告をすることで給与所得から控除することができます。「特定支出」の内容は税法で定められており、これに該当する支出が対象になります。

特定支出の範囲

特定支出の範囲は、以下に掲げる支出のうち一定のものです。

  1. 通勤費:通勤のための支出
  2. 職務上の旅費:出張に必要な旅費
  3. 転居費:転勤にともなう転居のための支出
  4. 研修費:職務に必要な技術や知識を得ることを目的とした研修費用
  5. 資格取得費:職務に直接必要な資格を取得するための費用
  6. 帰宅旅費:単身赴任などにより、自宅と勤務地を往復するために必要な旅費
  7. 勤務必要経費(上限65万円):以下のうち職務遂行に直接必要なもの

・図書費:職務に関連する図書を購入するための費用
・衣服費:勤務場所において着用が必要とされる制服などを購入するための費用
・交際費など:得意先など職務上関係のある人に対する、接待などのための費用


なお、特定支出控除の適用を受けるためには、確定申告書などにその適用を受ける旨と、特定支出の合計額を記載するとともに、明細書や給与支払者の証明書(所定の様式に沿って記入)を添付する必要があります。

サラリーマンの節税方法(3)配偶者控除と扶養控除

こちらの控除についてはすでにご存知の方も多いのではないでしょうか。配偶者控除・扶養控除の適用を受けるためにはご家族の協力が必要になることもあるので、制度をきちんと理解しておきましょう。

配偶者控除とは

条件を満たす配偶者がいる場合に、所得の控除が受けられる制度のこと。夫の所得から、所得税の場合は38万円、住民税の場合は33万円の所得控除を受けることができます。所得税を例に挙げると、納税者の所得税率を20%とした場合には、7万6000円の節税に。控除対象になる条件は以下のとおりです。

  • 民法の規定による配偶者であること(内縁関係の人は該当しません)
  • 納税者本人と生計をともにする配偶者であること
  • 配偶者の給与収入が103万円(合計所得金額48万円)以下であること
  • 納税者本人の合計所得金額が1000万円以下であること


なお配偶者の給与収入が103万円をこえている場合は「配偶者特別控除」が適用され、年収に応じた控除を受けることができます。くわしくは下記の表をご参照ください(記載の控除額は所得税における所得控除額です)。


(引用元:国税庁ホームページ「配偶者特別控除」2020年)

納税者本人の合計所得金額が900万円以下でも、配偶者の合計所得金額が133万円をこえる場合(給与収入で201万6千円以上)は、配偶者特別控除を受けることができません。なお配偶者の給与年収が130万円以上になると、社会保険の扶養(第3号被保険者)から外れることになるでしょうから、この点についても注意したいところです。

扶養控除とは

扶養控除とは、配偶者以外に扶養している親族がいる場合に、その人数に応じて受けられる控除のこと。給与収入103万円以下の親族を扶養している一定の場合、年齢などによって異なる控除額が適用されます。

  • 16歳以上19歳未満、23歳以上70歳未満の親族を扶養している場合:38万円
  • 19歳以上23歳未満の親族を扶養している場合:63万円(特定扶養親族)
  • 70歳以上の親族を扶養している場合:48万円、同居の直系尊属なら58万


こちらの控除を受けることができます。なお、年齢はその年の12月31日時点の年齢になりますので、注意してください。

ここで注意したいのは、19歳から23歳未満の子ども(一般的には大学生)です。ほかの扶養親族とは違い63万円と大きな控除を受けることができ、所得税を例にすると、仮に納税者の所得税率を20%とした場合には12万6000円の節税になります。この年齢で大学生などの学生である子どもについては、アルバイトなどの給与年収を103万円以下におさえるよう伝える家庭が多いようです。

サラリーマンの節税方法(4)住宅ローン控除

住宅ローンの負担をやわらげることを目的とした住宅ローン控除では、年末時点の住宅ローンの残高に対して1%の金額が所得税額から控除されます(2020年の制度)。

仮に残高が2000万円で控除限度額の税額控除を使い切れるとすると、20万円の税額控除を受けることができます。税額控除は、所得金額から差し引かれる「所得控除」に比べて、税額から直接差し引かれる分、より大きな節税につながることが特徴です。

控除を受ける5つの条件

住宅ローン控除を受けるためには、主に以下の条件を満たす必要があります。

  • 初年度のみ、確定申告をおこなうこと(2年目以降は年末調整でも対応可能)
  • 返済期間が10年以上であること
  • 住宅を取得した日から6か月以内に居住を開始し、適用を受ける年の年末まで引き続き居住していること
  • 控除を受ける年の合計所得が3000万円以下であること
  • 住宅の床面積が50㎡以上で、床面積の1/2以上が居住用であること


それぞれの内容に注意して、適用もれがないように気をつけましょう。

サラリーマンの節税方法(5)損益通算

損益通算とは、所得計算において黒字と赤字を相殺することをいいます。赤字の所得をほかの黒字の所得から差し引き、相殺した後の金額がその年の所得額となり、その金額によって税額が決まるのです。

しかし、損益通算で相殺できる損失は不動産所得、事業所得、山林所得、譲渡所得の4つの所得に限ります。

損益通算の留意点

サラリーマンの場合は、副業による所得が損益通算の対象になるかが気になるところでしょう。その副業が不動産所得(土地や建物などの貸付けによる所得)であって、その不動産所得で生じた損失のうち一定のものであれば、損益通算をおこなうことができます。

