コラム

遺贈とは?相続や死因贈与とのちがいについて

この記事の内容

一定の財産をもつ人であれば「自分の死後、相続でもめてほしくない」、「のこされる財産を有意義に使ってほしい」と思うのは当然のことです。

通常、被相続人の財産は、遺言書があればそのとおりに、遺言書がない場合には全相続人の遺産分割協議にしたがって相続されることとなります。しかし、被相続人の中には相続人とならない人でも生前お世話になった人に何らかの財産を譲りたいと考えるケースもあるでしょう。

このように相続人以外の第三者に対して被相続人が死後に財産を渡すことのできる「遺贈」という方法があります。日本財団の調査によると、60〜79歳のシニアの約2割が遺贈に関心を持っているといいます。

この記事では、遺贈とはどのような制度か、そのほかの相続とは何がちがうのかについて分かりやすく解説します。

遺贈とは

遺贈とは、被相続人が遺言を通じて特定の人物に対して相続財産の全部又は一部を譲渡する法律行為です。遺贈には包括遺贈と特定遺贈の区別があります。両者はどのようなちがいがあるのかくわしく見ていきましょう。

包括遺贈とは

包括遺贈とは、遺贈の対象となる相続財産を具体的に特定せずに遺贈することです。たとえば、「全財産を◯◯に遺贈する」「財産の3分の1を◯◯に遺贈する」といった遺言をのこす場合には包括遺贈に該当します。

ちなみに、包括遺贈の場合、受贈者は相続人と同一の立場となりますので、相続人と同じようにプラスの財産だけでなく、マイナスの財産(要するに負債)も承継することになります。そのため、包括遺贈を受けたものの、プラスの財産よりマイナスの財産の方が多かったということも十分あり得ますので、受遺者は包括遺贈の権利の放棄もできます。この場合は、法定相続人と同じように自身について包括遺贈があったことを知ってから3か月以内に家庭裁判所へ「遺贈の放棄の申し述べ」の手続きをおこなう必要があります。

特定遺贈とは

特定遺贈とは、遺贈の対象となる財産を具体的に指定して遺贈させることです。「△△銀行の預金を◯◯に遺贈する」「金100万円を◯◯に遺贈する」という遺言を遺していた場合には、特定遺贈に該当します。

ただし、「△△銀行の預金を◯◯に遺贈する」という遺言がされていたとしても、被相続人が亡くなるまでのあいだに当該預金を使いきっていた場合は、遺贈の対象財産が存在しないとして、遺贈は無効となってしまいます。

なお、遺贈を受けた場合には相続税が課税されますが、不動産などの財産には別途不動産取得税がかかるなどします。注意しましょう。

遺贈と相続などとのちがい

遺贈の仕組みを理解するうえで、混同されやすいのが相続です。財産を移転させるという点ではおなじ意味に捉えられがちですが、両者には明確なちがいがあります。また、相続以外にも遺贈と混同されやすい言葉もあるため、それぞれのちがいをわかりやすく解説しましょう。

遺贈と相続のちがい

遺贈と相続の最大のちがいは、誰に財産を渡すのかです。相続の場合、財産を渡す先は法定相続人に限定されます。他方、遺贈の場合は、財産を渡す先は法定相続人に限定されず、だれにでも財産を渡すことができます(法定相続人に対してあえて相続させるのではなく、遺贈することも可能です)。

たとえば、被相続人が生前お世話になった法定相続人以外の第三者に財産を分け与えたいと考える場合もあるでしょう。このような場合、遺言で相続させることはできませんが、遺贈によって財産を移転させることはできます。


相続遺贈
法定相続人を相手とする
法定相続人以外を相手とする×

遺贈と死因贈与のちがい

死因贈与とは、被相続人が死亡したことを原因として贈与をおこなうことです。たとえば、被相続人とのあいだで「私が亡くなったら、あなたにこの家をあげる」という合意が存在するのであれば、これは死因贈与にあたる可能性があります。

遺贈と死因贈与のちがいは、遺言書による単独行為か、当事者の双方の合意(契約)かでしょう。そのため、遺贈の場合は適式な遺言書によってのみおこなうことが可能であるのに対し、死因贈与はとくに形式を問われることはなく、口頭の約束でも成立する余地があります。

遺贈の注意点

遺贈をおこなう場合には、いくつか注意すべきポイントが存在します。

たとえば、法定相続人以外に遺贈する遺言書を遺していた場合、相続時にほかの相続人から嫌悪感をもたれトラブルに発展するかもしれません。

また、もう一つの注意点としては、遺留分に関するトラブルが発生する懸念です。遺留分とは、被相続人のきょうだい以外の法定相続人に法律上認められる最低限の遺産取得割合のことです。たとえば、被相続人の財産のうち特別に価値の高い不動産などを特定の第三者に遺贈した場合、これが被相続人の配偶者や子の遺留分を侵害してしまう可能性があります。このような場合、配偶者や子から当該受遺者に対して遺留分侵害額を理由に補償が要求されるなどして、トラブルとなる可能性もあります。