しかし不動産所得以外の副業については、それが「雑所得」に区分されることが少なくないため、損益通算をおこなうことは難しいと考えられます。事業所得と雑所得の区分は明確ではないのですが、税務署へ「開業届」を提出すれば必ず事業所得として認められるというわけではなく、営業活動以外に「事業と認められるような社会的地位があるかどうか」といった点なども考慮の対象とされていますので、注意してください。

譲渡所得については「土地・建物」「株式」「それ以外」と分類されています。このうち、「土地・建物」「株式」の譲渡によって生じた損失は、給与所得と損益通算することはできません。

これ以外の、たとえば「自動車を売ったら思ったより安かった(損をした)」という場合は譲渡損失として通算ができますが、計算方法に注意してください。また1個30万円超の貴金属など「生活に通常必要でない資産」による譲渡損失は、給与所得と損益通算することはできません。

損益通算の計算方法

所得税には10種類の所得種類がありますが、このうち退職所得・山林所得以外を「経常所得」と「一時的な所得」の2つに分け、以下の順序で計算します。

(1)6つの経常所得:利子所得、配当所得、給与所得、不動産所得、事業所得、雑所得

(2)2つの一時的な所得:譲渡所得(総合課税)、一時所得

まず(1)のグループで内部通算をおこないます。不動産所得と事業所得から生じた損失を、ほかの所得と通算します。

次に(2)のグループで内部通算をおこないます。譲渡所得(総合課税)から生じた所得を、一時所得と通算します。譲渡所得のうち長期譲渡所得と一時所得がのこった場合は、損益通算後に2分の1計算をおこないます。

グループごとに通算をおこなっても損失がのこる場合は、(1)と(2)で通算をおこないます。さらにそれでも損失がのこる場合は、山林所得、退職所得といった順番で通算をおこなうことになります。

最後まで損益通算をした後になお損失がのこっている場合は、青色申告であることなどの一定の要件を満たすことで、損失を翌年以降3年間繰りこすことができます。これを純損失の繰越控除といいます。

節税を意識した資産運用を~iDeCo(個人型確定拠出年金)~

iDeCo(イデコ)とは、任意で加入できる私的年金の制度です。利用者は自分で設定した金額を月々積み立てつつ、その資産を定期預金や投資信託などで運用します。

iDeCoの大きな特徴は、掛金は60歳まで原則として引き出せず、60歳以降に老年給付金として受けとること。受けとり方は、年金や一時金、その併用という形があります。引き出すタイミングが選べないのはすこし不便ですが、後述のように、掛金納付時の税金が控除されるメリットがあります。

iDeCoを活用するメリット

月々納付する掛金は、その全額が「小規模企業共済等掛金控除」として所得控除の対象となり「所得税」と「住民税」が軽減されます。また一般的な資産運用と違い、iDeCoでは、運用して発生した利息や運用益にも税金がかかりません。

さらに60歳以降、積み立てた資金を受けとるときも、年金の場合は「公的年金扱い」、一時金の場合は「退職所得扱い」といった形で優遇措置があります。

毎月の掛金の額は、職業や会社で用意されている年金の種類で変わります。くわしくは下の図をご参照ください。

(引用元:iDeCo公式ホームページ「ideco_membership」2017年)

税制の優遇を受けながらより豊かな老後生活をおくるために、資産形成方法のひとつとして、いまからiDeCoへの加入を検討してみてはいかがでしょうか?

老後資金を準備しよう~NISA(少額投資非課税制度)~

もし株式投資をおこなっているなら、NISAを活用してみましょう。

NISA(少額投資非課税制度)とは、年間120万円までの株式や投資信託で得た配当や譲渡益が非課税になる制度のこと。非課税となる期間は最大5年間ですが、期間終了後は新たな非課税枠へのロールオーバーが可能です。ただし、使わなかった非課税枠が翌年に繰りこされることはありませんので、注意してください。

またNISA口座で損をしてしまった場合、ほかの課税口座で利益が出ていても損益の通算はできません。この点にも注意が必要です。

(引用元:日本証券業協会ホームページ「NISAの3つのいいさ!」2018年)

つみたてNISAとは

つみたてNISAは2018年に新設された制度です。年間40万円まで、一定の投資信託で得た分配金や譲渡益が、最長20年にわたり非課税になります。NISAと違い、つみたてNISAは「長期」「積立」「分散」投資を支援するための制度なので、長い目で見た老後資金の準備にぴったりです。

なお、NISAとつみたてNISAはどちらか一方しか利用できないので、目的や投資スタイルにあわせて制度を選んでみましょう。また、2024年からは新しいNISA制度が始まります。新NISAは原則として「2階建て」となり、1階部分の積立投資をすると、2階部分の一般的な投資をすることができる仕組みになります。

(引用元:日本証券業協会ホームページ「つみたてNISAの5つのいいさ!」2018年)

まとめ

サラリーマンでも工夫次第で節税ができるうえ、上手に対策すれば納税額が戻ってくることもあるので、積極的に情報を収集して対策をおこないましょう。

ただし大切なのは税法を守って正しく節税すること。税金で困ったら税理士へ、ライフプランなどのお金のこと全般についてはファイナンシャル・プランナーへ相談してみましょう。


(執筆編集:NTTファイナンス 楽クラライフノート お金と終活の情報サイト編集部)

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