遺贈にかかる税金

遺贈にあたって忘れてはならないのが税金の問題です。

まず、被相続人の配偶者および1親等以外の人が遺贈を受けた場合、相続税は2割加算となってしまいます(ただし、代襲相続の場合は1親等以外でも加算はありません)。

また、不動産登記の際には登録免許税が、法定相続人以外が不動産の遺贈を受ける場合には不動産取得税がかかることも覚えておきましょう。

遺贈で寄付をする人もいる

遺贈は、生前お世話になった人や家族、親族などを対象とするケースが多いと思われますが、遺言書によって財産を慈善団体などに遺贈するケースもあります。

たとえば、仕事や趣味、ボランティア活動で関わってきた団体や企業などに寄付をするケースや、身寄りがなく財産を引き継ぐ家族や親族がいない場合なども、社会貢献の一環として寄付を選択する人もいます。

しかし、多額の財産を寄付するとなると、どの団体が適しているか分からないことも多いでしょう。そこで、寄付先の団体の相談にあたっては、公益財団法人日本財団や一般社団法人レガシーギフト協会などに連絡してみましょう。自分の財産をどのように役立ててほしいかをヒアリングしたうえで、それに適した寄付先をアドバイスしてくれます。

遺贈を希望するときの遺言書の書き方例

遺贈をする場合には、遺言書の作成が必須ですが、遺言書は厳格な要式行為であって、法律上必要な形式を満たさない場合には、無効となります。せっかく遺贈しても、遺言書が無効となれば、その遺贈も無効となります。遺言書の書き方については、弁護士などの法律の専門家に一度相談した方がよいでしょう。

以下は、遺贈をする場合の遺言書の書き方の参考例ですが、あくまで参考であり、このとおりに書けば絶対に大丈夫というものではないので、注意しましょう。

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遺言書


遺言者 ◯◯ ◯◯は、以下の通り遺言する。


1.遺言者は、遺言者の有する次の財産を、□□ □□(19xx年x月x日生・住所 東京都中央区◯◯1丁目2番3号)に遺贈する。

  (1)遺言者名義の預貯金

        △△銀行 ◯◯支店(口座番号1234567)


2.遺言者は、遺言者の有する次の財産を、□□ □□(19xx年x月x日生・住所 東京都中央区◯◯1丁目2番3号)に遺贈する。

  (1)土地

        所在/東京都港区◯◯1丁目

        地番/2番2号

        地目/宅地

        地籍/100.0平方メートル


3.遺言者は、遺言執行者に以下の者を指定する。

    東京都港区◯◯1丁目1番1号

    ◯◯◯法律事務所


4.付言事項

  ◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯


令和x年x月x日

住所 東京都港区◯◯2丁目2番2号

遺言者 ◯◯ ◯◯ 印


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なお、遺言書のなかには「付言事項」として財産を引き継ぐ人に対してメッセージをのこすこともできます。

近親者以外に財産を引き継ぎたいならば遺言書を書こう

遺贈は、自身が死亡した場合に、法定相続人以外にも財産を譲ることができる法律行為です。たとえば、近親者ではないものの、献身的に自分の看病や介護をしてくれた人、あるいは、関心をもっていた奉仕活動などをする団体などに財産を引き継ぎたい場合に有効な方法といえるでしょう。

ただし、遺贈する場合には遺言書を作成しておくことが必須です。自分の財産を遺贈したい相手がいる場合には、専門家の力を借りつつ法的に有効な遺言書を書き残しておきましょう。


(執筆編集:NTTファイナンス 楽クラライフノート お金と終活の情報サイト編集部 情報は2021年12月24日時点のものです。)

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この記事を監修した人
弁護士法人プラム綜合法律事務所 梅澤康二

私は、日本の4大法律事務所の一つであるアンダーソン・毛利・友常法律事務所において6年間の実務経験を積み、その間、数多くの労働問題、訴訟・紛争事件、M&A取引、各種契約書の作成・レビューその他企業法務全般を主担当として処理・解決して参りました。弁護士法人プラム綜合法律事務所は、そのような前事務所で賜ったご指導・ご支援に恥じることのない、最高品質のリーガルサービスを提供することを信念としており、ご相談案件一つ一つについて誠心誠意対応させて頂きますので、安心してご連絡、ご相談ください。

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